京津線の応急処置 | 京阪大津線の復興研究所

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大津線とは、京阪の京津線と石山坂本線の総称です。
この大津線の活性化策を考えることが当ブログの目的です。
そのために、京阪線や他社の例も積極的に取り上げます。

(前々回からの続き)

それでは、地下鉄側の乗継割引の拡大をあてにせず、京阪側の割引拡大だけで京津線の増収を図るのはどうでしょうか。

 

例えば、京阪山科―御陵―三条京阪間は京阪170円+地下鉄260円のところ、京阪20円引き+地下鉄50円引きで合計360円となっています。しかし、地下鉄山科―三条京阪間は260円なので価格面において勝負になりません。

 

これを京阪が自力で同額にするには、割引額を120円に拡大する必要があります。つまり、乗客1人当たりから50円の収入しか得られないのです。現実的な対策とは言い難いものがあります。

 

効果が見込めるのは、京阪山科―御陵―蹴上・東山間です。ここでは京阪170円+地下鉄220円から、京阪30円引き+地下鉄60円引きで合計300円となっています。地下鉄山科―御陵―蹴上・東山間は260円なので、差額は40円です。

 

よって、京阪山科―御陵―蹴上・東山間において京阪が運賃政策面でなすべきことは、

「割引額を30円から70円に拡大する」

それだけです。

 

これで、同区間の運賃は地下鉄山科駅発着時と同額になります。蹴上の北側には南禅寺と永観堂が建ち、さらに哲学の道が銀閣寺へと続いています。東山は北側に岡崎公園と平安神宮、南側に知恩院と八坂神社や高台寺が連なり、清水寺さえも歩けない距離ではありません。いずれも名所旧跡には事欠かず、観光客を取り込むことができます。

 

山科駅は兵庫県・大阪府からJRの新快速が直通しているほか、1つ東隣の京都駅経由で東海道新幹線からの乗り換え客も期待できます。このことを「山科ルート」として「東福寺ルート」以上にアピールするのが良いでしょう。

 

この場合、乗客は一回100円を京阪に支払うことになります。京阪の通勤定期割引率は大手私鉄の例に漏れず約40%なので、これを一回あたりに換算すると170円×0.6=102円となります。すなわち、通勤客輸送とほぼ同額の収入が得られるということです。

 

ちなみに、蹴上・東山両駅周辺はその土地利用からして通勤需要が限定的なので、定期運賃の乗継割引の拡大は不要でしょう。逆に、中高一貫の私立学校が多数立地するため通学需要は旺盛ですが、京阪の通学定期割引率はこれも大手私鉄の例に漏れず約80%です。乗継割引の拡大を加えれば収益性は極めて低くなるので、こちらも現状維持で十分です。

 

定期客輸送は従来通り東西線に任せ、京阪は観光客を主とする定期外客に狙いを絞るのが得策です。オーバーツーリズムを緩和する観点からしても、地元客と観光客の分離は大きな意味を持ちます。もちろん、バスからのシフト効果も見逃せません。

 

地下深くに設けられている東西線の山科駅とは異なり、京阪山科駅はJRの駅の目と鼻の先にあるので、立地条件は圧倒的に優れています。ただし、現状のように昼間時の運転本数が毎時3本では利用客のシフトは見込めません。京津線・石山坂本線ともに、東西線やJRと相性の良い15分サイクルに戻す必要があります。

 

ここは、自社の増収に直結しない太秦天神川駅への乗り入れを中止し、全列車を京都市役所前駅止まりに短縮する代わりに、四宮駅折り返しの区間列車を15分毎に運転するのが良いでしょう。運用本数は6本に収まるので、8本在籍する800系で対応できます。これで、京阪山科―御陵―蹴上・東山間の競争力は十分に確保できます。

 

 

これまで、京津線と東西線の直通列車については、停車駅の重複を避けて三条京阪への所要時間短縮を図るべく、一貫して蹴上と東山を通過する準急にすることを主張してきました。しかし、JRから両駅周辺への観光客輸送に主眼を置くからには、従来通り各駅停車とするのが適切です。

 

ただ、その分だけ折り返し時間が短くなるのは確かです。よって、四宮の駅東側の引上線は使用せず、2番線上で折り返し、駅の西側にある渡り線を使って京阪山科方面へ回送する想定にしています。

 

四宮駅西側の渡り線(2番線に800系車両が停車中)

 

なお、京津線の全線運転の列車は、京都都心方向がその逆よりも所要時間が1分長くなっています。これは、びわ湖浜大津―上栄町間に存在する併用軌道で生じ得る遅れを東西線内に持ち込まないための処置です。ただし、同区間には電車優先信号が完備されており、道路交通量自体もそれほど多くないので、実際に遅延が発生することはほとんどありません。

 

よって、現在は御陵で時間調整していますが、これを京阪山科で行うように変更するのが良いでしょう。JRから京阪に乗り換えて蹴上・東山へ向かうには構内踏切を渡って1番ホームへ移動しなければなりませんが、停車時間が1分プラスされれば遮断機が上がってからでも余裕をもって乗車できるからです。

 

ただ、区間列車の場合はその余裕時間すら確保しにくいのが弱いところです。よって、四宮直通の代わりに京阪山科の駅西側に渡り線を新設し、同駅の2番線上で折り返して蹴上・東山方面へ逆出発させるのが理想です。こうすれば、区間列車に関してはJRとの乗り換え時に構内踏切を渡る必要自体がなくなります。