北陸新幹線新大阪延伸に伴う、湖西線の並行在来線問題について考える -北陸新幹線編①
2024年3月、敦賀まで延伸され注目されている北陸新幹線。北陸新幹線の計画としての終着駅は新大阪までとなっていますが、敦賀~新大阪間の着工はいまだされていません。そこで、着工に至るまでの問題点の1つである、北陸新幹線新大阪延伸の際の並行在来線について考えていきます。
そもそも並行在来線とは
そもそも並行在来線とはなんなのでしょうか。並行在来線とは、整備新幹線が新たに開通したときに、新幹線の運行と負担と並行して走る在来線の運行の負担の両方をJRに求めるのは酷なので、自治体の同意を得ることができれば、在来線を経営分離してよいという制度です。JRの運行から切り離されるので、あとを継いで沿線自治体が運行を始めるのが一般的です。基本的に過疎地域の区間が経営分離されるので、今までローカル線の赤字を大都市の黒字で充てていたのが、自治体が運営することになりそれができなくなります。そうすると減便といったサービスレベルの低下と、運賃の値上げが行われます。このように、並行在来線には問題点もあるのです。並行在来線は基本的に都道府県が新たに設立した第3セクターの鉄道会社により運営が行われ、赤字額は自治体の負担、つまり税金により補填されます。つまりどこの都道府県であっても並行在来線になるのは嫌がりますが、新幹線開業による経済効果が上回るため、各都道府県はこれを受け入れてきました。
滋賀県が特殊すぎる
これまでは、新幹線が通る都道府県と在来線が通る都道府県が同一であったために、並行在来線の経営分離を受け入れてきましたが、今回は、新幹線が通るのが京都府、並行在来線である湖西線が通るのが滋賀県であり、滋賀県にとって百害あって一利なしの状況になっているのです。ここで並行在来線の各都道府県とJRの立場を説明すると、整備新幹線の開業に際して、JRは並行在来線の経営分離の権利を持っていて、一方全ての沿線自治体は、並行在来線の経営分離を拒否する権利を持っています。つまり「経営分離を認めなければ新幹線はできませんよ、いいんですね」という関係です。新幹線が欲しければ並行分離は仕方なく認めるし、別に新幹線がいらないのであれば並行分離を認めないという立場になるということです。北陸新幹線の延伸ルートは小浜・京都ルートであり、滋賀県は一切通りません。つまり滋賀県にメリットはないので、経営分離を拒否するでしょう。これが、北陸新幹線新大阪延伸における一つの問題点なのです。北陸新幹線の運営主体であるJR西日本が経営分離をしなければいいのですが、JRも営利企業であり、湖西線の北側は在来線だけだと確実に赤字になるので、株主の意向に反する行動をわざわざとるのかといった疑問もあります。この問題点を解決することはできるのでしょうか。
北陸新幹線新大阪延伸は実現するのか?
では、北陸新幹線の新大阪延伸は実現するのでしょうか。先ほどの問題を解決するための考えられる手段は
①滋賀県が経営分離を認める
②JR西日本が経営分離を実施しない
③国がお金を出すことによって解決させる
④もう一つの選択肢、上下分離方式を導入する
①は先ほどの理由で無理です。②になることが望ましいが、JR西日本がOKを出すかはわかりません。③国がお金を出せば解決しますが、今までの制度を変えるということであり、並行在来線の費用を負担している他の自治体に示しがつきません。④もう一つの選択肢と書いた、西九州新幹線の長崎~諫早間で行われている上下分離方式を導入する案もあります。上下分離方式とは、路線の設備管理費や補修費などの費用を管理主が負担し、鉄道会社がその設備を借りて列車を運行する制度であり、税金が投入されることで運行会社の負担を軽減できるので、並行在来線の問題が解決します。西九州新幹線においては、早く新幹線を通すために長崎県が後ろ盾となって費用負担をしてくれましたが、滋賀県は新幹線開通によるメリットがないため、やはりここでも滋賀県が費用負担をするわけがありません。よって④の解決策でも無理なのです。個人的には②の解決策しかないと思っていますが、皆さんの意見をぜひコメントで教えていただけると嬉しいです。
このブログを気に入ってくれた方は、以下のリンクをクリックしていただけると嬉しいです。
鉄道コムの北陸新幹線情報
なぜ「対面乗換方式」ではない? 北陸新幹線敦賀駅、振り回された歴史の背後に「あの車両」が - 鉄道コム