【乗って復興支援】JR各社 北陸応援のフリーきっぷが破格

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北陸新幹線の敦賀駅延伸を目前として沿線が盛り上がる最中、元日に北陸地方を襲った地震で観光需要が落ち込む北陸エリア。

政府の北陸応援割開始に先駆ける格好で、JR東日本・JR西日本から北陸エリア観光を促進するお得なフリーきっぷの発売が公表されました。

七尾線・のと鉄道の復旧も進むが……

2024年1月1日に北陸エリアで発生した地震では、北陸各地で大きな被害が発生しましたが、特に震源に近かった能登半島は被害が甚大なものとなりました。

鉄道においても震源に近いJR西日本 七尾線とその先の三セク路線である“のと鉄道”は影響が大きく、今もなお復旧が進められています。

2月15日からはのと鉄道の七尾駅〜能登中島駅間の運転再開が計画されており、3月16日の北陸新幹線敦賀駅延伸で大阪から和倉温泉へ直通する「サンダーバード」がなくなることが決定していたなかで最後の1ヶ月間は直通再開が叶うこととなります。

一方で、各報道やSNSの投稿では今もなお北陸地方各地に点在する観光地が閑散としている姿も報道されており、特に北陸新幹線金沢延伸で観光客が急増して今日まで賑やかだった金沢市内が閑散としている光景は厳しい現実を突きつけられるものとなっています。

石川県は南北に長く、県の南部である加賀温泉や県境を跨いだ福井県の芦原温泉などの周辺の観光地までもが影響を受けており、観光庁が2月13日に3月からゴールデンウィーク前にかけて「北陸応援割」として宿泊料金を支援することなども公表(外部PDF)されています。

応援割より一足先に!

2月14日には前日の観光庁の公表に続く格好で、JR東日本から「特別企画乗車券・旅行商品を通じた被災地支援について」(外部PDF)として「北陸応援フリーきっぷ」の発売などが、JR西日本から「能登半島地震を踏まえた北陸を応援する取り組みについて」(外部PDF)として従来から設定されていた「北陸おでかけtabiwaパス」の条件緩和と特別価格での発売などの取り組みがそれぞれ公表されています。

JR東日本;「北陸応援フリーきっぷ」

JR東日本が発売する「北陸応援フリーきっぷ」は、富山,石川,福井3県内のJR西日本各線・IRいしかわ鉄道・あいの風とやま鉄道等が4日間乗り放題・首都圏往復の新幹線を含めて20,000円となっています。

「大人の休日倶楽部」会員限定で発売している「北陸フリーきっぷ」に極めて近い内容ですが、誰でも購入が可能な上に割安となっており、フリーエリアの範囲も同一です。

一方で「大人の休日倶楽部」会員限定「北陸フリーきっぷ」と異なる注意点として、往路は「はくたか」と全車指定席の「かがやき」の普通車指定席が利用可能とされているのに対し、復路は「はくたか」自由席のみとされている点です。

JR東日本が発売するフリーきっぷでJR西日本管内で指定列車を逃した場合や指定を受けずに現地で指定を受ける場合……などといった煩雑さを回避する背景が想像されます。

リリースには記載されていませんが、JR東日本のホームページ内に記載されているおトクなきっぷの詳細では、北陸新幹線のグランクラスやグリーン車、周遊エリア内での指定席利用や「サンダーバード」「しらさぎ」「能登かがり火」のグリーン車や指定席を利用する場合は乗車券のみが有効で別途料金券を購入することが可能となる旨も記載されていました。

「北陸応援フリーきっぷ」

・利用期間 2024年2月16日〜3月15日

・発売期間 2024年2月15日〜3月11日 利用開始日前日まで

・価格 おとな20,000円(こども設定なし)

・有効期間 連続する4日間

・購入方法 首都圏の主な駅の指定席券売機

JR西日本;北陸おでかけtabiwaパス拡充

JR西日本では以前より土休日限定で北陸エリア周遊区間ないの普通列車が乗り放題となる「北陸おでかけtabiwaパス」を「tabiwa by WESTER」限定で発売していましたが、これの2月16日から3月15日の利用日では平日にも拡大するほか、2,450円の発売価格を通常時のこども料金と同じ980円の特別価格へ大幅値下げとしています。

さらに従来は乗車日の3日前までの購入が必要だったところを、前日までの発売とより使いやすい設定としています。

特急券を別途購入することで特急列車が利用可能となります。先述のJR東日本発売の「北陸応援フリーきっぷ」利用者層が自由席に多く乗車している(指定席へは差額変更ではなく別途特急券購入が必要である)ことを考えると、どのみち特急券を別途購入の「北陸おでかけtabiwaパス」ユーザーなら指定席特急券の購入が理想的です。

また北陸新幹線が利用対象から外れている点も注意が必要です。

小浜線の利用範囲が青郷駅・東限がえちごトキめき鉄道直江津駅までと東西に利用範囲が広い点が特徴的で、周遊区間の割引率や1日単位で発売されている点など柔軟性はかなり高い印象です。

JR東日本が発売している「キュンパス」やJR各社の「青春18きっぷ」と期間が重複していて親和性も高く、単体での利用以外にも使い方次第では大阪から青森まで在来線だけを乗り継いで旅行するような往年の乗り鉄定番コースなど複雑な旅程に織り込む活用も出来そうで夢が広がります。

