「鳩のマークの京阪特急」写真集 | 書斎の汽車・電車

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 京阪電気鉄道の特急車の写真集をご紹介しますなどと書くと、「あれ、新京阪ファンでしたよね?」と言われそうですが、京阪間を鉄道で移動するとして、さてどの線を選ぶかというのは、いつも悩ましいところです。新京阪の後身たる阪急京都線はもちろん大好きですが、さりとて国鉄→JRも特に「新快速」の歴代の車輛は皆魅力的ですし、今回取り上げる京阪もまた、素晴らしい電車を走らせています。

 

 前置きが長くなりましたが、ご紹介しますのはレイルロードから「車両アルバム」シリーズの39~41として出版された『京阪1900Vol.1』『京阪1800』『京阪1700』の3冊(刊行順)となります。

 

 まずは刊行は一番後ですが、実物は一番最初に登場した1700型からご紹介します。昭和26(1951)年デビューの車輛で、2扉、扉間クロスシートなど、のちの京阪特急の基本となりました。なお「鳩マーク」はこの電車のデビュー翌年からの採用となります。『京阪1700』では、実車のデビューからの活躍ぶりを豊富な写真で紹介するほか、形式写真や図面類も充実しています。特に、昭和32(1957)年以降は2扉のままロングシート化され急行用に格下げされる車も出始め、中には塗装も一般車同様のグリーン濃淡となったものも現れますが、昭和38(1963)年には特急増強のため全車ロングシートのままですが特急仕業に復帰する一幕もありました。本書ではこのあたりも詳述しています。また、「台車の京阪」というくらい、本系列は様々な台車を履きましたが、本書では台車についても分かりやすく解説しています。そして昭和40年代の3扉化、一般車格下げ後について触れて締めくくりとなります。

 

 次に1800型、初期高性能車であり、最初に登場したグループは特に試作車的要素が強かったようです。また3輛のみロングシート車として製造されており、この車輌に自転車積み込みを可能とした貸切電車もあったというのは、時代を先取りしています。そしてあの「テレビカー」はこの1800型が元祖です。特急に大活躍後はロングシート化、後に3扉化というのは先の1700型と同じ流れです。

 本書もまた実物の活躍を豊富な写真で振り返り、形式写真、図面などの資料も豊富です。今回も様々な台車が登場するほか、メーカー(汽車会社)から提案のあったセミステンレス車体の図面なども収録されており、実に貴重です。また、末尾には1700、1800の部材を利用した事業用車輛についても紹介されています。

 

 最後の1900系は、後に1900系に編入される1810型登場から始まり、淀屋橋延伸と1900系デビュー、そして特急時代を取り上げています。前の2冊は格下げ後、廃車に至る過程も載せていましたが、1900系は何分活躍期間が長いことから、本書は特急時代に限定しており、グリーン濃淡時代については未刊のVol.2に譲るようです。

 本書もまた、実物の走行写真、形式写真、細部写真、各種図面類が多数掲載されています。例によって様々な台車の解説、編成替え、愛称名付き列車の紹介など、解説も充実しています。

 

 実は京阪1900系、私にとっては「推し」の電車の一つでして、今回の刊行は非常に嬉しいものとなりました。何だか胸がいっぱいになってしまい、紹介の筆もかえって進みません。本書の魅力をどこまで伝えきれているかはなはだ怪しいところではありますが、そのあたりご賢察の上、本書を実際にお手に取ってご覧いただければと思う次第です。

 それにしても、「推し」の写真集などというと、書泉グランデの7階あたりでサイン会、握手会の類がありそうな感じですが、電車となるとそうもいきません。(←床が抜けますよ)戯言はさておき、今回の3冊は、定評あるレイルロードの「車両アルバム」だけあって、美しい写真と豊富な資料、わかりやすい解説と三拍子揃った好著です。私鉄ファン諸氏はもちろんですが、京阪なんて興味ないよという方にも、是非ともお読みいただきたく存じます。