6月のとある日のこと
午後から年休をねじ込んで、管理人はミナミへとやってきました
もちろん、目的はミナミで遊び倒すこと…ではなく、ちょうど見ごろを迎えた紫陽花を嗜むべく、レンタカーを借りて奈良県のお寺を巡ろうというわけです
そのために、大和八木駅前にあるホテルを予約しているのですが、ここ(ミナミ)から大和八木まで近鉄電車で移動します
大阪難波駅のホームへ降り立つと、まばゆいばかりにメタリックレッドの車体を輝かせて「ひのとり」が発車を待っていました
本当は「ひのとり」に乗りたいところですが、名阪甲特急or阪奈特急しか選択肢がないため、これに乗ると明後日の方向へ行ってしまいます
時間に余裕があれば、阪奈特急へ充当される「ひのとり」で大和西大寺まで行って、そこから橿原線で大和八木へ行く方法もありますが、明日に備えて今晩は早くホテルで休みたいところです
「ひのとり」も登場から早いもので4年が経過しましたが、まだまだ管理人は乗車する機会に恵まれていません
実のところ、「ひのとり」はおろか…
…「アーバンライナー」にさえ管理人は乗車したことがありません
というのも、名古屋へ行くのであれば、
・実家から名古屋へはJRの「南紀」一択
・京都に住んでいた時は新幹線or高速バス
だったので、近鉄の名阪特急に乗車する機会がなかったのです
ところで、アーバンライナーには1988年に登場した21000系と2002年に登場した21020系の2種類があり、後者については2008年の3月に一度乗車したことがありますが、21000系「アーバンライナーplus」の車内へ足を踏み入れるのは今回が初めてです
大和八木までなら特急と急行の所要時間差は5分ほどしかなく、敢えて特急に乗車するメリットに乏しいのですが、難波からだと上本町での乗り換えが不要になるほか、やはりロングシートと特急用のリクライニングシートでは快適性の雲泥の差があります
前回…とは言っても16年前に21020系に乗った時はレギュラーシートだったので、今回はDXシートを奮発しました
大阪難波から大和八木までは36.8㎞で、特急料金520円にデラックス料金210円で締めて730円です
近鉄特急のデラックス料金は、長らく距離に関係なく一律410円となっていましたが、2011年3月16日以降乗車分は対距離制へ移行し、現在は80㎞までなら210円です
地理的環境や客層が異なるので、単純に比較するのはナンセンスかもしれませんが、首都圏を走る普通列車のグリーン料金が50㎞まで750円、快速「エアポート」の指定席料金が840円なのを考えると、ずいぶんとリーズナブルに感じます
それでは、車内を見ていきましょう
いまとなってはJRのグリーン車を始め、京阪のプレミアムカーのように民鉄各社に広まった3アブレスト配置の座席ですが、21000系が登場した当初は衝撃をもって迎えられたことでしょう
ライバルであった東海道新幹線を走る100系新幹線を念頭に置いて、DXシートではローズベージュを基調色にアクセントカラーをゴールドとしてハイクラスな空間に仕上げられました
残念ながら、登場当初の内装は2003年から始まったリニューアル工事によって姿を消しましたが、いまでも腰板の部分はローズベージュのまま残されています
もう一つ「アーバンライナーplus」のDXシートの内装で忘れてはいけないのが、妻壁に施されたアーバングラデーションなる模様で、リニューアル工事前はレギュラーシート車の妻壁も同様の意匠でしたが、現在はDXシート車にのみ残ります
基調色のローズベージュをベースにドット模様を全体的に散りばめて、遠目から見ると都会に林立するビル群の灯のように見えます
このアーバングラデーションの意匠は、鉄道車両の内装デザインに興味のある方に是非とも見て欲しいポイントです
と言いつつも、この日撮った写真を見返してみると、きちんと妻壁を記録した写真がありませんでした
それでは、座席を見ていきましょう
シートピッチについては、レギュラーシートと同じく1050㎜で、これは登場時から変更はありません
座席については、リニューアル工事で「アーバンライナーplus」へ生まれ変わった時に刷新され、「アーバンライナーnext」と同じ近鉄渾身のゆりかご型シートが設置されています
