JR九州小倉総合車両センター(北九州市)を公開する「小倉工場まつり2024」が10月20日開かれ、2021年に運行を終えたキハ66系(キハ66・67形)気動車の展示など多彩なイベントがありました。今年から設けられた有料エリアの展示車両を中心に見学してみました。
小倉工場まつり2024で展示された(左から)885系、キハ66形、BEC819系。トップナンバー同士の、かつて筑豊本線を走ったキハ66系(キハ66ー1)と現在活躍するBEC819系(BEC818ー1)の並びは時の移ろいを感じます
小倉工場まつりは今年から、飲食出店やJR九州吹奏楽団の演奏がある無料エリアと、車両展示や鉄道部品・グッズ販売がある有料エリアに分けられました。有料エリアの入場には1000円(小学生以下は無料、要保護者同伴)が必要で、チケット販売箇所で購入した紙リストバンドを巻いて入ります。
無料エリアでも、ミニSL乗車や運転シミュレータなどの体験は1000円のイベントチケット(100円券10枚つづり)が、工業デザイナー・水戸岡鋭治さんの作品などを紹介する「小倉工場鉄道ランド」の見学には1500円の入場券がそれぞれ必要になっていて、実質的には催しの大半が有料になった印象です。
チケット売り場は1カ所のみで、開場直後を中心に長蛇の列ができていました。筆者が並んだ10時台は購入まで25分かかりました。
チケット売り場に掲示された案内。課金体系が少し複雑で、今後もう少し大きく、複数箇所に掲示するなどした方が良さそうです
小倉工場まつりの今年の展示車両は、筑豊や長崎地区で活躍したキハ66・67形気動車(国鉄色の第1編成)と、特急「ソニック」などの885系電車(SM3編成)、蓄電池走行ができる筑豊本線(若松線、福北ゆたか線)のBEC819系(ZG001編成)でした。特に運行終了から3年がたち去就が注目されるキハ66系が鉄道ファンの人気を集めました。
今年の車両展示の目玉となったキハ66・67形(※詳細は以下の別稿で紹介しています)
BEC818ー1の床下に搭載されたリチウムイオン電池(青い塗装の部分)。非電化区間の筑豊本線若松—折尾は、ここに蓄えた電力で走ります
885系(クロハ884ー3)の運転席公開は、今年は座らず通り抜ける方式でした。そのため待ち時間はほとんどありませんでした
車体上げ実演は815系電車(クハ814ー16)が使われました。旅客車車体検修場には813系電車とYC1系気動車が並んだ他、台車検修場前にはいろいろな形式の台車が置かれていて、鉄道工場の雰囲気が楽しめました。
クレーンでつり上げられて移動するクハ814-16。実演後は周囲から多くの人が床下を見ていました
旅客車車体検修場に並んだ(左から)813系電車(クハ813ー3101)とYC1系気動車(YC1ー1206)
車掌放送体験で使われた気動車キハ40 8126
台車検修場前に置かれていたキハ40系の台車。最近の形式と比べると、国鉄形はやはり重厚な印象です
解体を待つ415系500番台(Fk516編成)の姿も。クハ411ー616とモハ414ー516が少し見えました
鉄道部品販売は2カ所でありました。筆者は購入者の列に並びませんでしたが、鉄道車両の座席のモケットを使った座布団(2000円)を持っている人を多く見かけた他、運転士携帯時刻表が5枚ランダムに入ったセット(1500円)が好評だったようです。一方で価格は全般的に高かったようで、2万円以上の値付けがされた列車の行き先を記すサボは午後になっても売れ残っていました。
売られていたサボ。九州のいろんな駅名がありましたが…
無料エリアでは小倉総合車両センターの常設展示車両、特急「にちりん」のヘッドマークを掲出した485系のクハ481ー256、蒸気機関車C12 222、D51 542、旧型客車オハ61 1030が見られました。また、管理棟玄関のガラスケースには寝台特急「はやぶさ」「富士」のヘッドマークなどが展示されていました。
小倉総合車両センターの入り口付近に展示されているクハ481ー256(右)とC12 222
「にちりん」のヘッドマークが懐かしいです
少し奥にはD51 542とオハ61 1030も。前者はカットされていて内部が見られます
管理棟玄関のガラスケースに展示されている鉄道部品。ED76 92のナンバープレートもありました
今年から入場方法が変わった小倉工場まつり。別の有料イベントとの差別化からか手探りの雰囲気を感じましたが、職員の方々は筆者を含む来場者からの質問に丁寧に対応されていました。
イベントの開催には多大な労力がかかり、課金は仕方がない面はあるかと思います。ただ、展示については有料化を意識し、もう少し解説を行った方が良いように感じました。入場者は知識が豊富なファンばかりではなく、家族連れも多く見られます。「鉄道」への理解・親しみを広げる意味では必要と思います。
小倉総合車両センターは同じ北九州市内の東小倉駅(貨物駅)の用地への移転が計画されていて、将来的に小倉工場まつりがどのようになるのかが気になりますが、多くの人が楽しみにしている恒例イベント。今後も内容が充実化し継続してほしいものです。
【おまけ】小倉総合車両センター内で活躍する乗用車。外装を特急「ゆふいんの森」風にしていて、「ちび森」と呼ばれ親しまれているそうです。こういった遊び心も鉄道車両工場の魅力です