「サザン方式」の実態 | 京阪大津線の復興研究所

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大津線とは、京阪の京津線と石山坂本線の総称です。
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そのために、京阪線や他社の例も積極的に取り上げます。
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 南海本線の全区間、難波駅から和歌山市駅までを走破し、一部は和歌山港駅まで乗り入れる特急「サザン」は、リクライニングシートを備えた指定席車4両と、自由席車4両を併結しているのが特徴です。1985(昭和60)年の登場時は指定席車2両+自由席車4両、または指定席車のみ4両でスタートしましたが、のちに現在の形に落ち着きました。

 この方式が画期的だったのは、自由席車にロングシートの通勤型車両を用いたことです。従来は同一の転換クロスシート車を指定席と自由席に分けていましたが、同じ座席で料金を追加する矛盾を解消しつつ、一定の輸送力を確保できるようになりました。

 これに追随したのが、名古屋を中心に路線網を展開する名鉄です。同社は、一部区間の線路をJR飯田線と共用する関係で、豊橋駅の発着枠が毎時6本に限られるという制約を抱えています。以前は有料特急・高速(料金不要特急に相当)・急行を毎時2本ずつ走らせていましたが、急行2本と指定席車+自由席車併結の特急4本に再編し、自由席車の乗車機会が1.5倍、指定席車が2倍に増えました。

「サザン方式」は本家の南海よりもむしろ名鉄で開花し、現在は豊橋駅発着以外の特急や快速特急にも拡大しています。指定席車の料金が南海より安く、かつ自由席車も転換クロスシートが主体なので、サービス水準は名鉄が上です。何より、名鉄では指定席車2両+自由席車4両を基本としつつ、混雑時間帯には自由席車2両を増結して運行するので、輸送力の配分が適切です。

 対する「サザン」の指定席車4両+自由席車4両は、いかにもバランスを欠いています。指定席車が満席になるのはラッシュ時くらいであり、昼間時は空気輸送が目立ちます。一方で自由席車の難波口は四六時中立客が絶えません。

「サザン」が指定席車を2両から4両に増強したのは年間平均乗車効率が約70%と好調だったからですが、これは和歌山港での四国連絡客需要によるところが大きかったのです。しかし、拙著【阪和間直通輸送の復興計画】  で述べたように、「サザン」誕生の翌年には明石海峡大橋の建設が始まっていました。これが開通すれば指定席車が打撃を受けるのは明白だったのに、この経営判断は不可解です。

「2019 HAND BOOK 南海」によれば、「サザン」の2018(平成30)年度1日あたり利用客数は4,773人です。12000系の編成定員が242人、上下の運転本数が68本、合計定員が16,456人なので、平均乗車効率は29.0%に過ぎません。指定席車2両+自由席車6両に改め、実態に合った輸送力を提供することが求められます。

 

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