最初に考えていた水路の断面図はこうでした。
石積みの擁壁が直立していますね。
それなのに、試作した水路の擁壁は斜面になりました。特に理由は思い当たりませんが、こっちの方が見慣れた形状なので、自然と手が動いたのでしょうね。
やっぱり、こっちの方が良いですね。擁壁は斜面にすることに決めました。
擁壁の石積みは、上写真のように、1ミリ厚のスチレンボードに表現するのですが、ここで問題が発生しました。
川正線の水路は、真っすぐではなく、微妙なうねりや大きな曲がりがあるのです。
そして、擁壁が真っすぐでない場合、下図のとおり、直立した擁壁と斜面の擁壁では展開図の形状が異なるのです。
きっと誰もが気付くことだと思いますが、迂闊な私はこのことに気付かず、長い長方形の石積みの制作を黙々と続けていたのでした。
それがある程度できたところで、水路に沿ってスチレンボードを曲げてみたら、全く地形にフィットしません。心の中で怨嗟の声を上げましたよ。
かくなる上は捲土重来、再チャレンジです。
そのためには、擁壁の展開図を正確に描かなければなりません。
試行錯誤の末に辿り着いた作図方法について、こんな形の擁壁を例に、CADを使った作図方法を説明してみます。
まず、擁壁の高さと傾斜角度を決め、擁壁を横から見た図を描きます。
次に、水路の底面形状を切り出して、スキャナーで読み取り、CADに取り込みます。
私のスキャナーは現寸で読み取ることができないので、定規を一緒に読み取って、CAD上で拡大・縮小を行い、現寸に合わせます。
そして、擁壁を上から見た図を描きますが、その準備として、CAD上で水路の底面形状を写し取ります。この時、曲線部は短い直線で構成します(私の経験では、実際の測量でも、曲線部は短い直線を組み合わせていました)。
形状を写し取った線は、擁壁の底辺になります。これに以下の作業を加えて、擁壁を上から見た図を完成させます。
①擁壁の底辺と上辺の間の、上から見た距離は、図1の底辺の長さに等しいので、それぞれの底辺から5.53ミリ離れた平行線を描きます。
②平行線の交点と対応する底辺の端点を結べばできあがりです。
これで、上から見た図は、四角形の集合体になりましたね。
次は、この四角形ひとつひとつを平面図に描き起こします。
平面図とは、擁壁面を垂直に見た場合の形状のことを指しています。
平面図を描き起こす方法は以下のとおりです。上の図2で赤丸で囲んだ四角形を例に説明します。
上の図から四角形を抽出し、底辺を水平に直したところからスタートです。
①上から見た図と平面図の違いは、Σの長さです。平面図のΣの距離は、図1の斜辺の長さと同じです。
②上辺となる線分Bを線分Aから17.87ミリ離れた位置に移動します。
③線分Aと線分Bの端点同士を結びます。
この作業を繰り返して、四角形の平面図を組み合わせると、こんな展開図ができあがります。
展開図を切り抜いて、水路の底面と合わせると・・、ぴったりです!
考えてみれば当然の作図方法ですが、ここに辿り着くのにかなり苦労しました。
この作業、意外に時間がかかり、しばらくはパソコンがお友達です。パソコンを睨みながら、鉄道施設とは関係のない図面を引いていると、「これは鉄道模型?」という思いがしてきますが、私の模型鉄道には不可欠なものなので、これも鉄道模型です。
さて、そんな作業を続けていると、川正線の運転もダイヤ運転なんかに拘らず、特急列車をぶっ飛ばしたくなりました。
まあ、言うほど飛ばしてはいませんが、少年時代に憧れた特急列車も、たまには良いものです。
本日も、ご訪問ありがとうございました。