当模型鉄道の飯田線電車たち(番外編:この車輛も欲しい) | 書斎の汽車・電車

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 当模型鉄道におけるカトー・飯田線シリーズについてご紹介してきました。

 このシリーズも、昨年の流電(広窓)で「幕」となりました。大変残念ではありますが、様々な事情を勘案すれば致し方ないということでしょう。

 

 とはいえ、飯田線にはまだまだ模型化してほしい魅力的な電車がたくさんあります。可能性は限りなく低いでしょうが、カトーがシリーズを再開するか、他メーカーが完成品やキットを出すこともあるかも知れません。まあ、それは望み薄としても、「こんな電車も製品化してほしい」という小生の希望を記しておくことにしましょう。恐らくは亀にも負ける歩みとなりましょうが、今後の当鉄道における飯田線車輌増備計画の一端を示すことにもなります。

 

 車輌の選定ですが、飯田線旧型国電の第一次淘汰が始まる直前の、昭和53(1978)年3月末の「配置表」を参考に、まずは旅客車について、車輛基地ごとに記します。

 

 ① 伊那松島機関区

 最初は、一番北側に位置する伊那松島の所属車です。ここでは、意外なことにカトーから出ていない「クモハ43」を取り上げます。この形式から派生した形式については、製品化されており、特にクモハ53000などは、クモハ43そのものなのですが、オリジナルのクモハ43形は、なぜか製品化されずに終わりました。

 クモハ53000です。クモハ43とはほとんど変わらないのですが。

 伊那松島には、4輛のクモハ43形が在籍していました。第一次置換でも生き残った43015や、前照灯の取付がオリジナルのままの43013など、模型で見てみたかったです。クモハ43といえばGMの板キットならありますが、さて私の腕ではどんな模型になりますか?

 

 伊那松島在籍の制御車といえば、珍車といえるクハ47011があります。身延線で事故焼失したモハ30形の台枠を流用、延長して、切妻の20m車体を載せた車輛です。前面は63形のような切妻で、2扉のクロスシート車です。

 伊那松島のクハといえばもう1輛、クハ68013が挙げられます。クロハ59形の改造車で、窓配置にクロハ時代の面影を残しています。

 

 ② 中部天竜機関支区

 中部天竜は、「支区」というだけあって、所属車輛は救援車を含めても11輛という小所帯です。実は、カトーの飯田線シリーズでも、ここの所属車はとうとう製品化されませんでした。

 カトーが出した飯田線旧型国電用車輛ケースに付属するステッカーには、中部天竜を示す「静チウ」も含まれていたのですが。

 

 メーカーとしても、中部天竜所属車の模型化計画は進めていたようです。『RM MODELS』誌2023年8月号に載った「関良太郎かく語りき」によれば、「原型に近いクモハ51とクロハ59、クハ55から改造した平妻クハ68の編成。クハは水タンクを床下ではなく天井裏に装備した403あたりも含め、2両編成×2セットで4両とする企画でした」とあります。

 

 中部天竜のクモハ51形といえば5輛。前面窓のHゴムが左右で異なる51021のほか、関東系の51015、51019、偶数向の51044、51046いずれも魅力的で、果たしてどの車が製品化される予定だったのでしょうか。

 一方のクハ68形は、すでに68403(クロハ59改造車)は明記されていますが、クハ55改造車といえば68407あたりでしょうか。いずれにしても、この4輛が製品化されなかったのは残念でなりません。

 

 中部天竜所属車といえば、もう1輛忘れてはならないのがクハ47151です。流電一次車の中間車サロハ46018に運転台を取り付けた車輛で、食パン顔の前面が特徴的です。

 同じく「食パン顔」のクハ47153ですが、47151は側面が狭窓、前面もHゴム支持でした。

 

