2024年8月10日(土)
本日やってきたのは、近鉄四日市駅。県庁所在地である津駅を差し置いて県内最大の乗降客数を誇ります。
四日市は近鉄とJRの駅がやや離れていますが、圧倒的に市街地の中心部に位置しているのがこちらの近鉄駅。名古屋線・湯の山線のほか、2015年に近鉄から経営分離が行われた四日市あすなろう鉄道もここを起点としています。
そんな一大ターミナルである近鉄四日市駅には、様々な特急列車も停車します。伊勢志摩方面へは近鉄のフラッグシップトレインである「しまかぜ」のほか、「伊勢志摩ライナー」や様々な形式の車両が使用されており、そのほぼ全ての列車が停車します。また名古屋~大阪間の都市間連絡においても、残念ながら「ひのとり」は通過してしまうものの、「アーバンライナー」はしっかり全列車が停車します。
しかし…現在来ている近鉄四日市駅2番線ホーム上の発車標には「17:25 特急ひのとり 大阪難波」の文字が確かにくっきりと表示されています。実を言うと夜遅い時間帯に1本だけ名古屋行のひのとりがここ近鉄四日市にも停車するのですが、時間帯的にも行先的にもそれでないことは明らかです。
そして表示の通り、近鉄四日市17時25分発の特急〔ひのとり〕大阪難波行が確かにホームへゆっくりと入線し、停車してしまいました。いつもならば颯爽と通過していくはずですが、本日は確かに当駅に停車しています。
実はこの2日前、2024年8月8日に宮崎県の日向灘を震源とするM7.1の地震が発生しました。これを受けて気象庁は「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」を発表し、近鉄では8月9日~15日の1週間限定で「ひのとり」の桑名・近鉄四日市・白子への臨時停車を行うこととしたのです。
また先ほどの画像において、後続の近鉄四日市17時39分発の特急が「五十鈴川行」となっていましたが、こちらも平常時であれば「賢島行」として運転されているはずの列車です。五十鈴川~賢島駅間では全ての特急列車が運休となり、五十鈴川駅での折り返し運転となっている様子でした。
無事に乗り込み、列車は時刻通り(?)に近鉄四日市駅を発車。この列車は近鉄名古屋を17時00分に発車している列車で、停車駅は桑名、近鉄四日市、白子、津、大和八木、鶴橋、大阪上本町、終点大阪難波です(赤文字が臨時停車)。
乗車してすぐはデッキに立っておりましたが、車掌さんが回られた際に「空席ありますので使ってください」と親切に教えていただき、その席を使わせていただけることになりました。
「ひのとり」をはじめ近鉄特急は全車指定席で、自由席はありません。しかし今回の出来事はあまりにも急な事態であったためか、桑名・近鉄四日市・白子の各駅から乗車する際の特急券は駅の窓口・券売機では一切発売されず、インターネットでの予約・購入も不可となっていました。すなわちこの3駅から乗車する場合においては「全車指定席なのに乗車前の特急券の購入が不可能」という実に珍しい状態となっていたのです。
近鉄四日市~大阪難波駅間の特急料金は1,640円。これにひのとり特別車両料金(レギュラー)が200円加わり、計1,840円を車内にて精算完了。特急料金1,640円は「アーバンライナー」で同区間を利用する場合と同じで、車内精算だからといって通常よりも割増の料金が必要となるわけではないようです。
もちろん全車指定席であることには変わりありませんので、有難く空席を利用させてもらっているだけの状態です。この先の駅から本来の指定席を所持している乗客が来た際には、速やかにどかなければいけません。
近鉄四日市を出てから10分ほどで、白子駅に臨時停車。「しらこ」と読みたくなりますが、正しくは「しろこ」です。首都圏民にとってはあまりなじみのない地名ですが、近鉄四日市に停車する特急は基本的に全て白子にも停車します(一部列車を除く)。
最前列の座席に備え付けられたテーブルは、他の列のものよりも少し縦長になっており、得をした気分になります。しかしながらあくまでも「指定席の空席を使わせていただいている身」なので、もしこの先の区間で本来の予約客が乗ってきた場合にはすぐにどかなければいけません。そのため、お店を広げることはやめておきます。
17時44分、列車は津駅に到着。言わずと知れた三重県の県庁所在地で、「しまかぜ」を除き全ての旅客列車が停車します。ここからは本来の停車駅の通りとなりますので、本来の予約客が来た場合にすぐ座席を移動できるよう念のため構えておきます。
津には近鉄のほか、JR関西本線および伊勢鉄道が乗り入れます。名古屋~津駅間はJRの特急南紀でも移動することができますが、本数の面では圧倒的に近鉄特急に軍配が上がります。
津を出てしばらく進むと、伊勢中川のデルタ線を通り大阪方面へと進みます。ちなみに私と同じ列の1C・1D席には津から乗車がありましたが、どうも様子を窺うと私と同様に車内で特急料金を精算されていたようでした。
ちなみにこの8月10日、土曜日はお盆休みへと突入したばかりの最繁忙期。各号車を見て回りましたが6両編成のひのとりはほとんど全ての座席が満席で、津を出ても2号車の1A・1B席に予約客が来なかったことは幸運としか言いようがありません(もしかすると一般に発売されない「調整席」のような扱いなのでしょうか)。
デルタ線を過ぎてさらに進むと、周囲の景色が山間部へと移り変わります。榊原温泉口、伊賀神戸、桔梗が丘、名張など一部の特急が停車する駅もありますが、「ひのとり」はこれらすべてを通過。特に名張は名阪間を結ぶ「アーバンライナー」が原則停車する主要駅のため今回も臨時停車するかと思われましたが、こちらも通過となっています。「桑名・近鉄四日市・白子に停車するのに名張は通過する名阪特急」というのもまた珍しい存在であると言えます。
奈良県に入り、18時37分に大和八木駅へと到着。向かいのホームに停車する急行 大阪上本町行との緩急接続を行います。大和八木に停車するひのとりは全体の半分程度で、京都方面への乗り換えが考慮されています。
この辺りまで来るといよいよ関西圏。当駅からの1A・1B予約客も特にいないようでしたので、ここまで来ればもう私が座席を移動する必要は生じないでしょう。
生駒山地を越えて、列車はいよいよ大阪府へ。西の空に沈む太陽が美しく車窓に映ります。
今回の桑名・近鉄四日市・白子の3駅への臨時停車ですが、実際のところ南海トラフ地震臨時情報に伴い「どのような可能性を考慮して」行われたものであるのかは定かではありません。通常のひのとりは無停車区間が長い(津~大和八木or鶴橋)のは事実ですが、停車駅を増やすことがどのような地震対策になるのかは乗車してみてもはっきりと断定することは困難でした。もしかすると他の特急列車が減便されていたりしたのかもしれません。
19時00分、列車は鶴橋駅に到着。まだ終点ではありませんが、ここでかなりの数の方が降りていかれます。というのも、ここはJR大阪環状線との乗り換えが考慮されており、大阪駅や天王寺駅等へ移動する際に乗換検索で調べると大体はこの「鶴橋乗り換え」が上位に表示されることも多いのです。首都圏で例えるならば日暮里駅(京成スカイライナー)や高田馬場駅(西武特急小江戸号)のような立ち位置でしょうか。
大阪上本町駅に停車した後、時刻通り19時07分に終点の大阪難波駅へと到着。同じホームには数分後に阪神線直通の快速急行 神戸三宮行が入線するため、乗客の降車を確認して列車はすぐに回送されていきます。
というわけで、今回は「近鉄四日市から大阪難波までひのとりに乗る」という貴重な体験をすることができました。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。