「北陸おでかけtabiwaパス」

・利用期間 2024年2月16日〜3月15日

・発売期間 2024年2月15日〜3月14日 利用開始日前日まで

・価格 おとな980円(こども同額)

・有効期間 1日間

・購入方法 「tabiwa by WESTER」限定

このほかの「tabiwa by WESTER」での周遊パス利用でも条件が揃えばポイント還元が受けられます。

JR東海は類似商品を元々通年発売

本日発表があったフリーきっぷはいずれも2月16日から3月15日までのダイヤ改正までの期間限定の設定となっている一方で、JR東海は以前からJR東日本の「北陸応援フリーきっぷ」に類似した「北陸観光フリーきっぷ」を通常時から発売しています(JR東海ホームページ)。

名古屋、浜松、静岡から北陸の往復と北陸エリアの周遊がセットになったきっぷとなっています。

静岡・浜松・名古屋市内いずれの発着についても価格帯としてはJR東日本より安価で、名古屋市内発着で16,230円、浜松発着で18,330円、静岡発着で19,360円となっています。

こども料金がおとなの半額で設定されているため家族での利用なども可能な点が魅力的です。

このフリーきっぷの特徴として、往復で高山本線特急「ひだ」と北陸本線特急「しらさぎ」を1回ずつ使用する制約(往復とも同じ経由での使用は不可能)が付いている点が挙げられます。

JR東海にとっては片道だけでも自社線内の運転区間が長い「ひだ」を活用してほしい……という思惑かと思いますが、旅程上それさえ問題がなければ東海エリアから北陸エリアへの旅行でかなり便利なものとなっています。

筆者はキハ85系・キハ40系時代に高山本線を乗り通していますが、車窓の変化が多くぜひ一度乗り通してほしい魅力ある路線です。

富山直通「ひだ」が少ないことと、通常発売ながら3月16日のダイヤ改正前後を跨ぐ発売はしていないことなど活用難易度が少し高いですが、ダイヤ改正後は値上がりとなる一方で北陸新幹線の新規延伸区間も利用可能となる(外部PDF)など13日に観光庁が公開した「北陸応援割」と併せることで引き続き割安感のある旅行が可能となりそうです。

「北陸観光フリーきっぷ」(改正前)

・利用期間 〜3月15日

・発売期間 〜3月11日 利用開始日前日まで

・価格 名古屋市発着 おとな16,230円 ほか(こども半額)

・有効期間 連続する4日間

・購入方法 始発エリア周辺の主な駅の「きっぷうりば」・指定席券売機

※3月16日以降も条件と金額が変わって販売継続

またこのほかにも名古屋エリア発着のダイヤ改正前であれば「北陸往復割引きっぷ」と先述の「北陸おでかけtabiwaパス」を併用するような使い分けをした方が割安となる場合もありそうです。

各社の微妙な周遊区間の違いと魅力

2月16日からダイヤ改正前日の3月15日まで、上記3種の特別企画乗車券を比較すると下記の通りです。往復の利用条件等は省いて、周遊区間の相違のみを記載しています。

利用期間
金額
北陸新幹線在来線特急小浜線黒部駅〜直江津駅
大糸線 糸魚川〜中土
首都圏発着
「北陸応援フリーきっぷ」
4日間
20,000円
金沢〜黒部宇奈月温泉
自由席⚪︎
その他は乗車券のみ有効
敦賀〜金沢〜和倉温泉
自由席⚪︎
その他は乗車券のみ有効
敦賀〜小浜×
静岡・名古屋発着
「北陸観光フリーきっぷ」
4日間
16,300円
金沢〜黒部宇奈月温泉
自由席⚪︎
その他は乗車券のみ有効
敦賀〜金沢〜和倉温泉
自由席⚪︎
その他は乗車券のみ有効
××
「北陸おでかけtabiwaパス」1日間
980円
×敦賀〜金沢〜和倉温泉
料金券別途購入
敦賀〜青郷⚪︎

今回の特別企画乗車券はいずれも地震で被害を受けた北陸を支援する目的での設定で、経緯を考えると素直に喜べるものではありません。

しかし、新幹線開業直前という鉄道好きな層の多くが足を運ぶことを計画している時期……つまり割引をしなくとも鉄道趣味需要が増えるはずの時期に破格な割引きっぷが各社から発売されることは異例です。

どれを使用してもお得ですし、なによりこの機会を逃したら三セク移管前の北陸本線の姿を見ることは出来ませんので、このチャンスはぜひ活用したいところです。

上記3種のフリーきっぷは概ね同等のフリー区間を有しますが、発売方法や経路などそれぞれに長所・短所があるため、それぞれのきっぷの長所を活かした旅程作りのセンスが問われそうです。

最近SNS上では氷見の寒ブリが破格で食べられる旨や、金沢の超人気回転寿司店が並ばずに入れる旨の投稿をよく見かけます。

その路線の沿線がどのような歴史・食文化とともに発展してきたのかを体感することは、鉄道趣味自体をより楽しくより豊かにすることに繋がりますので、より多くの鉄道ファン層にさまざまな旅館・ホテルに宿泊し、有名どころから知る人ぞ知るグルメまで様々な食文化を楽しんでほしいと感じます。

筆者もさっそく時刻表を引っ張り出して北陸へ足を運ぶ計画を練ってみます。

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