みなさんこんにちは。前回からの続きです。

3月16日の「北陸新幹線 敦賀〜金沢間開業」と入れ替わり、長年親しまれた在来線特急が姿を消した、敦賀から先の「北陸本線」。


全国的にも稀少な「特急街道」を最後に味わいたいと、大阪発「特急サンダーバード」に乗り、昨年11月に石川・金沢周辺をさまざま日帰り乗り鉄した際の道中記をお送りしています。



ただいま「鶴来駅(つるぎえき、石川県白山市)」。金沢市内から乗り鉄した「北陸鉄道(北鉄)石川線」の終着駅です。



築110年超えという、大正の開業当時から現存している、趣きある貴重な駅舎を観察しているところ。

ところで、この駅のことを調べていましたら、実に興味深い品々が保管されていると知りました。いまは行き止まりの「鶴来駅」がかつて、一大拠点駅だった名残があるというのですが。


これでした。出入り口付近のショーケースの中に、かつて使用されていたという鉄道部品の数々が並べられていました。




これは、ちょっとした博物館ですね。


そんな中、見つけたのが行き先表示板の数々。


平成のはじめ、東急電鉄などからやって来た現在のステンレスカーが登場する以前に、旧型車両に取り付けられていたというもの。出典①。


筆書きでしょうか、字体に味わいがありますね。ただこ「加賀一の宮(かがいちのみや)」は現在、存在しない駅です。


この鶴来からさらに南下、約2km先にあったのがその「加賀一の宮駅(同)」。

「中鶴来」という途中駅が設けられていて、これがかつての「石川線」の終着駅でした。グーグル地図より一部加工。


ではここでも、先日記事でも取り上げたシリーズ書籍「各駅停車全国歴史散歩18 石川県(北國新聞社編・河出書房新社発行 昭和58年10月)」より、拾ってみます。


全国の白山神社の総本社
野町駅から40分、列車は加賀一の宮駅に着く。下車して徒歩5分ほどの位置に森閑としてあるのが白山比咩神社(はくさんひめじんじゃ)だ。

石川県内では気多大社(けたたいしゃ、同羽咋市。能登国一の宮)と並ぶ初詣のメッカで、古式ゆかしい神社でもある。



養老2(718)年、僧・泰澄(たいちょう。682-767、奈良時代の修験僧)が白山山頂に奥の院を開いたのが白山比咩神社のはじまり。
全国各地にある白山神社の総本社で、現在は本宮を一の宮に、奥宮を白山山頂に置いている。

ひめ神の白山比咩大神を祀っており、境内の神門、本殿は端麗そのもの。スギ、ツバキ、アスナロのうっそうとした森に包まれ、眼下には手取川の清流をのぞむ。古くから開けた神域ならではの厳かな雰囲気が漂う。(P166-167)


近年では沿線の開発が進み、金沢市内への通勤、通学需要が高い路線という「石川線」ですが、下車してすぐの古社「白山比咩神社」への参拝客を運ぶという役割もあったのですね。

駅名になっていた「一の宮」は、律令時代で設けられていた国ごとに、その守護のため必ず設けられていた神社の一番宮を指すもの。加賀国ではそれが「白山比咩神社」なのでした。



毎年、大みそかには「野町駅(金沢市)」から初詣のために終夜運転がなされていたほどだそうで、一円から信仰を集めた歴史あるお宮さんだったことが窺えます。駅舎内パネル展示より。


さらに、この「加賀一の宮駅」まで現役だった頃の時刻表からも拾ってみます。「JTB時刻表 2009年3月号(JTBパブリッシング発行)」。



「北陸新幹線」はまだなく「北陸本線」は、タイトルの「特急街道」ただ中の頃。
金沢を境に、西へは「雷鳥・サンダーバード(大阪ゆき)」「しらさぎ(米原・名古屋ゆき)」が、東へは「はくたか(ほくほく線経由、越後湯沢ゆき)」「北越(新潟ゆき)」が発着。

加えて「日本海」や「トワイライトエクスプレス」など、夜行列車もばんばん走っていた「黄金時代」です。金沢にて。



この年、11月に「鶴来〜加賀一の宮間」2.1kmは廃止されてしまいます。


金沢方面から鶴来を越えて「加賀一の宮」へ直通する列車は、1時間あたり1本程度。以外は鶴来発着になっていることがわかります。


参拝客の需要があるとはいえど、特にこの区間は乗客数の著しい減少が要因となり、一部廃止がなされたという報は、よく覚えています。

地方私鉄で終夜運転がなされる例、というのはここ以外にはあまり聞かないものでしたので、気にはなっていたのですが。
結局、わたしは乗れずしまいでした。


さらに、こちらの展示を詳しく拝見してみることにいたします。

次回に続きます。

今日はこんなところです。


(出典①「カラーブックス592 日本の私鉄22 東海・北陸」井上広和・高橋摂共著 保育社発行 昭和58年1月)