花咲線の観光施策
滝川~富良野、新得~根室間を走る根室本線のうち、釧路~根室間には「花咲線」の愛称が付けられています。
この区間はJR北海道が指定する「単独維持困難路線」のうち、乗客が2000人/日以下の「黄線区」であり、存続に向けて様々な取り組みが行われています。
そのうちのひとつが、夏季期間の指定席の設定。
観光シーズンである8月と9月に花咲線の快速はなさき(上り)・快速ノサップ及び普通列車1往復をそれぞれ1両増結の上、増結車両の海側座席を指定席にするのです。
席取りの心配をすることなく花咲線の絶景を楽しめる取り組みですね。
そしてさらに…
8月の土日は一部列車において地元業者による車内販売を実施するそうです!
車内販売大好きな私にとっては最高の取り組みです。
花咲線の旅を十二分に楽しめる取り組みが目白押しのこの季節。
ぜひ旅したいと思いました。
ということで…乗っちゃいました!
北海道の幸が並ぶ朝食
2024年8月24日。旅は2日目です。
まずは朝食へ。
ドーミーインプレミアム釧路の朝食は海の幸いっぱいで豪華です。
朝からいくら山盛り!
ほたての浜焼きも食べ放題!
メロンもいっぱい!
朝から北海道の幸をいっぱいいただいちゃいました。
お部屋に戻って準備ができたら出発です。
ついに出会うクルーズトレイン
霧の街として名高い釧路ですが今日は快晴!
すがすがしい気分になります。
駅まで歩いていく途中、太鼓の音がしたので見てみたら、なにやらイベントやってました。
早めに釧路駅にやってきました。
まずは入場券を購入して…
ここもマルスエド券なんですね。
↑マルスエド券について詳しくはこちら
早めに改札内に入る理由はこちら!
電光掲示板1段目に表示されているこちらの列車を見るためです。
「THE ROYAL EXPRESS」。
伊豆急行の車両で、普段は横浜~伊豆急下田間を走っていますが、2020年からは夏季に北海道に乗り入れてクルーズトレインとして運行されています。
このロイヤルエクスプレス、最近はJR四国やJR東海管内で運行されるなど、まるで90年代のジョイフルトレインみたいな運用されていて面白いです。
初めて乗り入れたときからぜひ見てみたいと思っていましたが、なかなか私の旅程とバッティングせず…
4年目にして初の見参です。
改札内に入ると、すでにロイヤルエクスプレスはホームに停車していました。
青い車体に金色の装飾があしらわれたきらびやかな車両。こちらが「THE ROYAL EXPRESS」です。
もとは2100系電車「アルファリゾート21」という車両で、水戸岡鋭治氏のデザインにより改造されました。
本来は8両編成の列車ですが、北海道乗り入れ時は1・4・5・6・8号車の5両に減車されています。
前照灯まわりをよく見ると、「HOKKAIDO CRUISE TRAIN」の文字。
これ、北海道に来るたびに毎回書き直しているんでしょうか?
窓から車内を覗いてみるとこんな感じ。
ここは展望座席。
一部は半個室風の座席になっているようです。
水戸岡デザイン特有の木材をふんだんに用いた内装で、ななつ星in九州にも劣らぬ豪華さを演出しています。
くろちゃん?と思ったら…犬ではなくウミガメのキャラクター?
…しかし、このクルーズトレインではボールプールって使い所がなさそうな…
こちらはロゴマーク。王冠を模したデザインが特徴的ですね。
ちなみにこの5号車だけ、乗降扉が4枚折戸になっています。
これは、改造元の車両がグリーン車に相当する「ロイヤルボックス」車だったことに由来するもの。
ロイヤルボックスはトンネル走行時に天井に星空を投影することで知られていた車両です。
ロイヤルボックス自体は「黒船電車」こと2100系R-4編成に残っていますが最近は連結されていないようで…
乗ってみたいんですけどね。
さて、北海道運行時のロイヤルエクスプレス、一番の見所は…
こちら!
