『特急にっぽん縦断』も残すところあと2日間となりました。8日目にしてついに日本最南端へ到達するのですが、そこで旅が終わるワケではございません。それより、今年中にこのシリーズを終える事ができるのか!?

それでは、続きをどうぞ。

 

『日本最南端の特急は観光列車』

30ランナー

指宿枕崎線 8071D 指宿のたまて箱1号

鹿児島中央 9:56→指宿 10:47

 

・乗車距離:45.7㎞ ・表定速度:53.8㎞/h

編成表:指宿←①キハ47-8060 ②キハ47-9079 ③キハ140-2066→鹿児島中央※全車指定席(鹿カコ キハ40・47いぶたま編成) 

 

◆最南端まであともう少し

稚内からスタートした特急縦断の旅として最終ランナーとなるのは、JR九州お得意の『D&S列車』の一員である『指宿のたまて箱』

前日は早めにチェックイン、この日もゆっくりチェックアウトで身体をゆっくり休めた後鹿児島中央駅に向かう。流石に8日目ともなると、猛暑に身体が慣れてくる。

 

 

 

『いぶたま』の愛称で親しまれている『指宿のたまて箱』。改札を抜けて4番ホームへ向かう。往路で乗車するのは2号車。この日は団体利用があるためかキハ140形を増結した3両フル編成だった。

 

 

 

それでは、車内にお邪魔しま~す。

いかにも水戸岡デザインといった感じ。食傷気味な鉄道ファンも多かろうが、私は決して悪いとは思わない。よくもまぁ…近郊型車両をここまで魔改造したなぁ…という感想だが。

往路の1号は海側窓に向いて配置されているカウンター席を選択した。独立した1人掛けで、隣を気にする事なく旅ができるのは良い事だ。ただ、足元は狭い。

 

 

 

この日で枕崎へ到達…つまりこの乗車券も効力が終わってしまう。有効期間は20日もあるのに…。いぶたま1号の指定席は10時打ちで取ってもらった。

 

 

 

それでは、鹿児島車両センターを見ながら鹿児島中央駅を後にする。

 

 

 

南鹿児島駅の手前から、鹿児島市電の谷山線と並走する。

 

 

 

谷山駅の手前で永田川を渡る。

 

 

 

やがて上り勾配区間に入り、鹿児島市街を見下ろしながら桜島が見えてくる。

 

 

 

五位野駅にて運転停車し、3332D快速なのはなと交換する。

コアラのシルエットが見えるが、当駅は平川動物公園の最寄り駅だからである。

 

 

 

◆風光明媚な車窓風景

平川駅付近より、いよいよ車窓のハイライトである鹿児島湾(と桜島)が見えてくる。

 

 

 

いぶたまの途中停車駅は喜入駅のみ。近くにはENEOSの巨大な石油備蓄基地がある。

 

 

 

ここでアテンダントによる車販が廻ってきて、私は定番のクリアファイルと、ストラップ、そしていぶたまタオルの3点を購入した。

 

 

 

鹿児島湾の美しい風景を見ながら旅は続く。

 

 

 

さて…宮ヶ浜駅付近で「ようこそ!長渕剛ゆかりの地宮ヶ浜へ」の横断幕が見えてくるが、コレは長渕剛の母親がご当地出身で、指宿市が2006年山川町、開聞町を合併した記念に彼から贈られた幼い頃母と泳いだ海の思い出を綴った散文詩に因み、2023年になってその文を刻んだ記念碑『母ちゃんの海石碑』が建てられている。

 

 

 

◆あっという間のいぶたまの旅

わずか49分で終着の指宿駅1番線に到着。

乗車距離が短すぎるのは否めないが、せっかく日本最南端の鉄路を走るのだから期間限定で枕崎まで延長運転をしてみたら如何だろう。

 

 

 

到着してドアが開くとミスト発生装置が作動し『玉手箱』の如く煙が…なのだが、残念ながらその瞬間を捉える事ができなかった…。何卒ご了承を。

 

 

 

改札口への通路にはいぶたまに因んだ写真や絵が飾られている。

 

 

 

当駅は日本最南端の有人駅(社員配置駅)のため、無人駅であるJR日本最南端の駅・西大山の記念入場券が売られている。枕崎からの復路の乗車券類と併せて窓口で購入した。

指宿→幸福の看板…幸福駅に列車が来なくなって35年余り…(涙)

 

 

 

