皆さん,こんばんは。

本年10月,東海道新幹線は昭和39(1964)年10月の開業から60年の節目を迎えます。これを記念して,当ブログでも東海道新幹線の歴史について記事を書いていきたいと考えております。

 「還暦の東海道新幹線」という題で,開業に至る経緯から現在の運行体制に至るまでを年代順に詳述していく予定です。よろしくお願い致します。

 本日は第1回目の記事ということで,東海道新幹線の母胎となった「弾丸列車」計画について詳述していきます。

 「弾丸列車」計画は,当時の鉄道省に設置された「幹線調査委員会」が昭和14(1939)年11月に出した「東海道及山陽本線ニ於ケル国有鉄道ノ輸送力増強方策ニツイテ」という答申に基づく計画です。この計画を当時の帝国政府や鉄道省では「広軌幹線」,「新幹線」と言っていましたが,新聞社が「弾丸のように早い列車」という意味で「弾丸列車」と表現して記事を書き,「弾丸列車」という名前が広く知られるようになりました。

 答申の概要は,次の通りです。

①複線広軌(1435mm)の別線建設

②別線は客貨高速列車専用線とする

③東京~静岡(大阪)間は直流3000V電化,以西は非電化とし,いずれも機関車牽引列車とする

④別線は東京~下関間とし,工費約5.5億円を見込む

 この答申を受けて,駅,経由地等の諸元が策定され,昭和15(1940)年1月「東京~下関間新幹線増設ニ関スル件」として鉄道会議の議を経て国会に提案され,同年3月に着工予算が可決されました。9月には建設基準が議決されました。

 それでは,「弾丸列車」の主な仕様を確認していきます。

区間:東京~下関間(970km)

運転方式:機関車牽引方式(東京~大阪間〔当初は静岡まで〕は直流電気機関車,その他は蒸気機関車)

最高速度:200km/h

軌間:1435mm

最高勾配:10/1000

車両規格:高さ4.6m 幅3.4m 長さ25m

最小曲線半径:2500m

停車駅:(東京),横浜,小田原,沼津,静岡,浜松,豊橋,名古屋,京都,大阪,神戸,姫路,岡山,尾道,広島,徳山,小郡,(下関)

所要時間(最速):東京~大阪間4時間(東京~下関間9時間)

列車運行本数:片道42本(東京~大阪間)

貨物営業:あり(貨物駅:新鶴見,浜松,名古屋,吹田,岡山,広島,幡生)

貨物列車本数:片道13本(新鶴見発基準)

 

 工事は昭和16(1941)年に着工しました。全区間で用地買収が行われ,新丹那トンネル,日本坂トンネル,新東山トンネルは途中まで工事が実施されましたが,太平洋戦争の戦況悪化に伴い,工事中止。昭和20(1945)年8月の終戦を迎えました。

 

〔参照〕

須田寛・福原俊一『東海道新幹線50年の軌跡』(JTBパブリッシング・2014年10月)