リニューアル前のDXシートの評判がよかっただけに、もう体験できないのが残念で仕方ありませんが、いまの座席も追加料金が割安であることを考えれば悪くはありません
しかし、着座時のファーストインプレッションとしては、”とにかく硬い”と感じざるを得ません
通勤電車のロングシートであれば、許せる硬さかもしれませんが、特急列車の上級クラスであることを踏まえると、不満の残る座り心地です
それでも、デフォルト状態で座ると、座面がややそそり立っているものの、柔らかいピローと相まって、さほど不快感はありません
このゆりかご型シート最大の特徴は、リクライニング時に座面が連動して沈み込む構造になっているのですが、どうも座面の食いつきが悪い上に、フットレストが固定式なので、どうしても姿勢が落ち着きません
近鉄がゆりかご型シートで先鞭をつけた形の”座面が沈み込む系”座席は、「アーバンライナーnext」の誕生から5年を経て、N700系のグリーン車にも採用され、多くの人の目に留まることになるわけですが、こちらはフットレストの可動域が広いため、とりたててリクライニング時の体勢に不満はありません
他にもこうした座席の採用例は近年増加傾向にありますが、フットレストではなくレッグレストと組み合わせることで、体格に関係なく寛げるように設計されているので、この座席は過渡期における試行錯誤が生んだものなのかもしれません
当の近鉄も後に生み出した「しまかぜ」や「ひのとり」のプレミアムシートでは、フットレストを廃してレッグレストだけの設置になってますからねぇ
そして、近鉄自身が「しまかぜ」のプレミアムシートでアッパークラスに対するハードルを思いっ切り上げてしまったせいで、相対的にこの座席のチープさが目立ってしまうのです
吉野特急の「さくらライナー」もそうですが、この時代のDXシートはプライバシー性を考慮してなのか、夜行バスのように各座席ごとに独立させる方針をとっていました
JR九州の885系も同じような座席配置になっていますが、各座席を独立させた影響で、座席幅はそこまで大きくありません
これなら通常の2+1配列にして座席幅に還元した方がよかったような気もしますが、そこはプライバシー性とゆとりのどちらを優先するかで悩ましいところではあります
なお、2022年頃より21000系・21020系のDXシート・レギュラーシート共にシートモケットの交換が行われており、このワインレッド系のシートモケットも徐々に数を減らしつつあります
乗車した時は気付きませんでしたが、座席脚台にコンセントが設置されているようです
ヘッドレスト部分にはLEDによる読書灯が設置されていますが、角度調整ができないため、あくまでも気休め程度の使い方しかできません
ここ最近、移動中に本を読む人など稀なので、読書灯の構造については特に気になりません
どちらかというと、展開した時に半月状になるインアームテーブルの使い勝手が悪さの方が際立ちます
こんな形だとノートPCも上手く載せられないでしょうし、お弁当だって広げられません
デザイン性を優先したのかもしれませんが、展開した時に普通に長方形になる方が使い勝手はいいでしょうに…
フットレストは展開すると素足面が出てくるリバーシブルタイプですが、特に角度調整機能は付いておらず、これがリクライニング時に仇になるのは先述した通りです
どっぷりと日の沈んだ大阪線を東へ向けて快走します
近鉄では割と早い時期から通勤電車にVVVFインバータ制御を採用していますが、21000系は従前通りの抵抗制御になっています
それにしても、相変わらず近鉄特急の静粛性の高さと乗り心地のよさには心底驚かされます
全電動車方式ですが、モーター音はまったく気にならないですし、近鉄ご自慢のシュリーレン式台車は驚異的に滑らかな乗り心地を乗客にもたらしてくれます
はっきり言って、「くろしお」の287系より遥かに揺れは少なく快適です
そんな素晴らしい乗り心地を堪能していると、あっという間に大和八木に着いてしまいました
80000系「ひのとり」の登場により、華々しい名阪ノンストップ特急の運用からは撤退しましたが、引き続き名阪間の主力であることに変わりはありません
一度きちんと予定を組んで、「ひのとり」や「アーバンライナー」に乗りたいですね