先月の事になるが、夏の甲子園高校野球は、京都代表の京都国際高校が優勝した。京都国際高校のルーツは、韓国人学校だ。日本の学校教育法に基づく高校に移行してからもう20年ほど経つと思うが、未だに世間一般から特別視が消えない。優勝時には、ヘイトスピーチ、誹謗中傷がネット上に出回り、府知事がサイト運営者に削除を求める事態にまでなった。こうしたルーツを持つ学校があって、甲子園まで行って活躍したということは、京都の学校の多様性として、むしろ誇るべきことと私は思う。
少し話は変わるが、京都府は、地理的に多様性のある所だ。千年の古都、日本文化のふるさとなど、「京都」で他府県の人がイメージするのに当てはまる地域は京都市(それも中心部)であって、その北側には、山国の丹波地方、海を望む丹後地方が広がっている。南側は、京都市と同じ旧山城国だが、また少し違う趣の南山城地方がある。しかし、いわゆる「京都」のイメージには、このような多様性はない。
高校野球に話を戻して、京都の高校野球の歴史を見ると、京都市の学校がずっと中心になってきたという点で、同じく多様性に乏しい。下図は、学校所在地の市町村別の甲子園出場回数である。(青地は春、赤字は夏の出場回数。春は1大会複数校出場の場合があるが、それぞれを1回として計上。)京都府の学校は合計で春95回、夏100回の出場があるが、そのうち、春86回、夏89回が京都市の学校である(さらに言えば、このうち龍谷大平安高校が春42回、夏34回)。京都市の学校数が多いことを考慮しても、学校数の差以上の大きな開きがある。
このような高校野球の状況は、ヒト、モノ、カネ、あらゆることについて京都市の存在感が圧倒的な京都府の姿の一側面である。京都府は、「海の京都」「森の京都」「お茶の京都」として、京都市以外の地域の売り出しに懸命に取り組んでいる(京都府観光連盟のサイト御参照)。京都市のオーバーツーリズムの解消にもなる。京都にお越しの際には、ぜひ京都市以外の地域にも足を延ばして、多様な「京都」を観てください。