鉄路を残すか否か~只見線報告書を読む~

JR各社/三セク国鉄

鉄道を残すか、バス転換にするか。この判断は地域の在り方を考えるにせよ、全国的なネットワークを考えるにせよ、難問である。拙速な廃線が特に問題となることが多い一方で、本当に残すべきであったかがとり沙汰される場合もある。今回は、上下分離方式で復旧した只見線に関しての監査報告書を読んでみる。

資料:平成 31 年度包括外部監査報告書復興事業に係る事務の執行について
137ページ以下(PDFファイルとしては144ページ以下)
(※包括外部監査は毎年バラバラのテーマが選ばれているようで、これに関わる次年度版などは見当たらなかった。)

支出に至った経緯

JR只見線は平成23年7月豪雨以来、会津川口~只見間で運休していた。これを復旧させるにあたり、福島県が補助金を出したというものである。平成30年度の予算額は6.3億円、決算額は3.9億円である。

復旧に当たっての検討事項も書かれている。平成28年時点でのJR東日本の提案はバス転換と上下分離方式であり、結果的に上下分離が選択されている。復旧費用総額は81億円で、うち1/3がJR東日本、2/3を国と自治体が負担している。上下分離に際して、鉄道施設に関する経費も自治体の負担となった(2009年度実績ベースで、2.1億円。うち70%を県負担)。以上の経緯の中で平成29年8月から平成31年3月までの工事8.9億円のうち3.9億円について県がJR東日本に補助金を交付している。

指摘事項

さて、監査自体に指摘する事項はなかったものの、意見として相当長い文面が載っている(他の報告書では特になしが大半である)。

会津若松方の只見線は生活路線であり、それは観光に適したダイヤ設定(会津若松を午前中8~12時台に出る列車がないこと)からも明らかである。すると、生活路線に54億円もかける必要があったのかという疑問が出てくる。バス代行で十分生活路線としての役割を満たせていたのがその証左である。

同区間を復旧しても運賃収入はJRに入り、経費負担の軽減には繋がらない。また、年間3600人が新規に会津若松~只見間を往復しても1216万円の増収にしかならない。

以上の指摘をして、バス代行が現実的対応であるとし、「只見線が1本に繋がってこそ意味があり、機能を発揮すると考えるのは共同幻想にすぎない。」と強い言葉を使っている。

復旧後のダイヤ

ここからは只見線の復旧後のダイヤを見ておく。2022年10月1日ダイヤ改正(リリース)を見ると、会津川口駅8:15発・15:29発・19:00発、只見7:11発・14:35発・18:00発で、これらの時刻は災害前のダイヤとほとんど変わらない。

臨時列車については、

2022年秋の臨時列車(リリース①東北本部リリース①新潟支社リリース②):
①(会津若松~)会津川口~只見間臨時列車(延長運転)とそれに接続する只見~小出間臨時列車(前者は5日間、後者は3日間設定)
②(会津若松~)会津川口~只見間臨時列車(延長運転)とそれに接続する只見~小出間臨時列車(計7日間設定、①を受け追加設定)

2023年春の臨時列車(リリース):
・会津若松~只見間臨時快速とそれに接続する只見~小出間臨時列車(3月に計4日設定も、落雪の可能性をもって中止
・快速風っこ只見線新緑号(会津若松~只見間)(計7日間設定)
・(会津若松~)会津川口~只見間臨時列車(延長運転)とそれに接続する只見~小出間臨時列車(計7日間設定)
・快速只見線満喫号(会津若松~只見間)と只見~小出間臨時列車(計6日設定)

2023年夏の設定列車(リリース):
・快速風っこ只見線夏休み号/快速只見線満喫号(会津若松~只見間)とそれに接続する只見~小出間臨時列車(計13日設定)

2023年秋の臨時列車(リリース):
・快速風っこ只見線満喫号/快速只見線満喫号(会津若松~只見間)とそれに接続する只見~小出間臨時列車(計18日設定)

2024年春の臨時列車(リリース):
・快速風っこ只見線満喫号/快速只見線満喫号(会津若松~只見間)とそれに接続する只見~小出間臨時列車(計13日設定)

といった具合である。基本的に設定するスジというのも大幅に異なるわけではない。

只見駅構内の変化

只見駅について、棒線化されたという話は記憶に新しい。2023年5月の只見町議会だよりを見ても同様の記載がある。実際、同駅で2線が使われないダイヤになっている

【各臨時列車の設定状況(只見線満喫号に即して記載)】

2023年夏
会津若松10:00→只見12:17/13:35→会津若松15:53
小出11:26→只見12:41/13:27→小出14:40

2023年秋
会津若松10:00→只見12:17/12:48→会津若松15:49
小出9:00→只見10:29/13:27→小出14:40

同駅発着の臨時列車はこれからも設定できるものの、只見駅で定期列車の交換がなされていなかったことからすれば、致し方あるまいとも言えよう。ただ、JR東日本が県から施設を借りている現状でここまで大胆なことをしているということも踏まえておく必要があるといえるだろう。