肥薩線代行タクシー乗車記(八代↔葉木) | 風かおる 鉄の路

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肥薩線復旧…あと9年後!? 

2020年7月4日、発達した線状降水帯によって引き起こされた豪雨が熊本県南部を襲いました。
後に気象庁によって「令和2年7月豪雨」と名付けられたこの豪雨により球磨川水系の計13か所で氾濫・決壊が起こり、球磨川沿いを走る肥薩線(八代~吉松間)に甚大な被害を与えました。
第1・第2球磨川橋梁の流失を始め、被害箇所は全450か所(2020年7月20日現在)。
復旧にかかる費用は約235億円と見積もられています。
肥薩線はJR九州発足時の1987年と比べ利用者数が約81%減少しており、数々の観光列車投入にも関わらず長期的な利用者減少を食い止められていませんでした。
こういった現状からJR九州は鉄道での復旧に難色を示しており、廃線も考えられる状況でした。
しかしながら熊本県は、上下分離方式によるJR九州の負担軽減を打ち出し、さらにJR九州から求められた観光と日常利用の2本柱での活用計画を示すなど復旧に積極的な姿勢を見せていました。
 
これをJR九州が評価したことにより、2024年4月3日、JR九州と熊本県の間で肥薩線八代~人吉間復旧に関する基本合意書の締結が行われ、八代~人吉間の復旧が決定しました(人吉~吉松間は別途協議)。
復旧目標時期は2033年度だそうです。
 
2033年…早くて9年後(2024年現在)ですか…まだまだ先は長いです。
う~ん…そんなに待てない…
 
じゃ、乗っちゃいましょうか!
 

運休区間に乗る方法

ということで用意したのがこちらのきっぷ。
八代→葉木。経由は肥薩線。
正真正銘、運休区間の乗車券です。
 
でも運休しているのにどうやって乗車するのでしょうか?
 
その答えは代行輸送を利用することです。
JRの不通区間を運行する代行輸送は鉄道の乗車券で乗車することが可能なため、見方によっては不通区間を鉄道利用したと考えることもできます。
 
肥薩線において代行輸送は八代~葉木、一勝地~人吉間で行われており、葉木~一勝地間、人吉~吉松間では行われていません。
これは並行する国道219号線も大きな被害を受けていることと、利用者が少ないことが理由です。
 
利用者が少ないため八代~葉木間は朝に1往復、夜に2往復、一勝地~人吉間は朝・夜にそれぞれ1往復、通常の小型タクシーで平日のみ運行しています。
 
あまりにも少ない本数ですが、実態はこれでも過剰輸送といえるほどであり、片道の延べ利用者数が月5人を下回る月もあるとか…
 
ひと月の平日が約20日、片道3便の代行タクシーに月5人の利用があるとすると、1便あたりの利用人数は0.08人…
脅威の利用者の少なさです。
 
平日のみ、しかも朝夜だけ…乗るのが非常に困難な代行タクシーですが、夏至近くの暗くなるのが遅いこの時期を狙って乗ってみることにしました。
 

代行タクシーに乗車!

2024年6月25日、百合の日。
世界が尊さであふれるこの日、やってきたのは八代駅です。
 
和風デザインの駅舎は雨で濡れています。
そう、この日は雨。
球磨川沿いの景色を見るにはあんまり条件としてはよくありません。
ただ、そうそう平日にここまで来ることは難しいですからね…
 
ちなみに八代駅に来るのは「SL58654百歳号」以来。
駅前には大きな晩白柚を抱えたくまモンの姿。
この表情好きです。
 
さて、先ほどご紹介した乗車券は八代駅のみどりの窓口で購入しました。
事前情報通り、マルスでは肥薩線運休区間の発売制限がかかっているため、POSでないと出すことができません。
特に券面にこだわりがないのなら近距離券売機の300円区間のきっぷでも乗れるようです。
 
改札口に掲げられている電光掲示板。
人吉・吉松方面はあと9年間空っぽの状態が続きます…
 
代行タクシーの乗車場所は駅の改札口を出て左手。
専用のポールが立っていて、その隣にタクシーがすでに停車していました。
側面には「肥薩線タクシー輸送」と書かれたプレートが貼られています。
 