 ③ 豊橋機関区

 中部天竜とは逆に、豊橋の車輛はあらかた製品化されてるんじゃないかと思いましたが、まだまだ残っていました。

 クモハ54形といえば、飯田線の主力ともいえる存在ですが、0番代のうち、シル・ヘッダーが復活した54006以降は製品に恵まれていません。その中でも54007は、かつて仙石線に所属していたということで、押込式ベンチレーターを備えた車輛でした。この電車、変わっているのは屋根上だけではありませんで、前面に貫通幌と小型のサボ受けもあるという、飯田線では珍車の部類に入る存在でした。模型化するのであれば、ペアを組むことが多かったとされるクハ47114との2輛セットでお願いしたいものです。また、アブノーマルな車輛ばかりではなく、54006、54008、54009(この車輛は伊那松島ですが)といったノーマル(?)な車輛も欲しくなります。

 

 豊橋といえばもう1輛、サハ87001も忘れてはいけません。80系の一員ながらスカ色に塗られ、流電編成に組み込まれた車輛です。もし、カトーが流電を再生産する機会があるなら、ぜひ中間車に選んでいただきたいものです。

 

 ④ 事業用車など

 荷物電車は、クモニ13、クモニ83とも製品があります。あとはクモニ83の動力化を希望する方がどれだけいるかというところでしょう。

 その他の事業用車となると、さすがにカトー等のメーカーがプラ製完成品を出すことはなかろうと思っていましたが、前述の「関良太郎かく語りき」によれば、クモル23050だけは製品化の可能性があったそうです。ただ、動力ユニットの問題から、残念ながら実現はしませんでした。なお、この「クモル」は形式だけ見れば配給車ですが、実際には牽引車として使われていたようです。

 牽引車といえば、クモヤ22201はクモニ13そのもの(塗装がぶどう色2号になっただけ)ですので、その気になればカトーから出せそうですが、やはり需要がありませんかね。クモヤ22112と22113は30系からの改造車で、112はJR発足後に旅客車に返り咲いています。かなり初期のJNMAで、GMのクモハ12と組み合わせてこの電車を再現するための前面パーツを買ったのですが、長年棚の肥やしになっています。

 クモヤ22112改めクモハ12041です。(リニア・鉄道館にて)

 

 この牽引車たちを再現するなら、GMのカスタムキット「クモニ13、クモハ12 2輛セット」でしょう。

 クモニ13をストレートに組めばクモヤ22201が出来ますし、前面の問題をクリアできればクモヤ22112・113も容易に再現できます。それどころか、あのクモル23050ですら、このキットから作ることができるというのですから、正に「作る楽しみいっぱい」です。(クモルの動力問題も、手元にワールド工芸のプラシリーズ、クモヤ22000が手付かずで残っているなら何とかなりそうです)

 GMのキット、発売以来40年以上経ちますが今なお現役です。

 クモル23050制作のためのガイド、恐らくは小林信夫氏によるイラストです。

 

 飯田線事業用車というと、各車輛基地ごとに救援車も配備されていました。カトーの関氏は、さすがに救援車までは作る気がないと記しておられましたが、実は飯田線の救援車は実に個性的でして、模型化したくなる存在です。

 山間部を走る飯田線は落石などの災害も多く、救援車の存在意義もあったのですが、山間部の狭隘な場所でも作業が可能なよう、3.4位側前面に大きな扉を備えていたのが特徴でした。豊橋にクエ28100、伊那松島にはクモエ21009がいまして、特にクエ28100の、ヘッドライト3個に観音開きの大扉という前面は迫力十分です。

 中部天竜の救援車はさらに過激です。サエ9320がそれで、元は伊那電気鉄道のサロハユニフ101という買収車でした。しかもこの車輛、国電最後の木造車としても知られていました。これら3輛の救援車も、キットなどが出たら迷わず購入してしまいそうです。

 

 以上、長々と記して参りましたが、飯田線電車、まだまだ欲しい車輛がたくさんあることがわかります。ただ、キット等で再現するとなると、私の腕では、カトー製品のクオリティとの「差」がやはり問題になりそうです。

 今回お世話になった『増補版 写真で綴る飯田線の旧型国電』(宮下洋一著 ネコ・パブリッシング)です。以前にも記しましたが、飯田線旧国の最良の参考書です。