★超人気で乗れない!大井川鐡道井川線星空列車2023年度冬

 

大井川鐡道(大鉄)と言えば本線の「SL急行」や「きかんしゃトーマス号」を思い浮かべる人が多いだろう。

どうも埋没気味な井川線。それもそのはずでJR東海道線から接続する金谷駅からは遠く、まずは大井川本線で1時間半程度電車に乗らないとたどり着けない。

しかし、2022年9月の台風災害で川根温泉笹間渡~千頭は不通のまま。公共交通機関による輸送では、金谷~家山間は大井川本線の電車(またはSLかEL)に乗り、家山駅で川根本町が運行するコミュニティーバスに接続。町営(実際の運行は大鉄の子会社大鉄アドバンスが受託)のため運賃も安く抑えられているが、本数が満足にあるわけではない。結局本線が不通である今、千頭への交通手段は事実上自動車だけとなっている。E1A新東名の島田金谷ICからでも1時間弱はかかる道のりである。そのため井川線に乗る場合、前提として「自動車で来る事」となる。その点は大鉄も強調せざるを得ない状況だ。

撮影日=2024年2月11日(日)

 

【井川線星空列車に乗るには乗車日のみ販売の専用乗車券が必要。先着150名まで】

 
 
↑静岡県川根本町にある道の駅音戯の郷に来た。2月の1回目の3連休の中日2月11日で、15時過ぎに到着したが既に駐車場は満車状態。「星空列車」のノボリが目立つ。
 
 
↑人が消えたタイミングで千頭駅の駅舎を撮影したが、到着した15時過ぎには多くの人で賑わっていた。SLが来ない今にとっては井川線以外駅を利用する目的すら果たしていない。
井川線星空列車は千頭17時00分発→奥大井湖上駅18時08分~19時15分(この1時間で星空観察・川根本町は「日本で二番目に星空が見える町」として知られている)→千頭駅20時20分のダイヤである。途中駅からの乗車と下車は出来ず、乗車には専用のきっぷが必要である。このきっぷは当日千頭駅窓口のみで販売される。事前予約(ネットや電話)は受け付けていない。乗車出来る人数にも限りがあるため「先着150名限定」である。
川根本町は静岡県でも高齢化率が高く過疎化が進む町。人口は5,000人台と静岡県内では少ないが、北海道、長野南部、山陰、紀伊半島、四国、九州にある極端に人口が少ない町村(2,000人以下もザラではない)に比べれば、まだまだ多い方であるが、「田舎」そのものであるには変わりがない。
一体どこから人が集まるんだ?と考えた時にそれは観光客である。奥大井と言われるこの地域は接岨峡温泉や寸又峡温泉等の温泉があり、大自然あふれる。都会には無い非日常体験をするために遠くから来る人が多く、関東や関西方面のナンバーの車も少なくない。井川線そのものが「観光地」なのだ。
星空列車は2023年度の場合、2023年11月から2024年2月末までの土日運転(年末年始は除く)である。そのため祝日となる月曜日には運転しないのだ。
 
↑しかし、私が来た時(15時40分)には既に完売であった。その事を知らずに来る人が絶えることなくいたので、この日の実際の乗車希望者はざっと300人はいたか。近くにいた案内人に何時に売り切れたか?聞くと15時30分だったという。前日(2月10日)は15時15分だったという。フツーの日曜日(月曜日がド平日の場合)16時台でも買う事は出来るという。
2023年度の井川線星空列車は乗車出来ない事が決まった。ならば自動車で星空列車を追いかける事にした。
 

【堂々の編成!星空列車9両で運転】

 
↑千頭駅のホームに入る。有人駅なので入場券150円が必要だが、いちいち紙の入場券は発行せず、改札口に置いてある箱に150円投入すれば誰でも自由に入れる仕組みだ。井川線ホームは6番線のみで大井川本線ホームと比べて低い位置になっている。冬らしく雪だるまが出迎える。星空列車の乗車改札は16時30分過ぎからなので、星空列車乗車のお客は駅舎内で開始まで待つ事になる。私はそれは関係ないので人が誰もいないうちに撮影しておく。
 
 
↑千頭駅の「トーマスフェア」は常設展示のような形になった。「きかんしゃトーマス号」の運転が無い時期は高い柵で隠されていた。台風で被災したため元南海21001系(21003+21004)が取り残されて1年半が経過しようとしていた。塗装は完全に剥げており無残な姿になっている。陸送しない限りは車庫がある新金谷駅にいつまでたっても帰れない。
 
 
↑井川線の定期列車が到着。この車両が折り返し星空列車になる。専用のサボも早着された。この時点で編成は編成は5両(ディーゼル機関車1両+客車4両)である。
 
 
↑後ろには3両(客車2両+ディーゼル機関車1両)も待機
 
 
↑これも連結して9両(客車7両+ディーゼル機関車2両)となった。井川線で9両と言うのは堂々の列車である。この日の車両は下記の通り
井川方からクハ602+スロフ302+スロフ305+スロフ314+スロフ309+DD205+スロフ304+スロフ301+DD201
 
