2024年1月29日(月)
本日は東京駅へとやってきました。これより、千葉方面へ向かいたいと思います。
東京駅から千葉駅へと向かう際、おそらくほとんどの方がまず思いつく方法は総武線快速でしょう。途中停車駅は新日本橋、馬喰町、錦糸町、新小岩、市川、船橋、津田沼、稲毛のみで、特に錦糸町より先の複々線区間での各駅停車との並走は見応えがあるものです。
東京~千葉駅間は約40キロ、総武線快速での所要時間は40~45分程度です。普通車でもさほど苦ではありませんが「せっかくならグリーン車で快適に移動したい…!」と思うことはありますよね。
しかしそこはグリーン車、決して安くはありません。東京~千葉駅間のグリーン料金は、事前に購入した場合であってもホリデー580円、平日780円となっています。飛び乗りで車内購入するとそこに260円加算された金額となり、平日では何と1,000円を超えてしまうのです。
そこでオススメしたいのが、普通列車ではなく特急しおさい号です。東京~銚子駅間を結ぶ特急列車で、途中に千葉駅も通ります。9両編成のうち銚子寄り6~9号車は自由席となっており、こちらの利用が特にオススメです。
特急しおさい号に使用されている車両は、JR東日本の255系と呼ばれる特急電車です。「房総ビューエクスプレス」の愛称のもと1993年に運行開始し、昨年デビュー30周年を迎えました。現在首都圏で活躍するJRの特急車両としては最古参の部類です。
しかし何事も「始まりがあれば終わりもある」というもので、何とこの「しおさい号」を含む房総方面の特急列車からは2024年3月15日をもって自由席が廃止され、全車指定席となります。これに合わせ255系は定期運用を終了する予定となっており、本記事でご紹介している方法が実行できるのも実はあと1ヵ月ほどというわけです。
2024/2/11追記:当初JR東日本千葉支社より、255系は2024年3月16日以降〔わかしお〕〔さざなみ〕〔しおさい〕のいずれの定期運用にも入らない旨が発表されていましたが、これを変更し一部の〔わかしお〕〔さざなみ〕にて2024年6月頃まで定期運用に入る方向で調整が進められている模様です。ただし、自由席は予定通り2024年3月15日を最後に廃止されます。
停車駅は総武線快速よりもさらに少なく、千葉までは途中錦糸町に停車するのみ。これは快速以上の時間短縮が見込めそうです。なお、東京駅地下総武ホームにおいて総武線快速は3・4番線からの発車が多いですが、特急しおさい号は2番線からの発車となりますので注意が必要です。
自由席特急券は改札外の自動券売機・みどりの窓口のほか、ホーム上でも発売されています。
10年ほど前から、首都圏では特急列車の全車指定席化が着々と進められています。2014年にデビューした高崎線特急〔スワローあかぎ〕を皮切りに、2015年には常磐線特急、2019年には中央線特急、2021年には東海道線特急、2023年には高崎線の全ての特急でそれぞれ自由席が廃止。”最後の砦”となっていた房総方面の特急が今回のダイヤ改正にて自由席廃止となるのに伴い、首都圏のJR特急からは遂に「自由席」が完全に廃止されることとなります。
6~9号車の自由席のうち、今回は一番先頭の9号車を利用したいと思います。特急しおさい号は大半の列車がE259系へ置き換えられる(一部はE257系)予定につき、6両編成での運行となるため7~9号車への乗車体験も貴重なものとなります。
自由席の座席はご覧の通りのデザインです。JR東日本初期らしくクッション性のある座面と背もたれで、落ち着いた色合いです。
洗面所や化粧室のデザインも、最近の車両とは一線を画す古めかしいデザインです。新しくはありませんが、清潔に保たれています。
10時11分、列車は定刻通りに東京駅を発車。自由席では、車掌さんによる検札が行われます。近年では人件費削減、ならびに新型コロナウイルス感染症流行に伴う接触リスクを考慮して全国的に特急券の検札が減少する傾向にあり、今や希少な光景となりました。しおさい号の場合も指定席であれば所定の座席への着席を車掌さんが端末で確認するのみですが、自由席の場合は列車・座席の指定がされていないため乗客一人ひとりに声をかけて検札をする必要があります。なお自由席の場合は事前に特急券を購入せず飛び乗ることも公式に可能とされており、その場合はこのタイミングで車内精算となります。普通列車グリーン車と異なり、自由席の車内精算は事前料金と差がありません。この車内精算も、車掌さんの業務を圧迫する要因の一つとされてきました。
さて、肝心の料金ですが…東京~千葉駅間の自由席特急料金はわずか520円。普通列車グリーン車の最も安い場合(休日・50キロまで・事前購入)での同区間と比べても60円安く、特に本日は平日ですから普通列車グリーン車よりも260円安いことになります。
