小田急電鉄のホームドア:ホームドア設置に伴うロマンスカーの対応

小田急電鉄のホームドア整備は2019年頃から本格的に始まりましたが、特急ロマンスカーが停車するホームとしては2023年の本厚木駅が初めての設置でした。当記事では、本厚木駅ホームドア設置に伴い実施されたロマンスカーの一部ドア締め切り扱いと、リモコンを使用した開閉操作について紹介します。

1 一部ドア締め切り

2023年時点で営業運転に用いられているロマンスカーは30000形「EXE[1]リニューアル車は「EXEα」」・60000形「MSE」・70000形「GSE」の3形式です。このうちEXEとMSEはドア位置が一般型車両と大きく異なるため、本厚木駅などでは最大4m超の開口幅を有する「大開口ホームドア」が採用されました。ホームドア本体の詳細は別記事をご覧ください。

しかしながら、EXEおよびMSEは大開口ホームドアを用いてもすべてのドア位置に対応することは困難だったため、ホームドア設置を前にした2022年11月15日より、4号車と7号車のドアは小田急線内のすべての特急停車駅において締め切り扱い[2]箱根登山線およびJR御殿場線(特急「ふじさん」としてMSEが乗り入れ)も含む。となりました。

一方で、2018年にデビューした最新のロマンスカーGSEは将来のホームドア設置を見越してドア位置を一般車と極力合わせた構造としているため、引き続きすべてのドアから乗降できます。

EXEの乗務員室には「限定開扉改修済」のシールが
MSE車外の案内表示
EXEα車内の案内表示

この措置に伴いEXE・MSEには改修工事が行われ、乗務員室のドアスイッチ付近には限定開扉扱いのためのランプやスイッチが増設されていました。また、4・7号車ドアの窓部分(内側・外側とも)には扉が開閉しない旨・隣接する号車のドアを利用するようにという案内表示が設けられました。

なお、MSEが乗り入れる東京メトロ千代田線内では、同じくホームドアの関係で以前から2・3・6・10号車が締め切り扱いなので、千代田線内と小田急線内でも開く扉が変わります。千代田線内の取り扱いについては別記事をご覧ください。

2 リモコンを使用した開閉操作

リモコンでホームドアを操作するロマンスカーの車掌

本厚木駅などのホームドアは一般車とロマンスカーで開閉方式が異なっており、一般車については登戸駅などに続いて「QRコードを用いたホームドア自動開閉制御システム」が採用されています。一方、ロマンスカーはQRコード式システムによる制御の対象ではなく、開閉ともに車掌がリモコンを使って手動操作する方式が採用されています。東京メトロ千代田線ではMSEのホームドア開閉をリモコンで行っているため、そこから逆輸入された形とも言えます。

ロマンスカー発着時の取り扱い手順は次の通りです。

左:乗務員表示灯(一般車・ロマンスカー兼用)
右:ロマンスカー用リモコン受光部

列車が定位置範囲内に停止すると、乗務員表示灯の下段(一般車なら「D」と表示されるところ)にと表示されます(ロマンスカーの「ロ」?)。おそらく、ホーム上2か所に設置された定位置停止検知センサによる判定に加えて、QRコード読み取りカメラがQRコードを認識すれば一般車、しなければロマンスカーと判別しているのだと思われます。

車掌は先にリモコンでホームドアの開扉操作を行い、続いて車両ドアを開扉します。EXE/MSEとGSEではドア位置が異なり、さらにEXE/MSEは6両編成と10両編成が存在しますが、ホームドアは車種・編成両数に対応した箇所のみが開きます。これはリモコンから送信する信号によって制御されているのか、それとも地上側のセンサ等で判別しているのかは不明です。

車掌がホームに降りられるように客用ドアが無い個所も開く
リモコン受光部に向かって「閉」信号を送る

発車時は車両ドア→ホームドアの順に閉扉操作を行います。QRコード検知により自動閉扉する一般車と比べれば発車までに多少時間を要しており、信号がうまく届かず何度か押し直す光景もよく見られたため、今後の設置駅拡大に向けた課題となりそうです。

3 おわりに

例えばすべてのドア位置に対応できる「昇降式ホーム柵」を採用するという手もあった中で、どうしても位置が合わない号車のドアは諦める選択をした小田急。それでも大きな混乱もなく取り扱い開始から1年以上が経過していることから、今後ホームドア設置が本格化する他社の特急型車両もこの流れに追従するかもしれません。

2023年度は新たに町田駅でも同型のホームドアが整備され、2024年度以降は相模大野駅や海老名駅などにも整備予定となっています。特に相模大野駅はロマンスカーの連結・切り離しが行われる駅なので、開閉取り扱いや制御システムはさらに複雑化しそうです。

出典・参考文献

脚注

References
1 リニューアル車は「EXEα」
2 箱根登山線およびJR御殿場線(特急「ふじさん」としてMSEが乗り入れ)も含む。

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