観光地に相応しく立派な駅舎の指宿駅。駅前広場には竜宮城をモチーフにしたアーチが建っている。

 

 

 

網走駅を彷彿とさせる(?)縦書きの駅名板が入口の柱に設置されていた。

 

 

 

JR最南端の駅と終着駅へ

番外(稚内枕崎の最終ランナー)

指宿枕崎線  普通1333D(鹿児島中央発)

指宿 11:30→枕崎 12:56

乗車距離:45.7㎞ ・表定速度:29.4㎞/h

編成表:鹿児島中央←キハ47 8133+キハ47 9077→枕崎

 

◆どうなる『稚内→枕崎』の切符

『稚内→枕崎』の出札補充券の効力もあとわずかとなった。3500㎞余りを結んだ切符だけに記念に持ち帰りたい。そこで2020年に実行した『瀬戸瀬から志布志ゆきの旅』と同様に末端区間の乗車券を別途購入し、「囮」として使おうかと思ったが、駅員に相談した処「運転士に言えば持ち帰っても大丈夫ですよ」との答えが!コレで無駄な出費をせずに済んだ。

枕崎へは普通列車しか走っておらず、『特急にっぽん縦断』の趣旨とは離れるが、せっかく線路がつながっているのだから終着駅まで行ってしまおうではないか!

 

 

 

鹿児島中央駅から指宿枕崎線全線を走破する普通1333Dのキハ47形2連が到着。

 

 

 

私が乗車した先頭車キハ47 9077(原番号1077)は1980年製と、この時点で経年42年というご長寿車両だが、最新型の液晶運賃表示ディスプレイとの対比がユニークだ。

 

 

 

指宿から1駅先の山川駅では約4分停車する。交換設備のある駅としては日本最南端だが、交換列車はない。ここはかつて有人駅だったが、現在は簡易委託駅として平日の朝夕のみ切符を売っているとの事。

 

 

 

JR日本最南端の駅に到達!

山川から2つ目、ついに日本最南端…もといJR最南端の駅・西大山に到着する。沖縄県にゆいレールができたため、日本最南端の駅の座をその赤嶺駅に譲ったが、普通鉄道としての日本最南端の駅の座は揺るがない。

 

 

 

西大山では記念撮影タイムとして2分の停車時間が与えられている。他の観光客でごった返す中、どうにかJR日本最南端の駅』標柱と駅名標をカメラに収めた。

 

 

 

西大山駅を発車後に通過する西大山踏切は、日本最南端の踏切である。

 

 

 

さて…西大山駅発車後の車内だが、同駅にて観光客が下車したためガラガラに…。2両目のキハ47 8133(青の市松柄モケット)のほうの乗客は数える程に。

指宿枕崎線の指宿~枕崎は極端に乗客が少ないため、廃線の俎上に上がっている。JR九州の古宮社長が2023年11月末の記者会見の席で同区間について、鹿児島県や沿線の指宿、南九州、枕崎3市と将来のあり方を議論したい意向を示した事によって地元には動揺が広がった。最悪、JR日本最南端の駅が変わる可能性もあり得るという事だ…。

 

 

 

指宿枕崎線、とりわけ山川から先の区間は線路状態が悪く、乗り心地も極端に悪くなる。草ボウボウの線路は、まるで廃線跡のようだ…。

 

 

 

開聞岳(薩摩富士)を見ながら、列車の進路は北に進む。

 

 

 

その名も開聞駅に到着。駅名標は近くにあるカルデラ湖・池田湖に潜むといわれた伝説的怪獣・イッシ―に因んだデザインとなっている。

 

 

 

頴娃駅の手前には、火山の爆発に伴って溶岩が作り出した奇岩が見える。

 

 

 

そして頴娃、西頴娃と停車。西頴娃駅は山川~枕崎の間で唯一交換設備のある駅である。

 

 

 

茶畑とヤシ科の樹木…まさに鹿児島を象徴する風景だ。

 

 

 

枕崎まであと1駅…薩摩板敷に到着。

 

 

 

そして…ついに終着・枕崎駅に到着!

稚内枕崎の片道乗車券の旅はゴールに到達した。

 

 

 

運転士にお願いして、無事乗車券は私の手元に残す事ができた。駅舎と絡めて記念撮影!