前に繋がれた白い車両。
こちらはマニ50 2186。もともとはJR東日本で「リゾートエクスプレスゆう」の非電化区間乗り入れ用電源車として使われていた車両で、伊豆急行の親会社である東急に譲渡されています。
非電化区間の多い北海道ではロイヤルエクスプレスが自走できず、全区間でディーゼル機関車に牽引されることになるのですが、その際に必要なサービス電源の供給車として機能するのです。
そして、こちらが牽引を担当するディーゼル機関車DE15。
黄色に塗り直された専用機が重連で牽引します。
専用機関車に電源車。関東の電車を北海道で走らせるのには並大抵でない準備が必要なのですね。
ホームでは地元のゆるキャラとバイオリニストが登場。
きれいな音色が響きます。
乗客を乗せたところで汽笛を鳴らし、ロイヤルエクスプレスはゆっくりと釧路駅を出発していきました。
このあと列車は釧網本線を網走まで走るそうです。
水戸岡デザインの列車で行く釧網本線、なかなか楽しそうですね。
快速ノサップに乗車!
かなり前置きが長くなりましたが、いよいよここから花咲線に乗車していきます。
乗車するのは快速ノサップ根室行き。かっこ書きで「一部指定席」って書かれていますね。
快速ノサップの使用車両はキハ54の2両編成。
道東地区ではすでに花咲線のみの運用となっており、なかなか乗れなくなった貴重な車両です。
花咲線以外で使用されないためか、サボ受けにサボ風の「花咲線」シールが貼られていました。
2両編成なのは夏季限定。
2号車にはこんな札が挿さっていました。
海側のクロスシートのみが指定席となってるのです。
車内はこんな感じ。
このうち海側(写真では左側)のクロスシートが指定席として発売されています。
壁にはそれを示すシールが貼ってありました。
指定席は18席しかないので、いつもの駅で10時打ちしましたが…
そこまですぐに埋まるわけではなかったようです。
(ただ、乗車直前には満席になっていました)
座席モケットは北海道の鳥を描いた特製のもの。
それでは、この座席に座って最東端路線の旅を楽しみましょう!
11:15、札幌からの特急おおぞら1号からの接続を受けた快速ノサップは最東端への道を走り始めました。
まずは釧路川を渡り、東釧路へ。ここで釧網本線と分かれてさらに東へと向かいます。
その次の武佐を過ぎると、車窓には草原が垣間見えました。
別保に停車。
この駅では保育園の団体さんに見送られました。
どうか未来の公共交通をよろしくお願いします(?)
別保を発車すると車窓には森が広がります。
キハ54は非冷房。窓を開けて風を感じながら景色を楽しみます。
今どき非冷房の列車なんてなかなかないので新鮮ですね。
ここで、指定席に着席している人向けにアンケートが配られました。
花咲線の施策の効果を示すためのアンケート。
少なからずこの路線の未来も占うものであるわけで…しっかり答えないと。
「有料・別料金でもいいので実施を期待するサービス(自由回答)」の欄があったので、ノロッコ号や専用車両の乗り入れ、札幌からの特急の直通なんて書いておきました。
実現は難しいでしょうけど、夢はおっきく持たないとですからね(?)
アンケートに答えている間に列車は上尾幌に停車。
今まで各駅に停車してきた快速ノサップですが、ここからようやく本領を発揮して快速運転を始めます。
車窓には広大な平原が広がります。
絶景といえる風景ですが、花咲線では随所にこのような景色が広がっています。
広大な北海道ならではといえますね。
やがて、海が見えてきて…
車窓いっぱいに海の風景が広がります!
ここは厚岸湾。
太平洋に面した湾で、牡蠣の養殖が行われています。
列車は厚岸湾の風景を眺めながら、牡蠣の街・厚岸へと入っていきました。
いよいよ花咲線車販、開始!
列車は厚岸に停車。
花咲線区間の途中駅では唯一の有人駅だそう。
さて、いよいよこの駅から車内販売がスタートです!
まず乗り込んで来られたのは道の駅「厚岸味覚ターミナル・コンキリエ」の方々。途中の厚床まで販売を行います。
車販は本格的にワゴンを持ち込んでの実施。
ワゴン販売なんて北海道ではもうほとんど見られないので感慨深いです。
ということでさっそく買いに行きましょう!
