平行普通列車

常磐線と新京成に魅せられた者のブログです

宮崎県の新幹線誘致 肥薩・吉都線ルートを考える

東九州新幹線大分経由よりも肥薩・吉都線ルートで誘致方向の宮崎県

旅行総合研究所「タビリス」の2023年12月1日付け、「『肥薩新幹線』は実現可能か。新八代~宮崎間、宮崎県が調査へ」を拝見しました。

宮崎県が東九州新幹線において、九州新幹線新八代から分岐し、肥薩線吉都線に沿って宮崎へ短絡する九州横断ルートの調査を行なう、「肥薩新幹線」とも著者が例えられたルートを分かりやすく説明されています。

肥薩新幹線とは何とも分かりやすい敬称です。

今回は、宮崎への新幹線について考えてみたいと思います。

 

東九州新幹線ルートに対する宮崎県

宮崎県にとって東九州新幹線ルートは、博多-大分の整備が前提となります。

まず博多から大分まで新幹線が通らないことには、大分-宮崎の新幹線の話は進まないのが、宮崎県の地図上での位置にあります。

大分県は小倉ルート、久大線ルート、四国新幹線との接続ルートなど、さまざまな構想、ルート案を持っていますが、いずれにしても宮崎県と連携しての動きではなく、博多-大分の速達化に主眼を置いています。

大分までの新幹線の必要性を叫ぶことで、本州各地や四国の地区での新幹線誘致路線に遅れをとるまいとする必死な様子がうかがえます。

 

宮崎県では東九州新幹線ルートは後回し?

大分県の新幹線誘致は博多-大分が主眼であり、宮崎県と歩調を合わせ、連携協調しての博多-大分-宮崎の同時新幹線整備ではありません。

宮崎県にとっては、博多-大分と大分-宮崎の新幹線同時着工の可能性は極めて薄いほか、大分経由での博多速達効果は薄いこともあって、博多速達効果のある肥薩・吉都線ルートを展開したと思われます。

博多-大分までで建設が止まる可能性があるなら、最初から大分と無関係の独立・短絡ルートの方が実現性があると踏んだのではないかと思われます。

 

肥薩線は3年前の7月豪雨で被災しており、復旧には10年以上は要するともいわれます。

熊本県側の費用負担で復旧を目指す方向性となりましたが、反面、肥薩線を在来線のまま復旧させても列車の利用度は厳しいと思われます。

JR東日本只見線のような復旧後の路線形態や意義を見い出しているのかは不明です。

 

タビリスの記事の中で、「肥薩新幹線」という可能性について展開されています。

記事の中から一部を引用させていただきます。

(以下引用)

肥薩新幹線は、(JR九州の)古宮社長が求める「持続可能性」の一つの解になり得るでしょう。すなわち、肥薩線をローカル線として復旧するのではなく、改軌のうえ高速路線としてよみがえらせ、宮崎まで新幹線を走らせれば、大幅な収益改善が見込まれ、「持続可能」となります。

整備手法としては、八代~吉松間を線形改良のうえ標準軌で復旧し、吉松~小林間の吉都線を改軌、さらに小林~宮崎間で高速新線を建設する、といった形が考えられるでしょう。八代~新八代間では九州新幹線へのアプローチ線も整備します。これで、博多~宮崎間をミニ新幹線車両が直通できます。

(以上引用)

 

肥薩線を単に在来線として復旧させるのでなく、肥薩新幹線という形での復旧と合わせた博多-宮崎の速達利用は斬新な発想です。

熊本県がこれにどこまで同調するかは宮崎県との今後の話し合いによりますが、持続可能性を強調するJR九州にとっては在来線での復旧よりも食指が動きやすいと思われます。

 

鹿児島中央-宮崎の新幹線建設やミニ新幹線の展開は無し

博多-鹿児島中央九州新幹線が1時間16分で結んでいることから、宮崎県は鹿児島中央からそのまま宮崎へ高速新幹線としての延長、またはミニ新幹線での展開も選択肢の一つにあってもよさそうに思われましたが、それは眼中にないようです。

博多-鹿児島中央は最速1時間16分、鹿児島中央-宮崎は現在約2時間です。

ミニ新幹線で博多-宮崎を3時間以上では意義がないこと、高速化しても2時間台は困難なこと、鹿児島中央経由は迂回し過ぎであること、宮崎-鹿児島中央区間自体の移動需要等を総合判断しての結果かと思われます。

宮崎県からすれば博多を目指す際、肥薩・吉都線の短絡ルートは魅力的であり、そこに肥薩線の災害復旧後における持続可能性も考え合わせれば、それと一体化した「肥薩新幹線」での復旧は説得性があると感じます。

 

仮に九州全県に新幹線が通った時の新幹線地図は?

現在の各県の構想がそのまま具現化したとすると、九州新幹線博多-鹿児島中央に加えて以下のような新幹線地図になるでしょうか。

佐賀県長崎県】 西九州新幹線新鳥栖-佐賀(佐賀空港?)-武雄温泉-長崎

大分県】 小倉または新鳥栖-大分

【宮崎県】 新八代-人吉-小林-宮崎

 

大分と宮崎への新幹線地図は、JR東日本山形新幹線秋田新幹線と類似した形状になりそうです。

奥羽新幹線構想の福島-山形-秋田ルートと、現実の山形・秋田新幹線ルートの相違と類似します。

九州内では、西九州新幹線佐賀県ルートはまだ決まっていません。

それに加えて、大分県と宮崎県とがそれぞれ固有の動きを展開します。

まずは西九州新幹線博多-長崎の全線開通が順序ですが、全国各地の新幹線誘致の中で、佐賀県の動きと合わせ、大分県と宮崎県がそれぞれどのような展開を見せるか、注視していきたいと思います。

 

(※ 記載にあたり、2023年12月1日付け、旅行総合研究所「タビリス」記事、「『肥薩新幹線』は実現可能か。新八代~宮崎間、宮崎県が調査へ」を参考にさせていただきました。)