先週頃から各社報道によりJR関西本線の沿線自治体が調整役となって奈良~名古屋間に直通列車を最低2日間ではあるものの実証実験として運行させることが明らかになりました。

今回の記事では、実証実験の中身とどうすれば関西本線の存在価値が上がるかについて書いて行こうと思います。


少々長い記事になるとは思いますが、宜しければ最後までご覧下さい。



  ​関西本線はどんな路線?

関西本線は名古屋駅から大阪市浪速区にあるJR難波駅までを結ぶ路線で、名古屋駅~亀山駅はJR東海が、亀山駅~JR難波駅はJR西日本が運営しています。


名古屋側は桑名、四日市といった東海地区の主要都市と中心部の名古屋を結ぶ需要がある他、名古屋と伊勢を結ぶ快速「みえ」や名古屋と紀伊半島を結ぶ特急「南紀」のルートの一部にもなっています。


大阪側は奈良と大阪の中心部を結ぶ路線として快速列車が高頻度で運行されています。


一方で亀山駅~加茂駅(京都府)の区間については、利用者の減少が顕著となっており、これに歯止めをかけて利用者を増やそうというのが今回の実証実験を行う理由となっています。


  ​加茂~亀山間の現況


(関西本線 非電化区間)

利用者数の少ない加茂~亀山間の概要について軽く触れたいと思います。

この区間については現在、普通列車のみの運行ではありますが日中には毎時1本、朝夕ラッシュ時は毎時2本運転されており、JR西日本のローカル線としては本数が多い部類に入ります。

加茂~亀山間は約1時間半で結んでおり、途中の柘植駅では草津線と、伊賀上野駅では伊賀鉄道と接続しています。草津線と関西線は線路は繋がっているものの直通列車の定期設定はありません。


統計を取ったわけではないので不正確ですが、私個人の体感では学生の利用が中心ではあるものの、訪日外国人や旅行者の姿も一定数見られるという印象です。


関西本線の悪い所といいますか、懸念事項としては「自然災害に弱い」ということが挙げられます。

近年全国的にゲリラ豪雨の発生頻度が増えています。山間部を縫うように線路が敷かれている為、豪雨が発生する度に運転見合わせや徐行運転となる程雨に弱い路線です。また過去には台風の影響で長期間の運休が発生してしまったということもあり、これでは夏場の利用や日常利用を控えようとなってしまいますので何らかの改善が必要だと思います。


  ​実証実験の内容


(かつて「かすが」号に使用されたキハ75形)

今回の実証実験は2024年秋に沿線イベントと組み合わせて奈良と名古屋を結ぶ直通列車を最低2日間運行するものとなります。

列車種別を快速にするのか、特急にするのかはわかりませんが、加茂~亀山間は非電化となっておりますので、かつて奈良-名古屋を結んでいた「急行かすが」で使用された「キハ75」、特急「ひだ」等で既にJR西日本管内に乗り入れている「HC85系」のどちらかを使用すると思われます。

HC85系を関西線亀山以西で運転するには乗務員の講習が必要になると思いますので、キハ75を使用する可能性が高いとは思います。


  ​この区間を活性化させる方法は・・・

これからはどうすれば関西本線の存在価値をアップさせることが出来るかについて考えます。

関西線以外でも出来ることですが、乗客を増やす策として

①他路線と直通列車を運行する

②観光列車を走らせる

③貨物列車を走らせる

の3つが挙げられると思います。


  ​①他路線と直通列車を走らせる

関西本線は加茂~亀山を結ぶ路線ですが、今回実証実験として直通列車を運行する予定の「名古屋」や伊勢神宮のある「伊勢市」や観光地の「鳥羽」に至る路線の「参宮線」まで線路が繋がっています。


奈良~名古屋はかつての「かすが」では2時間10分程度で結んでいたということで、直通列車を運行すれば一定の需要があると思います。

※並行する高速バスは関西本線より運賃が高く、2時間35分程度要するため。

しかしながら、JR東海としては東海道新幹線や今後開業する予定のリニア中央新幹線を利用して貰った方が利益率はいいでしょうから積極的に運行してくれるかは疑問です。


「伊勢」方面に目を向けますと、京都~伊勢方面については既に近鉄特急が運行されています。

近鉄特急については難波~鳥羽は1時間50分、京都~鳥羽は2時間20分程度で結んでいます。


仮の話ではありますが、大阪から京都、草津線、関西線を経由して鳥羽へ向かう特急を設定すると大阪~鳥羽を3時間~3時間15分程度、京都~鳥羽を2時間半~2時間45分で結べるのではないかと思います。

所要時間では近鉄の方が勝りますが、訪日外国人の方はJR乗り放題の「ジャパンレールパス」を使用する方が多いと思いますので、初期投資さえしっかりすれば一定の需要はあると思います。


  ​②観光列車を走らせる

関西本線非電化区間は木津川と並行する形で線路が敷設されており、非常に綺麗な車窓を見ることが出来ます。沿線にも「お茶」「忍者」等の観光資源もありますし、観光列車を運行すれば一定の需要は見込めると思います。


  ​③貨物列車を走らせる

続いて貨物列車を走らせることですが、これは非常に厳しいのでは無いかと思います。

定期的に工事列車や配給列車が入線していること、かつての名残で駅構内の有効長は非常に長いことから貨物列車を走らせることそのものは可能だと思います。

しかしながら東海道線の東京方面から関西本線へ貨物列車を流すには一旦名古屋駅を通過し、愛知県の稲沢で進行方向を変えないといけない構造となっています。

直接貨物列車を通すには「南方貨物線計画」をもう一度持ち上げる必要がありますが、実現させるにも国の介入が必要なレベルだと思いますのですぐには困難だと思います。

2024年問題や労働者不足等の問題もあり、今後名古屋~大阪間の物流需要が増加した場合は光が当たる可能性も0ではないと思いますが。


  ​結論

結論としては、関西本線は今後再生できるだけのポテンシャルはあると思います。

しかしながら、雨に強い設備にするにしても、直通列車を恒常的に設定するにしても一定の設備投資が必要となります。これはJR西日本や沿線自治体がそれなりの覚悟を持って真剣に取り組まないと出来ないことだと思います。これからの取り組みに期待したいですね。

我々一般人が出来ることとは、できる限り関西本線を利用する、関西本線の魅力を発信することでしょうか。

最後までご覧頂き有難う御座いました。


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