購入したのは「あっけし極みるくあいす」。
生乳への熱負担を少なくする低温殺菌(65℃)で処理された「あっけし極みるく65」を使ったアイスクリーム。
甘さ控えめで牛乳の味をしっかりと感じられるアイスクリームです。
列車はちょうど花咲線の絶景ポイントのひとつ、別寒辺牛湿原の中を走っています。
1993年にラムサール条約に登録された別寒辺牛湿原。
アイスを食べながらその景色を楽しめるのは車販があるからこそですね!
別寒辺牛湿原を過ぎると、列車は茶内に停車。
ルパン三世の作者・モンキー・パンチ先生のふるさとということで、銭形警部のパネルがお出迎え。
さらに駅舎の窓にもルパンファミリーのパネルが。
この駅では上り快速はなさきと行き違い。
快速はなさきにも指定席の設定があり、そのためにキハ40「道東 森の恵み」車両が増結されています。
ここがこの列車唯一の行き違いポイントということで、いよいよこれからはこの列車が日本最東端の列車ということになるのです。
ちなみに、茶内駅の近くにある「コープはまなか」では、あのハーゲンダッツに使われているのと同じ牛乳を使ったソフトクリームを味わうことができます。
↑訪問記はこちらから
ただ、そこは定期列車の悲しいところで停車時間はほとんどなく、今回は行くことができません…
できれば停車時間を多く取った臨時列車を運行してほしい…とさっきのアンケートでお願いしておきました。
次の浜中でもルパン三世のパネルが出迎えてくれました。
さて、もう少し車販を利用したくなったのでもう一度ワゴンのもとへ。
浜中町にある、おおともチーズ工房のナチュラルチーズ「レクタン」をいただきます。
酪農が盛んな道東ならではの乳製品をいただきつつ、列車はさらに東へと走っていきます。
車販その2と絶景の海岸
列車は厚床に停車。
この駅は1989年まで中標津へと向かう標津線厚床支線が分かれていた駅。
ここで車内販売の方が交代。
続いては根室市の「潮彩」の方々による車販です。
何にしようかな…
おや?
ワゴンにはなんとこの快速ノサップの前身の列車を題材にした西村京太郎氏の「ミニ急行ノサップ殺人事件」の小説が載っていてびっくり。
この発想はなかった…(笑)
購入したのはこちら!
またもアイスです。
「べつかいプレミアムミルクリッチ」。
別海町の生乳と生クリームをたっぷり使った贅沢なアイス。
こちらのアイスはとても濃厚で、まるでバターをアイスにしたかのようなお味で美味しかったです。
こちらも沿線の景色を見ながらいただきました。
さて、列車はいよいよ花咲線随一の絶景区間に差し掛かります。
その絶景がこちら!
青い海と海岸線に寄せる白い波、そして湾曲した海岸の向こうには海の中に突き出す岬の姿…!
大迫力の風景が広がるここは落石海岸。
短い間でしたがその雄大な景色を眺めることができました。
列車は落石に停車。
ここを出ると、終点の根室まで止まりません。
列車は根釧台地の風景の中を進んでいきます。
時おり放牧されている牛や馬の姿も眺めることができました。
しばらくすると、列車は街なかへと入っていきます。
とある小さな駅を通過。
ここは東根室。
言わずとしれた日本最東端の駅です。
東根室を出た列車は市街地を通り抜け…
やがてゆっくりと駅のホームに足を踏み入れ、停車しました。
終点の根室です。
13:26、花咲線の全区間を通り抜け、最果ての駅に到着しました…!
列車の向こうは車止め。ここより先に行くことはできません。
旅情を感じる瞬間です。
ホーム端には「日本最東端有人の駅」と書かれてありました。
ちなみに反対は佐世保駅だそう。
ということで、花咲線快速ノサップの乗車記でした!
2時間以上の乗車時間でしたが、指定席を取ったことで花咲線の絶景を存分に楽しむことができ、さらに車販もあったことからあっという間の時間でした。
とっても満足できたので、この取り組み、今後も継続していってほしいですね。
★乗車データ
9629D 快速ノサップ 根室行き 釧路(11:15)→根室(13:26) キハ54-523+キハ54-514
※2024年8月24日乗車
次回→(執筆中)
前回→(未執筆)
※この記事は暫定版です