新幹線 LXXII レール削正車 / 新山口 | 安芸もみじ / Photos, Historys, Trains - Hiroshima JAPAN

新幹線 LXXII レール削正車 / 新山口


金属製のコインを金槌で叩くと、その形状が変形します。

金槌の重量と振り下ろす移動速度がエネルギーに変換され、衝撃となってコインに波紋が伝播したことにより、コインが変形したのですけれど。

初代 新幹線の0系が16両編成で走った場合、その重さは約880tで、最高運転速度は1986年まで210 km/h、1986年以降は220 km/hでした。

現在主流形式のN700Aの編成重量は約713t、新型のN700Sは炭化ケイ素と言う新技術素材の投入で700t未満の編成重量ですが、N700A・N700S共に最高運転速度は300km/hです。



速度と質量は正比例なので、スピード分が編成重量に加算されて、レールや枕木などの線路に負荷をかけます。

山陽新幹線は1日に約260本の列車が走り抜けますが、全列車が新大阪~博多間を走破する訳ではなく、東京・新大阪から岡山止・広島止などの他、区間運用や新下関から熊本行きもあるため、純粋に〇〇往復とは言えません。

が、単純なイメージとしては概ね130往復と表現しても妄言には当たらないでしょうが、やはりここは約260本と言い切っておきます。

昔、タイヤのCMで1本の路面接地面積はハガキ1枚分と表現していましたが、ゴムではなく鉄の道の上に鉄の車輪が乗っている鉄道車両では、 ミリ単位での接触面積しかありません。



新幹線の線路幅は軌間1435mmで、車輪の直径 = 730mm以上・ フランジの高さ = 25mm以上35mm以下と決まっていて、脱線防止の目的で断面から見て緩やかな曲面となっている故に、接触面積は140平方mm程度となります。

140m㎡ってどのくらい?のイメージですが、あくまで停止中の状態で、0.5mmのシャーペンの芯2cm強と言ったところでしょうか。

実際に300km/hで走ると空力学的にダウンフォースが働いて車体は地面方向へ押し付けられ、カーブでは遠心力も作用し、車輪も物理作用で偏平化するため、線路との接地面積は変動しますが、それでも何十ミリも増える訳ではありません。

またこれほどの接触面積しかなければ、割り箸の溝に爪楊枝が引っかかるのと同じで、レールの小さな傷も振動として車輪が拾ってしまい、車内へ増幅して伝わるだけではく、傷もやがては亀裂化して、新幹線が走行中にレールが破断することになります。



そのような大災害へ繋がる前の段階でも、列車が走行する度にレール頭部の形状が次第に摩耗して、波を打ったような波状摩耗や偏摩耗などが発生しています。

疲弊状態のレールの上を列車が走行すると振動や騒音は車内以外にも、線路沿線の住人へ不快な生活を強要することに繋がってしまいます。

そしてレールへ深刻なダメージを与え続けていると、レールの耐久年数を下げる他に道床の劣化も促進させ、線路全体を劣化させる負荷が加速度的に大きくなります。

そこで安全性の維持のためにメンテナンスが必須な訳ですが、今日の写真はレール削正車と呼ばれる保線用車両です。



傷んだレール頭部を新品レールの形状に近づくように、高速回転する砥石等で数回に分けて削ることで、騒音・振動の低下そしてレール表面のシェリング、きしみなどの疲労層を除去するメカトレインです。

レールの延命を図ることを目的とする作業車ですが、削正によりレールの寿命は2倍程度伸びるため、レール交換のサイクルを伸ばすことで、人員不足により困難となりつつある保線作業を、経費削減しつつ効率化と安定化の促進に繋げて安全性の確保を実現しています。

山陽新幹線は山間部を走る区間も多いですが、住宅密集地を走る線区も数多くあり、JR西日本は騒音対策等の沿線環境保全は重要な対策と位置づけています。

新幹線の環境対策については、国において「新幹線鉄道騒音に係る環境基準」が定められており、JR西日本では騒音低減のため地上設備および運行車両の両面から、対策を推進しています。



新型車両の軽量化もその一環ですが、地上設備では防音壁のかさ上げや吸音板の設置などの他、さまざまな施策の1つとしてレールの削正を行なっています。

新幹線鉄道沿線の住宅密集度の高い地域から順次、騒音を75デジベル以下にする対策を促進してきましたが、地盤振動やトンネル微気圧波についても対策を推進し、沿線環境保全に努めています。

国において定められた環境基準を達成するための取り組みを推進し、鉄道沿線の生活環境保全に配慮しつつ、乗客の居住性や快適性の追求を続けるJR西日本です。

今日の写真はずいぶん以前の撮影ながらずっとSDカードの中に眠っていたのですが、先日 西広島駅で在来線用のレール削正車を撮影したのど、SLやまぐち号の復活運転が近くなったことから。

今回、やっとUPできる機会がやって来たと言った感じで、記事にしてみました。




ちなみに黄色い車両は″逸脱防止ガード敷設運搬車″と言って、レールとレールの軌間内に脱線防止のガードレールを取り付ける際に、そのガードレールを運搬するための車両です。

また、以前の新山口で撮影したマルチプルタイタンパーの時に一緒にUPした、国鉄型保線用モーターカーは全て置き換え廃車となったのか、この時にはもう見かけませんでした。

ラストは、レール削正車のリプレースを行った広島のメーカー″大西電機工業株式会社″さまへ、リンクを貼らせて頂きました。


にほんブログ村 鉄道ブログへ
広島ブログ
Please follow the blogxTranslated profile page
安芸もみじツイッター安芸もみじインスタグラム安芸もみじユーチューブ安芸もみじフェイスブック


鉄道から見る広島郷土史
平和記念日と終戦記念日
D51639の日
芸備線と持続不能の日本
湘南形電車誕生の日