直近10年ほどで全車指定席化が進んだ首都圏の特急列車の多くは、A特急料金でもB特急料金でもない「新たな料金体系」の特急料金が適用されています。今後10年、20年と経った時にこの特急券を見返して「”B”って何のことだ…?」となる人は少なくないでしょう。
「自由席廃止」と聞くと単なる値上げのように思われがちですが、新たに設定される特急料金は従来の指定席特急料金よりも安くなっています(特急草津・四万を除く)。つまり指定席を利用する限りにおいては値下げになり、かつ予約可能な座席数も増えるというわけでメリットづくしなのです。
今回の私のような自由席利用者にとっては、気軽にふらっと乗ることが難しくなり、かつ値上げであることは事実です。しかし「新たな特急料金」から100円値引きされたチケットレス特急券がえきねっとにて発売される予定で、例えば50キロまでの区間ならチケットレスにて660円にて購入することができます。
しかも2024年6月末までのキャンペーン価格で、このチケットレス特急券がさらにもう100円引きされる予定となっており、こうなると50キロまでは560円。もはやこれまでの自由席特急料金とほとんど変わらない金額で、指定席に乗ることができるようになる期間もあるとは驚きです。
あれやこれやと制度やら料金やらの話をしているうちに、列車は新日本橋・馬喰町をあっという間に通過。なお私の乗る9号車は乗客数名程度でガラガラです。平日のこの時間帯であり、かつ編成の端ですから階段から遠いというのもあるでしょう。
東京駅を出て間もないですが、列車は錦糸町駅に停車。ここからの乗車も少なくありません。
錦糸町駅は新宿方面からやってくる中央・総武線各駅停車との接続駅。すなわち新宿方面からの利用の場合は、東京駅から乗車するよりもこの方が便利だったりします。しおさい号はかつて新宿駅を発着する列車もありましたが、2015年のダイヤ改正で全て東京駅発着となりました。
他にも錦糸町といえば東京メトロ半蔵門線も通ります。渋谷方面・押上方面のみならず、直通運転を活かして東急田園都市線や東武スカイツリーライン方面からの利用の場合もこの錦糸町乗り換えは便利でしょう。
255系は、近頃の特急車両と比べると座席周りの構造も大きく異なっています。自由席ですが、何と足元にフットレストがあるのです。まあ個別の装置ではなく横に長いパイプが渡してあるのみなのでレストできるかと言われると微妙ですが、短足の私にちょうど良い位置でした。
逆に、画像を見ていただけるとお分かりの通り普通車には背面テーブルがありません。元々ビジネス利用よりも観光・行楽客を輸送する目的で設計されているため、大人数で座席を回転して利用することを想定したという面もあるものと思われます。
また床は海水浴客等の乗車も想定して掃除しやすいような特殊な加工がなされており、この点は時代背景というより列車の利用特性に合わせた「他にはない特徴」と言えます。
快速線と緩行線(各駅停車)、いずれも「総武線」ではあるのですが、路線別複々線となっているため事実上完全に別路線のような立ち位置です。横浜方面における「東海道線と京浜東北線」の関係に近いです。
そして今しか味わえない光景がもう一つ。何としおさい号はほとんどの場合、船橋駅を通過します。
厳密には土休日の上下1往復のみが停車するのですが、土休日のそれ以外の列車と平日の全列車が通過。千葉県内では県庁所在地の千葉市に次いで2番目の人口を誇り、土休日に運行される臨時特急〔新宿わかしお〕〔新宿さざなみ〕や、1往復のみ設定される千葉発着の特急〔あずさ〕〔富士回遊〕は停車するのに、しおさい号だけは通過です。
しかし、今度のダイヤ改正からはしおさい号も全列車が船橋駅に停車するようになります。これにより、成田エクスプレスを除く原則全ての列車が船橋駅に停車するようになります。
幕張本郷付近では、JRの線路4本に加え京成千葉線の線路もぴったり横について並走する区間があります。千葉方面へと向かう線路がずらり6本も並ぶ光景は圧巻です。
しおさい号は錦糸町~千葉駅間ノンストップですから、同じ快速線を走る総武線快速の列車と比べ表定速度は速くなります。列車本数の多い区間ですが、しっかりと特急が特急らしい走りをしてくれるのも鉄道ファンとしては嬉しいポイントです。
10時39分、列車は千葉駅に到着。東京駅からわずか28分での到着、これは快速列車よりもさらに10~15分ほど早いことになります。
列車はこの先佐倉・成東方面へ、引き続き総武本線を進みます。向かう先は千葉県最東端の街・銚子です。千葉県内のJR特急は全土において高速バスとの競争が激しく、近年ではJRが押され気味ではありますが、E259系となっても引き続き渋滞のない快適な移動手段として末永く存続することを願っています。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。