【簡単に書く・既に衰退した地域に公共交通機関は必要か?】芸備線備後落合駅~備中神代は「JR西日本単独で設備投資が出来ない」のは本当か?
赤字の芸備線への投資「単体では困難」 JR西日本が改めて表明
JR西日本岡山支社の藤原支社長は、27日、赤字路線になっている芸備線の一部区間について「JR西日本単独での設備投資は難しい」との考えを改めて示しました。
「『黒字だからいいじゃないか』とかそういうことではなく、持続可能な事業運営というものを考えれば交通体系の議論は必要」 存廃を含めたあり方が議論されている芸備線についてJR西日本は、5月16日の再構築協議会の実務者会議でも「利用の少ないローカル線に単体での設備投資は難しい」と回答していました。 また、JR西日本は2024年9月から11月に岡山県北部を中心に開かれる「森の芸術祭」に合わせた臨時列車について発表しました。津山線で平日1往復、土日2往復、姫新線で土日祝日1往復増便します。(2024年5月27日)
【「JR西日本単独で設備投資が出来ない」のは本当か?】
今回は簡単に書く。しっかりと書き始めると「超大作」になってしまうので、思う事や背景・事情を簡単に述べておく。
JR西日本は東証プライム(旧東証一部)上場企業である。約1兆4000億円の売り上げと営業利益約840億円計上している(2023年度連結・これが単独だと7912億円・389億円となる)。JR西日本と言う企業自体は黒字経営なのである。
では、この営業利益を減らしてまででも不採算路線の維持に金を回すかと言うと…やらない。
JR東海のように東海道新幹線で極端に多く稼いで、会社収入の1割にも満たない在来線事業で積極的に設備投資を行う(俗に「新幹線マネー」と言う)事も出来ない。ざっくり近畿圏と新幹線(山陽と北陸)の稼ぎで9割で、残り(金沢支社と中国統括本部管内の在来線)で1割の実態である。9割の方がJR東海のように巨額ではないので、1割に回せる金も必然的に少なくなる。それでも山陽本線や呉線、伯備線と言った比較的利用が多い路線は金が回せる。
だが、芸備線の三次以東になると話は別で、極端に収入が少ないので日々の運転にかかわる経費(燃料代、人件費、車両や線路のメンテナンス費用)さえも運賃収入から賄えない。本来は「芸備線で稼いだ収入は芸備線で維持に必要な費用も賄う。その上で黒字運営する」と言うのが大前提である。ところが実際にはそれが出来ていない。不足する金額については伯備線や山陽線、大阪環状線等の売り上げで出す事が出来た「粗利」から「工面」するしかないのだ。
昔はそれで通用した。しかし、売り上げが良い路線の「粗利」が減っている事に加えて、そちらの方で必要維持費も高騰している(その辺は人件費や設備の高性能化等があるが詳細はここでは述べない)。「粗利」を残すためには「工面」する額を落とさないといけない。「粗利」を残す必要がないのであれば(要は会社全体としての赤字運営容認)、芸備線や木次線のような不採算路線の維持費用に回す事だって可能だ。
だが株式会社である以上は「鉄道」と言う公共性が高いインフラ企業であっても「儲かっていないので運営から撤退します」とは言いたくても言えない。
そもそもインフラ事業で「粗利」を出す事は無理に等しく、道路の収支(一般道)で見れば赤字運営の所も多いと聞く。それでも税金で維持しているのでそこには「粗利」と言う考え方は働かない。
「鉄道」もインフラであるので、下の部分(線路設備)と車両はJR西(鉄道会社)が維持するのではなく、国や自治体が税金で行うべきだ。
そうしないととてもではないが、地方の鉄道路線は「粗利」が出せないどころか、日々の運転にかかわる経費すら出せていないのが現実にある。
いろいろスタイルはあるものの「上下分離」を都市部を除く全国全自治体でやらない限り、20年後、30年後、鉄道の維持は不可能になるだろう。
誰かが言っていた。鉄道は都市部と新幹線しか残らなくなると。
今の第一種鉄道事業者と言う枠組みでは、そうなってしまうのももはや時間の問題である。
【やる気のない列車本数・既に衰退した地域に公共交通機関は必要か?】
細かくは書かないが「やる気がない列車本数」である。芸備線備後落合~東城だけで見ると、朝・昼・夜に1往復ずつ(合計3往復)しかない。備後落合駅で三次方面と木次線との接続が良好とも言えず、14時30分前後に「3方向接続」があるだけ。中には夜の新見発の列車(445D)は備後落合到着が19時46分だが、三次行きは19時18分発(365D)で絶妙に接続していないため、実質的には1日2往復しかない。
「こんなダイヤで誰が使うんだ?」
という話である。365Dがなぜ待てないのか?単線で交換駅が少ないとはいえ(昔はたくさんあったがJR発足後に棒線化された駅が目立つ)”ダイヤがスカスカ”なので他の列車への影響は無い(あるとすれば三次発の広島行きくらいか)。
人口はかなり少ない。芸備線三次~備中神代に限れば直接の沿線人口は3万人程度ではなかろうか。国道(183号・180号・314号・432号)は整備されていて走りやすい。一般道でも60~70キロ走行が長い区間可能でしかも信号機も少ない。余程の事が無い限り渋滞も発生しない。E2A中国道だってある。
だが交通量は本州の中ではトップクラスの少なさである。北海道の道北・道東の主要国道と同じ程度で”道路もスカスカ”である。
「持続的な交通体系を協議?」
…仮に路線バス(デマンドバスを含めていろいろある・ここでは一括して路線バスとしたい)にした所でも、利用するのは交通弱者(高校生やお年寄り、その他自動車が運転出来ない人)程度。
意外に旅行者は利用しない。なぜならば「どこを走っているのかよくわからない」「乗り換えアプリに時刻や運賃が表示されない」等の理由だ。最初から旅行しないか、レンタカー等の自動車になってしまう。これは北海道の道北・道東でも同じ事だ。
国鉄時代に廃止になった鉄道は路線バスが設定されたが、利用が鉄道時代より極端に減った(平均5~7割減)所が圧倒的に多い。2020年代になれば運転士不足等もあり、路線バス自体が消えた所もある(例えば音威子府~浜頓別~稚内の天北線バス等)。
そうなれば「自家用車でどうぞ」である。実際に芸備線備後庄原~東城間や木次線備後落合~出雲坂根間の国道を1日に2~3往復した日が5月にあったが、列車を使うよりも自動車の方が非常に便利であった。
鉄道を維持するための費用を国や地元自治体が負担しないのであれば、廃止も仕方ない。それが移動需要の実態なのだから。
そういう「時代」なのである。JRが何が何でも維持する…という考え方は都市部の路線か新幹線でしか通用しなくなっている。
岡山県、広島県、島根県、三次市、庄原市、新見市、奥出雲町と言った「自治体の本気度」が試されている。
鉄道廃止=さらなる衰退・過疎化の進展・消滅都市になる
と覚悟しておく方がよい。簡単にしか書かないので、今回はこれだけにしておく。