JR北海道は昨年12月15日、今年3月に実施するダイヤ改正の概要を発表しました。今回はこれについて分析します。

https://www.jrhokkaido.co.jp/CM/Info/press/pdf/20231215_KO_kaisei.pdf

 

※記事中の図は、JR北海道プレスリリースから引用しています。

 

1.千歳線 運行体系変更

(1)札幌~新千歳空港を結ぶ快速「エアポート」は、日中時間帯に毎時5本から6本に増発となります。併せて、北広島~新千歳空港間は各駅に停車する「区間快速」が新設されます。現行では快速が毎時5本の運転となっていますが、改正後は特快1本、快速3本、区間快速2本となります。普通列車は札幌方面~北広島間で毎時2本、千歳~苫小牧方面で毎時1本設定され、北広島~千歳間は日中時間帯は普通列車が運転されず、区間快速が毎時2本停車します。

 プレスリリースと現行ダイヤをもとに、改正前後のダイヤを比較してみましょう。(特急列車は省略)

 区間快速・快速・特別快速いずれも、後続列車に追い抜かされることなく終着駅へ先着します。日中時間帯の普通列車は毎時2~3本程度ですが、運転間隔が15~60分と不均等なダイヤになっています。改正後は概ね30分間隔となるため、快速通過駅に停車する列車の運転間隔が調整されているのはプラス点だと思います。

 先行列車の関係か、新千歳空港行き特別快速が快速と同等の所要時間となっていますが、特急列車や貨物列車も多く走っているため、その点は致し方ないと思います。

 

(2)新千歳空港19:54発の快速エアポートは、19:51発に変更となり、特別快速に格上げされて所要時間が短縮します。また、新千歳空港23:21発の特別快速エアポートが新設され、新千歳空港からの最終列車が28分繰り下げられます。航空需要が戻り、夜間帯の空港利用者や航空関係者の利用も戻っていることを踏まえた措置とみられます。

 新設される特別快速エアポート195号は手稲行きですが、札幌~手稲は各駅に停車します。札幌~手稲間は、現行ダイヤの普通手稲行き(千歳23:11発、1823M)と同じ時刻となっているため、改正後の1823M普通列車は札幌止まりとなるか、廃止されるとみられます。

 

2.函館本線 札幌~小樽

(1)桑園駅に快速・特別快速が新たに停車し、全列車が停車します。これにより、札沼線と函館本線手稲・小樽方面への往来が便利になります。

(2)日中時間帯の快速「エアポート」は、快速と特別快速が1本ずつ小樽へ直通するようになります。併せて、日中の快速については、手稲~小樽間は各駅に停車します。また、札幌~小樽間で普通列車が毎時1往復減便となります。

 改正前後のダイヤを比較してみましょう。

 

 

 快速エアポートは、新千歳空港へのアクセスだけでなく、札幌~小樽間の速達輸送も担っているのですが、札幌~小樽を快速運転する列車は、日中は毎時1本(特別快速)のみになるため、利便性が低下する感は否めず、苦しい減便といえます。

 桑園駅に快速や特別快速が停車することについても、札沼線ー函館本線の乗り継ぎを便利にする狙いもあるとは思いますが、減便を補填するための停車という意味合いもあると思われます。

 

(3)1日1往復運行されている快速「ニセコライナー」については、手稲~小樽間各駅停車となります。これにより、通過駅は稲積公園・発寒・発寒中央の3駅のみとなります。これに伴い、前後の普通列車も減便や運行区間が短縮される可能性があります。

 

 快速「ニセコライナー」は、倶知安・余市~札幌をつなぐ唯一の直通快速列車ですが、小樽駅で長時間停車するなど、長距離快速列車の機能を果たしているとは言い難い一面もあります。今回の改正で快速運転が大幅縮小されますが、次の改正以降も存続するのか、去就が注目されます。

 

3.函館本線 札幌~旭川

(1)日中時間帯の札幌~江別間の普通列車の運行本数が、毎時4本から毎時3本へ減便となります。

 

(2)函館本線(岩見沢~旭川)に737系電車が投入され、721系や普通気動車を置き換えるとともに、岩見沢~滝川間でワンマン運転が実施されます。また、岩見沢~旭川間では、電気式気動車H100形も運行されます。

 車両の置き換えにより、最大14分速達化されます。また、滝川~深川・旭川間で夕夜間に上下1本ずつ増発されます。

 

 なお、日中時間帯は一部運行を取りやめることとなっていますが、対象列車は不明です。

 

4.石北本線・釧網本線

 石北本線と釧網本線に、電気式気動車H100形が追加投入され、既存のキハ40系、キハ54系を全て置き換えます。

(1)石北本線では最大9分の速達化が図られるとともに、特別快速「きたみ」は1両から2両に増車となります。

(2)釧網本線の「しれとこ摩周号」において景観の良い区間で徐行運転を行います。しれとこ摩周号は日中時間帯に設定されているため、観光客利用を重視した設定にするものとみられます。

(3)釧網本線において、早朝と夜間の一部列車が減便となります。対象列車は不明ですが、網走~知床斜里、釧路~摩周間を走る区間列車のいずれかと思われます。

 

5.根室本線 滝川~富良野~東鹿越

(1)根室本線の滝川~富良野~東鹿越間について、現行ダイヤでは滝川~東鹿越間を通して走る列車が設定されていますが、改正後は富良野で運行系統が分割され、滝川~富良野・富良野~東鹿越間での運転となります。

 なお、富良野~東鹿越間については、ダイヤ改正から半月後の3月31日の運行を最後に、廃止される予定です。この運行体系の変更は、廃止後を見据えた動きとみられます。

 

(2)廃止となる富良野~東鹿越間については、惜別乗車をする乗客が見込まれることから、日中に1往復増発されます。廃止が決まったから乗客が増える、増発されるというのも悲しい話ですが…

(3)快速列車上下3本は全て普通列車となります。通過駅も少ないので、普通列車化するのが妥当と思われます。

(4)滝川~富良野間については、日中時間帯に増発され、夜間帯に減便されます。いずれも対象列車は不明です。

 

6.駅廃止

 以下の5つの駅が廃止となります。

石勝線:滝ノ上駅(夕張市) 宗谷本線:初野駅・恩根内駅(いずれも美深町) 石北本線:愛山駅(愛別町) 函館本線:中ノ沢駅(長万部町)

 

 宗谷本線では、美深町内で2駅が一挙廃止となるため、美深~手塩川温泉間が23.2km駅なしという状態になります。JR北海道では駅の廃止が進められており、近い将来、「特急列車のみが走行する区間」が増える可能性があります。

 

7.まとめ

 いかがでしたでしょうか。航空需要の回復により、新千歳空港発着の列車が増発されるのは非常に良い点ではありますが、その分札幌近郊での減便が目立つ内容となっています。

 通勤通学時間帯は一定の利用があるものの、日中時間帯の利用が思うように伸びていないことが考えられます。もしくは、乗客はいても列車を運行する余裕がないという可能性もあります。

 千歳線は運行体系が刷新され、快速通過駅への停車列車の運転間隔を均等化する動きもみられました。限られた本数で利便性を底上げする動きも確かにあります。今後、この改正の動きがどれだけ利用増加に貢献できるか、注目です。