尚、お堅いJR北海道では機械発券以外の乗車券類の持ち帰りは許されない。出札補充券で北海道を目指す旅を考えている方は注意して頂きたい。

 

 

 

南の終着駅・枕崎は稚内と同様棒線駅。このあたり侘しさを感じる。

 

 

 

JR(国鉄)としての枕崎駅は1963年に開業、この乗車時で60年目という節目であった。かつては鹿児島交通枕崎線が接続しており、薩摩半島を1周する鉄道網が完成したのも束の間、1983年に枕崎線が水害による甚大な被害によって部分的に不通となり、復旧されないまま翌年全線廃線となってしまった。駅そのものは先に開業していた鹿児島交通の所有だったため、枕崎線廃線までは国鉄の駅の1つに計上されていなかった経緯を持つ。

その後2006年に鹿児島交通が所有していた駅施設を処分、再開発したためJRの駅自体は100m程後退し、旧駅跡はスーパー『タイヨー』が建てられ、枕崎線のあった頃の面影は完全に消えた。

(写真左側には観光案内所が見える)

 

 

 

『本土最南端の始発・終着駅』のモニュメントが建つ駅入口。かつてはホーム側に稚内駅と同様の『南と北の始発・終着駅』の看板(※友好都市締結1周年記念として設けられた)があったが、この時点では既に撤去済みだった。

(参考写真:2018年1月、私が初めて枕崎に来た時に撮影)

 

 

 

先述の通り、稚内市と枕崎市は友好都市締結を結んでいるが、この旅をした2022年はそれから10周年の記念の節目を迎えた年。それに因んで何か記念になるモノはないか?と一応事前にネットで情報を探していたのだが…この旅の直前の時点では何も告知はナシ。ところが、『JR最北端・最南端の始発・終着駅 来駅証明書』なるモノが発行されていたとの事で…。双方の観光案内所に行けばそれぞれの駅の来駅証明書が貰えたらしい…。対象は2022年4月1日~2023年1月31日の間に両駅を訪れた人とある。つまり私も対象者の1人だったのだが…そういう記念品があるのならもっと早くから告知して欲しかったと悔しがる事しきり。

(来駅証明書のスクショ。それぞれの証明書は2枚に分かれており、つなぐと1つの証明書が完成する)

 

 

 

枕崎市はカツオのマチとして有名で、駅入口のプロムナードには『かつお節行商の像』が建立されている。

 

 

 

駅前には鹿児島交通の鹿児島行バスが停車していた。薩摩半島をショートカットする国道を経由する路線バスの所要時間は最速1時間半強で、海岸線を迂回し鹿児島中央駅まで3時間近くを要する鉄道は枕崎市民から相手にされていないようだ…。

 

 

 

番外(枕崎駅からの戻り)

指宿枕崎線 普通 5326D

枕崎 13:20→指宿 14:44

 

・乗車距離:45.7㎞ ・表定速度:32.6㎞/h

(車両は1333Dの折返し運転・☆キハ47 8133)

 

◆南の終着駅は始発駅

2006年に枕崎駅は移転したが、その当初はホームのみで駅舎がない停留所然とした姿だった。「流石にそれではあんまりだ」という事で市民や経済界などからの寄付によって2013年に駅舎が建設され、何とか南の終着・始発駅の面目を一新する事ができた。

駅舎には駅舎建設の資金を寄付した個人や団体の氏名が刻まれたプレートと、当市出身の大相撲行司・第三十六代木村庄之助が揮毫した駅名板が設置されている。

 

 

 

駅舎内部の様子。無人駅で切符の発売は行われていないが、一応飲料の自販機が設置されている。

 

 

 

それでは、枕崎駅から先程来た道を引き返す事にする。

 

 

 

JR九州の行先表示サボは、かつて出入口横上部のサボ受に入れられていたが、現在は室内側の側窓にサボ受を設置して掲示されている。枕崎→指宿→山川の表記がユニークだが、コレは指宿到着後山川行の1駅のみ運転する普通5327Dに充当されるからである。サボには「海側」の表記がされており、観光客にとっては親切だ。

 

 

 

復路は青市松模様モケットのキハ47 8133(先頭車)に乗車。やはり乗客は少ない…。

 

 

 

復路なので細かい行程は省略させて頂くが、海側の車窓には開聞岳や東シナ海、そして海に浮かぶ硫黄島が望める。

 

 

 

西頴娃駅に到着。当駅では枕崎行の1337Dと交換する。

 

 

 

鹿児島中央からの1337Dが到着。しかし…当列車はなかなか発車しない。運転士による案内放送が流れ、「線路に異状が見られるため発車できません」との事…。猛暑の影響だろうか。結局14:02の処、6分遅れでようやく発車するも、西大山駅での2分間停車は行わない事となってしまった。

