定期特急券の類を類聚する

運賃関係

一般に定期券は乗車券でしかない(しかも往々にして料金券を有しても特急等の列車へ乗車できない1)。が、そんな定期券でありながら特急に乗車することを前提とするものがあるので、今回はそれを見ていく。

(と思ったが、ほどんどJRばかりになった)

JR北海道「かよエール」

JR北海道(HP)のかよエールは設定区間内の特急列車普通車自由席を利用可能である。また、特徴として530円を課金して普通車指定席を利用可能(100kmまで1300円など、グリーン料金を支払えばグリーン席も利用可能)としている。設定している特急列車は自由席の残っている札幌―旭川・稚内・網走間特急列車である。

他方、2024年春ダイヤ改正で特急列車から自由席がなくなった札幌-函館・室蘭・釧路間の特急列車にはかよエール+が設定されている。特徴として、①発売額の変更はない②普通車指定席の空席が利用可能③追加料金不要で指定席を予約できること(④グリーン車には運賃部分のみ有効)がある。

なお、釧路~新得、函館~長万部、旭川~稚内・網走間は通学定期券のみの設定になっている。また、料金設定はかなり様々のように思われる(一般的な定期券と同じような算式にはみえない)。更に、IC定期券は発行されていない。

JR西日本・JR四国「パスカル」

JR西日本(HP)の特急定期券はパスカルと称する。特急を利用できる区間は200kmまでである。値段の計算方法は定期券の額面と特急料金相当額の単純合算である。

利用できる区間は、山陰線(益田ー鳥取)、伯備線(米子ー岡山)、岡山~宇多津・土讃線、予讃線方面、姫路~湖西線・米原・敦賀、大阪~天王寺・関西空港、紀伊勝浦~新宮、津幡~和倉温泉となっている。設定区間であれば特急を乗り継いでも利用可能としている。

なお、2024年3月16日から全車指定席となった列車(やくも・サンダーバード・しらさぎ・スーパーはくと・スーパーいなば)は2025年2月28日までの発売となり、それまでは空席利用となる(PDF)。このような取り扱いは、くろしお・こうのとり・きのさき・はしだて・まいづるでも実施されていた(PDF)。JR北海道と対比してみれば、チケットレスサービスに誘導していきたいのだろうというのはよくわかる。

それ以降利用範囲は益田ー鳥取、岡山ー宇多津(四国方面)、関西空港ー大阪・米原、紀伊勝浦ー新宮、津幡ー和倉温泉となる。

なお、JR西日本は「マイシート」という指定席特急料金定期券を発売していた(どうやら廃止になっている、PDF)。

JR九州「エクセルパス」

JR九州(HP)も同様にエクセルパスがある。こちらも、特急列車自由席に乗車可能で、定期券に特急料金をプラスして発売している。特徴としては、門司港・博多間など、格安に設定しているものがある(特に小倉・博多間は67.2kmにもかかわらず、50kmまでより格安になっている。明らかにFREXに対抗しているのだろう)。

新幹線「FREX・FREXパル」「新幹線エクセルパス」

新幹線特急券を付帯したFREX・FREXパルがある。特徴として

・6か月定期券の発売はない
・東海道、山陽新幹線のみ、会社跨ぎでの発売が可能である。
・在来線との連続した乗車券も発売される。
・ICカード区間内で定期券を購入できるのであれば、ICカードに付帯させられる

他方、JR九州は新幹線エクセルパス(HP)として発売しており、6か月定期券も発売している。

グリーン定期券

趣旨から若干外れるが一応これも触れておこう。首都圏で発売されている定期券で、グリーン車への乗車が可能となっている。料金はかなり高い(旅客営業規則36条の2、95条、別表2号ヘ、ト、トの2)。条文を読めば、本州三社についてはすべて、「大人特別車両定期旅客運賃」が一応存在していることになる。なお、設定料金は100kmまで(必要があれば100kmを超せる)。

南海「定期特急券」

ここからは私鉄篇。南海電車は、特定の列車で、同じ時間同じ座席を1か月単位で発売している(HP)。発売方法は少々特殊で、前月の25日以降発売で、有効期間は1日から月末まで、料金は9430円。だいたい平日使えばちょっとお得というくらいである。利用できる列車は南海線特急の全列車と、りんかん・泉北ライナーの指定列車(朝夕の通勤、退勤列車に限定)である。

ちなみに「ご乗車の際は、別途乗車券が必要です。」としかないので、定期券に付帯しているわけではない。また、JR西日本のマイシートに対抗してか、「「ラピート」「サザン」「りんかん」「泉北ライナー」の特定列車で、同じ時間・同じ座席を1か月単位で購入できます。1か月間『マイシート』としてご利用いただけます!」という触れ込みになっている。

同様の制度として、名古屋鉄道のミュー定期券があったが、廃止されている(HP)。

京急「Wing Pass」

京浜急行のウィングシートにも、定期券類似サービスがある。

モーニング・ウィング号に設定されているWing Passがそれである(HP)。乗車前月の1~20日に購入できる、各月ごとの座席指定制のチケットである。ただ、特徴としては、KQuickという専用サイトでのみ購入可能ということである。料金は5500円(ウィングチケットは300円)。

京成「モーニングPASS」・「イブニングパス」

京成のスカイライナー車両を導入したモーニングライナー・イブニングライナーにも乗り放題の乗車券になっている(HP)。

それぞれ、月末25日から発売で、翌月1日から月末に購入できる。それぞれ料金は8150円。特徴として

・モーニング/イブニングそれぞれで、どの列車でも券面指定された座席に乗車できる
・持参人式での発売

ということが挙げられるだろう。

小田急「EMot ロマンスカーパスポート」

小田急は通勤想定ではないものの、特急定期券のようなものを発売した(PDF)。平日9:00~17:59までに出発する列車に2回乗車することができる。

  1. なお、今回は「定期券と自由席特急券を組み合わせて特急列車に乗車できる」や、「IC定期券で新幹線自由席に乗車でき、特急料金は自動的に残高から引き落とされる」というものの類聚は行っていない。 ↩︎