肥薩線「上下分離方式で復旧」基本合意 熊本県内のみ、3県境の区間はどうなる?



熊本県とJR九州の2者は4月4日、一部区間が運休中のJR肥薩線について、上下分離方式で復旧させる方向で基本合意したと発表した。

肥薩線の運休中の区間にある第2球磨川橋梁。【画像:ninochan555/写真AC】

4月3日に2者が締結した基本合意書によると、復旧するのは熊本県内の八代~人吉51.8km。熊本県が第3種鉄道事業者として八代~人吉の線路を保有。JR九州は熊本県から線路を借り入れて列車を運行する第2種鉄道事業者になる。

2者は復旧する区間の持続可能性を向上させるため観光・日常利用の両面から需要創出に取り組むほか、復旧・運営のあり方や数値目標の設定・管理などについて協議し、できるだけ具体化するという。

これらの取り組みの実施については「運行再開前に実行されている又は実行できる状態であることを目指す」としており、運行再開と同時に上下分離方式の導入だけでなく、運行再開後に上下分離方式を導入する可能性も示唆している。

2者は今後、基本合意に基づき検討を深度化させ本年度2024年度末に最終合意することを目指す方針だ。

肥薩線は八代~人吉~吉松~隼人の124.2kmを結ぶローカル線。八代~人吉は球磨川沿いを通る。人吉~吉松は熊本・宮崎・鹿児島3県の県境をまたぐ山岳地帯でスイッチバックとループ線がある。鹿児島県内の吉松~隼人は明治期に建造された駅舎が現在も残っていることで知られる。

2020年7月に発生した豪雨の影響で熊本県内の区間を中心に橋梁が流出するなど甚大な被害が発生。現在も八代~人吉~吉松が運休中だ。沿線自治体が鉄道での復旧を求めたのに対し、JR九州はこれまで鉄道の復旧・維持に消極的な態度を取っていた。

豪雨災害後の球磨川第2橋梁(2020年7月)。橋桁が流出している。【画像:JR九州】
橋梁のほかにも土砂が流出するなどの被害が発生している(2020年7月、瀬戸石駅)。【画像:JR九州】

熊本県とJR九州が鉄道復旧で基本合意した区間には3県を通る人吉~吉松が含まれていない。今後、各県の関係者も含めた協議の場が設けられるとみられるが、JR九州の広報部は「現時点で決まったことは何もない」としている。

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