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エトセトラ

2023.12.31

2023年がまもなく終わろうとしている。というわけで、「2023年 四直界隈10大ニュース」と題してこの1年に都営浅草線を筆頭とした京成線、京急線、北総線のいわゆる四直界隈で起こったできごとを、当Webサイトで扱いきれなかったものも含めてまとめてみた。なお、10大ニュースの選定については筆者の趣味や嗜好、独断、偏見に満ち溢れているが、異論はいっさい受け付けませんっ(ぉ

都営5300形が引退(2月)

5500形の導入により2018年度より廃車が行われてきた5300形。5500形の導入完了後も列車無線のデジタル化に伴う予備車として走っていた5320編成が、2月23日、営業運転を終了した。これにより、5300形は全編成が運用を終了し、引退となった。

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都営5300形 5320編成
2013.7.3/大森海岸

▲5500形の導入完了後も孤軍奮闘していた5300形5320編成。同編成の運用終了により、5300形は終焉を迎えた

最後は実に静かな終わり方であった。引退に際しては記念柄の都営まるごときっぷ(都営交通1日乗車券)が発売されただけにとどまり、過去に5000形と5200形が盛大なさよなら運転で引退の花道を飾ったのとは対照的であった。通勤型車両は静かに引退すべきとする意見もあるが、やはり長年の労をねぎらって何かあってもいいんじゃないかと思うところである。

デジタル方式の列車無線の整備完了(4月)

4月22日、四直各社局で長らく整備が進められてきた列車無線のデジタル化(デジタルSR無線への移行)が完了した。これまで自社局の車両や対応している車両のみなど段階的な移行が行われていたが、同日より全ての列車でデジタル無線を使用するようになった。

一方、不要となったIR無線関連の設備の撤去が始まっている。無線完全移行後の新造車両についてはSR無線のみの搭載となっているほか、既存の車両についてもIR無線を撤去した車両が出現し始めている。先頭車両の屋根上に載るIRアンテナは四直を走る車両の大きな特徴だっただけに、消えゆくものになるのはちょっと寂しい。

馬込車両検修場内で脱線事故(6月)

6月5日、都営浅草線の馬込車両検修場内で脱線事故が発生した。事故の当該は1665T普通印旛日本医大行で出庫予定だった5500形5507編成で、駅に向かって入換を行っていたところ、8両編成のうち3両(5〜7号車)が車庫の出入口付近で脱線した。この事故により同検修場への出入庫が一時的にできなくなっため、ダイヤ乱れが発生。3000形6両編成が都営車担当の北総特急を代走するなどの混乱が見られた。

事故後、しばらく動きがなかった5507編成だが、12月12日の深夜(13日未明)11日の深夜(12日未明)に一部の車両が製造元の総合車両製作所に陸送されたようである。昨今は脱線して損傷するとすぐに廃車になってしまう事例が見受けられるが、ぜひとも復活してほしいところだ。

京成3050形、成田スカイアクセス線での運用終了(6月)
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京成3050形 3056編成
2021.2.24/新馬場

▲京成3050形の2代目カラーとなるオレンジ色の新アクセス色。3157編成の導入に伴う3056編成の京成本線転用により消滅した

京成では今年度も3100形を1編成導入した。3157編成が6月18日より営業運転を開始したところである。これに伴い、成田スカイアクセス線仕様の3050形で最後の1編成となっていた3056編成が京成本線に転用。これをもって2010年7月の開業から成田スカイアクセス線で使用されてきた3050形が同線から運用撤退した。

3056編成が京成カラーとなったことで、アクセス色の3050形も消滅。特に、オレンジ色の新アクセス色は約4年という短命に終わることとなった。京成では京成本線と成田スカイアクセス線で車両運用を区別しているため、今後、3050形が成田スカイアクセス線を走る機会は代走という場面に限られることになる。

京急1000形1500番台・1700番台が登場(9月・12月)
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京急1000形 1501編成
2023.10.10/京急鶴見

▲2001年度より現在も導入が続いている京急1000形。2023年度に導入した22次車は仕様が一新され、1500番台(6両編成)・1700番台(8両編成)が新たに登場した

2001年度より導入が続けられている京急1000形にまたまた新仕様となる車両が登場した。京急は2023年度に導入した1000形22次車14両について、既存の1000形より大きな仕様変更を実施。6両編成を1500番台、8両編成を1700番台として導入した。各番台のトップナンバーとなる1501編成が9月7日に、1701編成が12月29日にそれぞれデビューを飾っている。

1500番台・1700番台の、既存の1000形との違いは、まずはやはりその見た目。1890番台「Le Ciel」と同様に表面がフラットな車体となり、前面も急行灯・尾灯の形状が変更されて表情が変わった。床下機器も一新。6両編成と8両編成ともユニット方式を捨てた上で、6両編成は4M2Tに8両編成は4M4Tの編成となった。もはや事実上の新型車両と言ってよいほどだ。

京急は今後しばらくはこの仕様の1000形を導入していくことと思われる。新たな世代の1000形の今後の活躍に期待したい。

京急線、運賃改定を実施(10月)

10月1日、京急は全線において運賃改定を実施した。同線における運賃改定は、消費税率の引き上げに伴うものを除けば約28年ぶりのこと。京急は運賃改定を実施することについて、「新型コロナウイルス感染症の影響で利用者が減少している中で安全・安心な輸送サービスを持続可能にするため」と説明している。