この車が今回葉木までの往復でお世話になるタクシーです。

 

神園交通という会社が担当しています。

この会社、タクシーだけでなく「すーぱーばんぺいゆ号」という阿蘇くまもと空港と八代とを結ぶリムジンバスも運行しているのだとか。

 

 

プレートを除けばどこからどう見ても普通のタクシー。
それが片道たったの300円で乗れちゃうというのもすごいですよね。
 
運転手さんに声をかけて乗り込みます。
「たぶんお客さん一人ですよ」という運転手さんの言葉通り、他に誰も乗ってくる方は無く。
定刻の17:15、タクシーは八代駅を発車しました。
 
ところで、気になる利用状況ですが、朝1往復は八代→葉木間で乗車する方はほぼ0。
夕方の1便目、私が今回乗車している便もほぼ乗客は0。
2便目はたま~~~~に地元の方が乗ってこられるのだとか。
JR九州の出している資料、「片道の延べ利用者数が月5人を下回る月もある」のは本当のようです…
 

さっそく波乱!引き返し?

タクシーは八代の市街地を抜け、
 
球磨川沿いへ。
国道219号線から離れ、左岸を進みます。
 
球磨川は普段はとっても穏やかで…と言いたいところですが、雨の影響でけっこう増水しています。
それでも2020年の豪雨のときよりはかなり水位は低いようです。
 
…とここで、なんと今まで進んでいた道が突然通行止めに!
なにかの工事の影響のようですが、これは運転手さんも知らなかったようでやむなく迂回することに。
 
 
…それから数分後。
迂回路もその先が通行止めであることがわかり、もはや引き返すしかないという状況に陥ってしまいました…
 
球磨川の左岸をけっこう進んでいたのですが、全部戻って国道219号から進むしかなさそうです。
ということでせっかく進んだのに引き返し。
 
国道219号新萩原橋を渡って球磨川の右岸を進みます。
迂回したため遅れるかも…とのことですが、行けなくなるよりは全然マシですね。
 
ちなみに国道219号は応急復旧はなされているものの、一般車は通行止めの状態が続いており、緊急車両や地元民の車両に限り通ることができるようになっています。
肥薩線の代行タクシーであるこの車ももちろん通ることができるのですが、未だに完全復旧といかないところに豪雨災害の凄まじさを感じます。
 
球磨川沿いを走っていると、雨がどんどん強くなってきて土砂降りに。
さっきまでポツポツだったのに…
 
西部大橋という橋で球磨川を渡り、再び左岸へ。
 
車窓からホームが見えてきました。
肥薩線に入ってから最初の駅・段です。
 
駅ホームから少し離れたところに代行タクシー停留所がありました。
ここで一旦停車するものの、乗客は0。
乗客は私一人のままで段駅を後にしました。
 

肥薩線が道路に…

先ほどの橋をもう一度渡り、国道219号へ。
ここからは通常の代行タクシーの経路となります。
 
応急復旧が行われたと行ってもまだまだ災害の爪痕は残されています。
路肩が決壊したところがあり、そこでは片側交互通行が行われていました。
 
赤い橋が見えてきました。
中谷橋という名前です。
 
この橋を渡り、またまた左岸へ。
 
今度は熊本県道158号中津道八代線を走ります。
 
車は坂本地区へ。
左側には肥薩線の線路が横たわっています。
 
坂本に到着。
ここでほとんど遅れは回復していました。余裕のあるダイヤなのですね。
ここでも乗客はなく、終点・葉木を目指します。
 
ここで、なんとタクシーは肥薩線の線路の路盤を走ります…!
より川側にある県道が崩落したため、使われていない肥薩線の線路を撤去してその上を舗装し車が通れるようになっているのです。
肥薩線が道路に一時転用されている場所はここの他にも何か所かあり、本来の形ではありませんが球磨川沿いの交通を支えています。
ということで今、名実ともに肥薩線に乗っていることになるわけですね。
久しぶりに見た肥薩線の車窓は、雨とはいえとても風光明媚。
観光路線としての姿を見せてくれました。
 