 

 

 

西大山駅での2分間停車がなかったのは残念だったが、車窓から見える開聞岳、そして噴煙たなびく硫黄島を見ながらの旅は南国ムード満点だ。とにかくお天気に恵まれて良かった…。

 

 

 

鹿児島湾が見えてくると、山川駅に到着する。

 

 

 

山川から先は鹿児島湾沿いに進み、内陸部の市街地に入ると終着・指宿駅2番線に到着。

反対側の1番線には、次に乗車する『指宿のたまて箱6号』が待っていた。

 

 

 

指宿駅にはエスカレーターやエレベーターの設備はない。脚を悪くした私としては階段の上り下りはキツかった…。

 

 

 

番外・第30-1ランナー

指宿枕崎線 8076D 指宿のたまて箱6号

指宿 15:05→鹿児島中央 16:00

 

・乗車距離:45.7㎞ ・表定速度:49.9㎞/h

※編成は1号と同一(☆①キハ47-8060

 

◆いぶたまの旅、ふたたび

指宿からは鹿児島中央へ再び戻るため、いぶたまの最終列車である6号に乗車する。私が枕崎に行っている間、いぶたま編成は鹿児島中央~指宿を2往復していた。復路は最後尾である1号車に乗車する。

 

 

 

◆いぶたま車内を観察

それでは、往路ではゆっくりできなかったいぶたま車内をチェックする事にしよう。

①号車の鹿児島中央寄りには、アテンダントが乗務するサービスカウンターが設置されている。

 

 

 

カウンターの向かい側にはバリアフリー対応トイレが設置。「♪親亀の背中に子亀を乗せて~」的な亀のイラストがユニークだ。手洗いにはJR九州の在来線特急列車には設置されていない液体せっけんが設置されており、この辺りは好感が持てる。

 

 

 

鹿児島中央方から車内全体を見渡す。往路はほぼ満席という盛況だったが、復路の6号に関してはガラガラ…。但し増結の3号車(キハ140)に関しては団体利用で席が埋まっていた。

 

 

 

指宿寄り(運転台後)にあるBOX席。3人以上利用の場合に限り発売される。

 

 

 

車内の装飾あれこれ。「このぬいぐるみの名前は「イルカ」です」って…そのまんまやんけ!

他にも竜宮城に因んだ装飾が施されている。

 

 

 

私が復路で選んだ席は敢えてカウンター席ではなく、海側のリクライニング席にした。改造車故にシートと窓割が合わないのが泣き処だが、あまり眺望に不便は感じなかった。シートは885系に類似したモノだが、背もたれ背面はプライウッド、リクライニング角度はほんの少しだけというシロモノである。

 

 

 

◆鹿児島湾の美しい車窓とともに

さて車窓だが、往路で雲が掛かっていた桜島は頂上までクッキリ見えていた。

 

 

 

車窓風景を愛でつつ、予め鹿児島中央駅の売店で買っておいた『黒豚とんかつ御膳』(松栄軒謹製)を遅い昼食として食べた。鹿児島中央駅に駅弁を卸している松栄軒は肉モノの駅弁が豊富なので私は好きだ。

 

 

 

食後には車販で購入した『いぶたまチョコパン』をデザートとして頂いた。いぶたまの車体色に因んで白と黒のツートンカラーを表現している。使用原料の小麦に北海道産が使われているのが道民としては嬉しい。

 

 

 

鹿児島市街に入り、桜島はますます大きく見えるようになる。

 

 

 

やがて鹿児島市電の谷山線と並走、旅の終わりも近い。

 

 

 

◆たちまち鉄太郎はお爺さん!?

終着・鹿児島中央駅に到着。

ドアが開くと白い煙がモクモクと…。

 

 

 

往路で撮れなかったミスト発生装置の作動だが、鹿児島中央駅にて撮る事ができた。煙を浴びたからってお爺さんにはならないので念のため。

 

…と、今回は指宿枕崎線往復のみの紹介とさせて頂きます。この続きも紹介したかったのですが、写真と文字数がオーバーしてアップできないので、キレの良い処で今回は終わりにします。

この先、九州新幹線経由で新鳥栖へ向かい、佐賀、長崎へと向かいます。西九州新幹線開業前の長崎本線特急に乗る事も旅のメインの一つです。続きは次回以降に紹介致します。

 

つづく