皆さん,こんばんは。

「還暦の東海道新幹線」・第3回目は,東海道新幹線の仕様について「弾丸列車」と比較しながら述べていきたいと思います。

 

【要点】

区間:東京~新大阪間(515km)

運転方式:交流電化による全線電車運転

最高速度:210km/h

軌間:1435mm

最高勾配:10/1000

車両規格:高さ4.45m 幅3.38m 長さ25m

最小曲線半径:2500m

停車駅(当初):(東京),新横浜,小田原,熱海,静岡,浜松,豊橋,名古屋,岐阜羽島,米原,京都,(新大阪)

所要時間(最速):東京~新大阪4時間(昭和40年から3時間10分)

列車運行本数:片道30本

貨物営業:なし(将来の運行可能性は残す)

 

【「弾丸列車」計画との共通点】

 東海道新幹線と「弾丸列車」計画との共通点は,次の諸点です。

①軌間1435mmであること

②最小曲線半径2500mであること

③最高勾配が10/1000であること

 この規格は「弾丸列車」計画の段階で明らかにされており,当時と東海道新幹線計画のいずれにおいても東海道線の大幅な輸送力増強が必要であったことがわかります。

 「弾丸列車」計画で途中まで建設された「新丹那トンネル」は東海道新幹線の建設においても使われました。

 

【「弾丸列車」計画との相違点】

 東海道新幹線と「弾丸列車」計画との相違点は,次の諸点です。

①最高速度210km/h

②貨物営業なし

③停車駅(新横浜駅を新設,沼津駅を削除,名古屋~京都間に岐阜羽島駅と米原駅を設置,大阪には新たに新大阪駅を設置)

④車両規格が少し小さくなったこと

⑤交流電化による全線電車運転であること

 最高速度は「弾丸列車」のそれより10km/h上回る程度なので大きな差ではないですが,東海道新幹線の建設に当たって「東京~新大阪間を3時間台で結ぶ」という目標があったことを考慮すると,最高速度は少しでも高めに設定しておきたかったのだろうと考えられます。

 貨物営業については「なし」とされましたが,「将来の運行可能性は残す」という留保がありました。これは「世界銀行」(国際復興開発銀行〔IBRD〕)から融資を受ける際に「貨物輸送を行うべきである」ことを指示されたためです。

 停車駅については,新横浜は横浜線との乗換駅,岐阜羽島が東海道新幹線のみ停車の単独駅で,それ以外は東海道線との乗り換えが可能な駅になっています。

 「弾丸列車」計画では軍の強い意向により機関車牽引方式で建設が予定されていましたが,東海道新幹線は交流電化による全線電車運転で建設が決定されました。これは,東海道線で複数回実施された高速度試験の結果を踏まえて決定されました。以下に,試験内容と結果を示します。

 

【試験内容と結果】

 ・昭和23年 モハ52形電車による高速度試験

  試験区間:東海道線 三島~沼津間

  最高速度:119km/h

  速度以外の試験結果:架線の種類は「変形Y型」が効果的 

 ・昭和29年 C62形蒸気機関車による高速度試験

  試験区間:東海道線 木曽川~岐阜間

  最高速度:129km/h

  速度以外の試験結果:95km/hを大きく超える高速化は困難で,高速化のためには橋梁の改良が必要(昭和31年,木曽川橋梁は改良された)。

  ・昭和30年 EH10形電気機関車による高速度試験

  試験区間:東海道線 金谷~浜松間

  最高速度:124km/h

  速度以外の試験結果:レールの継目部,橋脚等の地上設備において,高速走行時の耐久性に問題あり。それらの強化を行わずして高速走行を行うことは困難である。

  ・昭和32年 小田急SE車(3000形)による高速度試験

  試験区間:東海道線 大船~平塚間,函南~沼津間

  最高速度:145km/h

  →線路状態が良好な直線区間では更なる高速化が可能であるが,そうでない区間や旧式の架線方式では高速化は難しい。保守や乗り心地の観点から120km/h程度が限界。

 

〔参照〕

須田寛・福原俊一『東海道新幹線50年の軌跡』(JTBパブリッシング・2014年10月)

『第2回企画展 高速化への挑戦 ~在来線の技術が生んだ夢の超特急~』(「リニア・鉄道館」第2回企画展図録〔東海旅客鉄道株式会社〕・2013年)