道路が崩落していない箇所では元の県道をそのまま使っているため線路はそのまま。
草が生えていて、しばらく使われていないことを物語っています。
 
やがて、車窓には球磨川に突き出した構造物の前を通過しました。
これは荒瀬ダム跡。
2018年に撤去が完了した、日本で初めての本格的ダム撤去事例となったダムです。
 
荒瀬ダムを過ぎると、再び肥薩線跡を走り…
 
線路と分かれ、並走したところで、葉木に到着です。
 

葉木駅の今の姿

現状代行輸送で行ける最奥の地・葉木にやってきました!
到着はほぼ定刻。
帰りの時間まで5分ほどあるので駅の様子を見に行きましょう!
 
ということで、階段を上がりホームへ。
 
草こそ生えているものの、線路もホームもきれいに保たれています。
 
八代側を見た様子。
 
 
そばには「さかもと温泉センタークレオン」の看板。
この施設も被災したそうですが、現在は営業を再開したそうです。
 
 
こちらは人吉側。
ホームのすぐそばには線路上に枕木が置かれ、その先の線路は途切れていました。
 
それでは、帰りましょうか。
 
帰りのきっぷを片手に、再び代行タクシーに乗り込みます。 

 

水没した坂本駅

タクシーは再び元来た道を引き返します。

 

肥薩線を道路に一時転用した場所も通ります。

トンネルだけは狭くて通れないためそこだけ迂回するルートになっていました。

草むらに覆われていて、まるで廃トンネルのような趣でしたが、これでも復活予定なんですよね…?

 

ブレッブレな画像ですが、鉄道用信号機が道路脇に立っていました。

本当にここは肥薩線上なのですね…

 

坂本駅に到着。

ここで、運転手さんから少し時間があるので降りて見てきていいとの言葉をいただきました。

 

ご厚意に甘えてさっそく降りてみることにします。

木造駅舎の中に入ってみると…

 

元窓口だった場所も含め、駅舎内はきれいに保たれていました。

 

ただ、壁には浸水した跡がはっきりと残っていました。

その場所は私の身長よりずっと高い場所にあって…

 

そして、ホームを見ると、線路は跡形もなく、ただ土のうのようなものがあちこちにおいてあるだけでした。

対岸にあるはずの2番ホームが見えませんが、どこに行ったのでしょうか…?

 

線路がなくなり、資材置き場になっている…

復活するとわかっていても悲しい光景です。

 

再びタクシーに乗り込み、八代駅に向かいます。

冬になるとこの時間は真っ暗となりますが、代行タクシーを運転していても見える灯りはまばらだそう。

豪雨災害後に空き家となった家も多いそうです。

約235億円かけて肥薩線を復旧させても復旧したときにどれだけ沿線の人が残っているか…

そう心配されていたのが印象的でした。

 

またまた迂回し、国道219号を通って八代駅へ。

 

定刻通り、代行タクシーは八代駅に到着です。

戻ってくる頃になって雨はやみ、晴れ間さえ覗いてきました。

なんで…

 

ということで、肥薩線代行タクシーのひとつ、八代~葉木間代行タクシーに乗ってきました!

片道300円、往復600円で1時間25分もタクシーを独り占めでき、そして気さくな運転手さんが道中いろいろなお話を聞かせてくれたこともあって、楽しい時間を過ごせました。

その反面、今なお残る豪雨災害の爪痕、線路が剥がされ道路となっている姿、そして沿線住民がいまだ戻ってきていない現実…

厳しい状況も目の当たりにすることができました。

 

肥薩線は復旧することが決まっていますが、沿線に元気を取り戻させるような存在になっていってほしいですね。

 

それでは。

 

★乗車データ

肥薩線代行タクシー 葉木行き 八代(17:15)→葉木(17:55)

肥薩線代行タクシー 八代行き 葉木(18:00)→八代(18:40)

※2024年6月25日乗車

 

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