新しい運賃は遠距離の利用において有利になるように設定されているのが特徴で、全体としては10.8%の値上げ率ながら、例えば普通運賃で品川〜上大岡が30円の値上げとなっているのに対し、京急久里浜までの利用では逆に90円値下げとなっている。横浜でJRに乗り換えるよりも、品川まで京急に乗り続けた方がお得になるところがミソだ。

さらに、ICカード乗車券利用時に限り全線均一75円となる小児運賃を実施。子育て世代にやさしい運賃を導入することで、若い世代の流入を促している。

京成電鉄、新京成電鉄の吸収合併を発表(10月)

今年も残り2ヶ月になろうかというところで驚きのニュースが飛び込んできた。10月31日、京成電鉄は2025年4月に新京成電鉄を吸収合併することを発表。京成は2022年9月にも新京成を完全子会社化していたところであったが、それをさらに一歩押し進める格好である。京成は新京成を合併することについて、経営の効率化や意思決定の迅速化などのシナジー効果をその理由に挙げている。

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新京成8800形 8807編成
2022.11.18/三咲〜滝不動

▲京成との合併が発表された新京成。新京成には京成とは一線を画す仕様の車両が在籍しているが、これらはどうなる?!

気になるのはやはり新京成の処遇だ。合併により会社は消えてしまうことになるが、長い時間をかけて育ててきた新京成というブランドはかけがえのない財産である。独自仕様が多く盛り込まれている車両もジェントルピンクのコーポレートカラーも、いずれは京成カラーに染まってしまうのか。まだ合併したわけではないが、今後の動きが今から楽しみである。

京急線で急行復活、さようならエアポート急行(11月)

11月25日、今年も四直各線でダイヤ改正(京成のみダイヤ修正)が実施された。この中で最も大きな話題となったのは、京急線における急行の復活であろう。羽田空港に行かないエアポート急行に飛行機マークが付いていることの分かりにくさから種別名称のみを変更した格好で、京急で急行が走るのは約13年ぶりのこと。京急蒲田以南では実に24年ぶりのこととなっている。京急は昨年のダイヤ改正での日中時間帯の特急復活などでなんとなく1990年代のダイヤの再来を感じさせていたが、まさか急行まで復活するとは思わないわけである。

一方、エアポート急行は運転を終了することとなった。エアポート急行は京急蒲田付近の上り線高架化に伴う2010年5月ダイヤ改正で登場し、約13年半にわたり京急独自の種別として走り続けた。エアポート急行の種別消滅に際しては、ダイヤ改正直前に1500形を使用した「さようならエアポート急行」列車が運転され、有終の美を飾った。

京急線でタブレット端末を活用した自動放送始まる(11月)

京急線における11月ダイヤ改正での大きな変化は、急行復活だけではない。列車内のアナウンスで自動放送が開始されたことも挙げられよう。京成と同じくタブレット端末を活用したもので、乗務員が専用アプリを操作して案内の音声を車内に流す方式で実施。京急ではこれまで乗務員が自らの声で案内を行うことを是としていたが、やはり時代の流れには逆らえずに大きく舵を切ることになった。

自動放送は日本語を中矢由紀、英語をウェグミュラーあけみがそれぞれ担当している模様で、どちらかと言えば関西の事業者で馴染みのある声を聞くことができるのが特徴。2ドア特急車の存在やかつてのルトランカードなど、どういうわけか京急に息づいている関西ノリ(?)が自動放送にも現れている。

京急1500形鋼製車&界磁チョッパ車の終焉(3月・12月)
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京急1500形 1501編成
2023.1.28/港 町

▲1000形の導入などで廃車が進んでいる1500形。今年は鋼製車と界磁チョッパ車という特徴的な車両が姿を消すこととなった。京急は旅客車について全車両のVVVFインバーター化を達成した

2021年度より廃車が始まった京急1500形。翌2022年度においても廃車が進行し、年度末となる2023年3月に1501編成と1517編成が営業運転を終了した。さらに、2023年度に入って1000形22次車の導入により、1521編成と1525編成、1561編成も運用を離脱。1500形は今年1年で22両が姿を消した。

1501編成と1517編成の引退により、1500形の中でも鋼製車と呼ばれる初期グループが、1521編成と1571編成の引退により界磁チョッパ車がそれぞれ消滅した。これにより、京急は事業用を除く旅客用車両の100%VVVFインバーター化を達成している。1500形は1500番台6両編成と1700番台8両編成の2車種が絞られることとなったが、今後もしばらくは1500形の置き換えが続くものと思われる。

◆ ◆ ◆

以上、2023年を振り返ってみた。やたらと盛りだくさんだった2022年の反動(?)なのか、今年はなんとなく動きが少なかった1年だった印象である。そんな中でも、車両について大きな動きが目立った。5300形が引退しただけでなく、1500形は初期グループの車両が相次いで運用終了。京成でも成田スカイアクセス線仕様の3050形が見納めとなっている。味のある役者たちが去っていくのは仕方のないことだが、寂しい。

他方、感染症法でこれまで2類相当に分類されていた新型コロナウイルス感染症が5月には5類に移行するなど、2020年から私たちの生活に大きな影響を与えてきたコロナ禍は大きな節目を迎えることとなった。インバウンドの復調によりスカイライナーは2019年に匹敵する利用実績をあげるなど、失っていた日常は確実に戻ってきている。はたして2024年はどのような一年になるだろうか。

2024年もいい年になりますよう。

※1/4一部修正

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