↑DD201とクハ602に星空列車ヘッドマークが付けられる。発車10分前には客車は満席状態であった。
 

【アプトいちしろ駅でアプト式電気機関車と連結し合計11両の列車編成に!さらに2種類のヘッドマークがあった】

 
↑自動車で先回りしてアプトいちしろ駅に着いた。道が整備された県道から約2キロは「悪路」そのもので、GoogleMapsでさえも正確に案内出来ない「秘境」である。決して広くないスペースに同業者(撮り鉄)と思われる3ナンバーの自動車が2~3台止まっていた。ナンバーを見れば大宮・浜松で地元の人ではないことがわかる。
 
 
↑既にアプト式電気機関車ED90が待機していた。「ほしぞら」と言う見慣れないヘッドマークが付いていた。千頭駅を発車した星空列車の到着を待つのみであったが…
〇〇さん(運転士)!ヘッドライト点けてください!
↑撮り鉄がこんなお願いをする。フツーは「運転士さん」なのだが、この撮り鉄は担当運転士の名前を知っていたらしい。一般に撮影向けにヘッドライト(しかもハイビームで)点ける”サービス”は車庫貸切の撮影会でも無い限りやらない。ましては撮り鉄がそういうお願いをすること自体がご法度と言うのはこの世界では暗黙の了解のはずだが。
 
↑結局はヘッドライト(しかもハイビームで)点けた。「秘境」なのでこのような事が許されたのか?定かではないが、そこまでして撮りたいか?撮ったら何に使うんだ?公開せず「マイコレクション」で終わらせるというのは何とも許せない。ブログやSNS等で積極的に公開するべきではないか。それもノーカットで。こういう「迷惑な撮り鉄」を目の前見たのでイラっと来た次第。
あっざす!申し訳ないです!
何とも軽いノリで担当運転士に挨拶した撮り鉄であった。あー非常に後味が悪い。
 
 
↑千頭からの星空列車が到着。ED90の連結作業中お客はホームに出る事が出来る。公衆トイレがあるのでその間にトイレを済ます事が出来る機会でもある
 
 
↑ED90がホームに向けて移動する
 
 
↑ホームでは連結作業中。多くの人垣が出来るのは言うまでもない。アプト式区間は堂々の11両運転だ。
 
 
↑ED90の後ろ側は「星空」と書いた別のヘッドマークになっていた。前は「ほしぞら」のヘッドマークなので、この違いに気付く一般客は少ないだろう。撮り鉄にとってはこれは格好な撮影材料となるのは間違えない。
 
 
↑星空列車乗車のお客にとってはアプトいちしろ駅も重要な観光地のひとつ
 
 
↑ED903とDD201の連結が終わり車掌がホームを見る。トイレ休憩も兼ねていたためトイレに残っている人がいないか確認する。約10分程度の停車で発車する。この時点でちょうど日暮れだ。
 
↑星空列車乗車が発車すると完全に静寂となる。そこに残るのは熱心な?撮り鉄だけ。今回撮影した内容についてあーでもない、こーでもないと話す。私は基本的に「集団」で行動する事はない。作品を競い合う、SNSウケするようなものを撮ろうとも思わない。人が撮らない構図から鉄道を記録するのが好きだからだ。
 
↑30分ほど自動車の中で休憩する。ED90は隣の長島ダム駅で星空列車を切り離した後、回送でアプトいちしろ駅に戻ってきた。そのまま星空列車が戻ってくるまで長島ダム駅で待機かと思っていた。やはりこの事を知っていた撮り鉄が「待ってました!」かのように撮りまくる。真っ暗なので沿線撮影は不適と言う事がわかっていたためか、明るい駅での「車両単品」の撮影が主体であった。
 

【長島ダム駅から見る星空はまるでプラネタリウムのような感じ】

 
 
↑長島ダム駅に移動する。道路事情が良くて片側2車線の道が付近には通っている。千頭からだと急な坂や曲線もあるが決して「険しい道」では無い。
星空列車の編成は、奥大井湖上駅到着後はお客を全員下車させる。発車時間まで待機する事はなく、回送で1駅先の接岨峡温泉駅へ向かいここで折り返す。19時過ぎに帰りの千頭行きが到着し、お客が再び乗車し帰るのだ。当然アプト式区間ではED90が必要なため、長島ダム駅で連結、アプトいちしろ駅で切り離しがある。
 
 
↑アプトいちしろ駅から回送でED90が到着。やはり「待ってました!」かのごとく撮り鉄が井川行きホーム(車両すぐそば)から「ええカメラ」で撮影する。
 
 
↑星空列車が長島ダム駅に到着
 
 
↑ED90と星空列車が連結する。これを撮影するお客が集まる。連結方法について車掌が説明していた。
 
 
↑車掌の誘導でED90が少しずつ進み連結器とかみ合う。この瞬間は大量のシャッターが切られる。今のiPhone等のスマホならば容易な操作で夜でもキレイに撮影出来る。
 
 
↑11両の編成が出来た。今度は90‰の急坂を降る。
 
 
↑周囲は暗闇であるが、長島ダム駅付近は明るい。ED90のヘッドライトも頼もしい。車掌の合図で星空列車は発車。暗闇の中で独特な走行音が山々に響く。
星空を眺めるとキレイだった。カメラでは撮影出来なかったが、細かい星まで細かく見える。まるでプラネタリウムのような感じだ。時期によって差はあるのかもしれないが、川根本町にじっくりと星空を眺めに再び行きたい。