北海道新幹線の札幌延伸「延期」へ トンネル工事が難航、新しい開業予定時期は?



工事中の北海道新幹線・新函館北斗~札幌について、建設主体の鉄道・運輸機構は完成・開業時期を事実上延期する考えを示した。5月8日、国土交通省の斉藤鉄夫大臣に「2030年度末の完成・開業は極めて困難」と報告した。

札幌駅に入線する北海道新幹線の列車のイメージ。【作成:鉄道プレスネット】

北海道新幹線は新青森~新函館北斗が2016年に開業。残る新函館北斗~札幌は2012年に着工し、2015年の政府・与党申し合わせで2030年度末の完成・開業を目指すとされた。新函館北斗~札幌の工事延長は211.9kmで、このうちトンネル区間は168.9kmに及ぶ。トンネルの掘削延長は今年2024年4月1日時点で74%の125.6kmに達した。

トンネル工事の進捗状況。【画像:鉄道・運輸機構】

鉄道・運輸機構によると、沿線には比較的新しい時代の地層が広く分布している。軟らかくて掘削時に崩れやすい性質があり、トンネル工事は全体的に難航。火山や活断層に近接するトンネルでは工事が大幅に遅れている。

土砂が流入した渡島トンネルの台場山工区。【画像:鉄道・運輸機構】

渡島トンネルの場合、圧力が高い地質などの影響を受け、地表面の陥没に伴うトンネル内への土砂流入で工事が長期停止したほか、想定を大幅に超える地質不良への対応で掘進速度が大幅に低下。自然由来の重金属などを基準値以上に含む土(対策土)の受入地の確保も難航し、現状で3~4年の遅れが発生している。

羊蹄山の近くを通る羊蹄トンネルでは、10数m四方の巨大で硬い岩の塊が出現してシールドマシンが破損。掘進が長期に渡り中断した。ほかにも大雪の影響で掘削設備の現地での組立が遅れたことや、シールドマシンの刃の交換などにより、現時点で約4年の遅延が生じている。今後掘削する予定の場所でも、シールドマシンが停止する恐れのある岩の塊が3カ所で確認されている。

このほか、札幌市内の地下を通る札樽トンネルなども対策土の受入地の確保に時間がかかり、工事は3年から3年半程度の遅れが発生。2024年4月以降の働き方改革の実施もあり、さまざまな工程短縮策を実施しても効果は限定的という。

工事が大幅に遅れているトンネルの位置。【画像:鉄道・運輸機構】

こうしたことから鉄道・運輸機構は、2030年度末の完成・開業を事実上断念した。新しい完成・開業予定時期の設定については「今後の地質不良の状況や土木工事に続く軌道・電気工事の調達・入札状況等について見極める必要があることから、現時点で具体的な時期を示すことは技術的に困難」としている。

鉄道・運輸機構は「なるべく早く今後の見通しを明らかにできるよう最大限対応する」としているが、具体的にいつ明らかにできるかは示していない。営業主体のJR北海道は鉄道・運輸機構の斉藤国交相への報告を受けて「営業主体の立場から必要な協力を行う」とコメント。札幌駅周辺の再開発事業については「新幹線のスケジュールによらず着実に進める」としている。

《関連記事》
北海道新幹線の札幌延伸「中間4駅デザイン」決定 いずれもアンケート最多得票
北海道新幹線「2年ぶり」巨岩で中断、羊蹄トンネル工事再開 全体の掘削率は70%に