今もし営業していれば… | あさかぜ1号 博多行
2023-11-28 04:02:09

今もし営業していれば…

テーマ:鉄道ネタいろいろ

本日のお題:行きたかったけれど、いけなかったお店

食べることは好きだけど、あまりグルメ番組やグルメ本を見て特定の店に食べに行こうとする人間ではないので、行きたかったけれど入店を果たせなかった店というのはことグルメ関係に限ればあまりありません。
そんな中でも私が特に今でも一度行きたかったと思っているのが、東京恵比寿にあった「ビアステーション恵比寿」というビアレストランです。
お店に入ったことのない私がこのお店のことを今も記憶にとどめているのは、このお店が、実物の電気機関車に連結されたこれまた実物の客車の車内で、すぐそばを走る列車を眺めながら飲んだり食べたりすることができるという、鉄道好きにはたまらなく魅力的なお店だったからです。
この「ビアステーション恵比寿」は、恵比寿駅の目黒方にあったサッポロビールの工場で生産された製品の積み出し用の側線として使用していた線路を利用し、そこに電気機関車のEF58 91号機と旧型客車3~4両を停車させ、客車の中で飲食ができるというお店でした。
EF58は昭和30年代のブルートレイン牽引用機の塗装(ちなみにこの91号機は現役時代にこの塗装になったことはない)である青とクリーム色の裾帯の姿に塗装を変更し、客車も同じ青色にきれいに塗装し直されました。
そしてこれらの車両が停まっていた線路のすぐ横には、山手線と山手貨物線の線路が敷かれていました。つまりこのお店は「トレインビュー」どころかかなりの近距離から走る列車を眺めながら食事やお酒を楽しめるというのが最大の売りでした。
このお店がオープンすると聞いた時には私ももちろんこんなお店ができたのかと興奮しましたし、祖父母の家へ行く時などに山手線で恵比寿を通るたびに「一度あそこでEF58を眺めて客車で食事したい」という気持ちが停まりませんでした。
でも当時はまだ中高生だったので当然ビールは飲めず、かといってなぜか親に行きたいとねだるようなこともなかったように記憶しています。その代わり、「20歳になったら絶対一番に行くぞ」と心の中で誓ったものでした。
まあ考えてみれば、ビアレストランとはいってもジュースなどのノンアルコールのソフトドリンクが全くメニューになかったわけでもないでしょうから、それを飲みながら食事を楽しむという手もあったとは思いますが、中高生の私が仮に一人で入店しようとしたときに店側が許可するかどうかを考えると難しかったのかもしれません。それならば親に頼んで家族で出かける手もあったはずでしたが、なぜかそれを言い出した記憶はありません。

こうして、ぜひとも一度行きたいと思いながら入店を果たせないでいるうちに、かつてビール工場や「ビアステーション恵比寿」のお店のあった一帯で「恵比寿ガーデンプレイス」の再開発が始まり、そのため「ビアステーション恵比寿」はわずか数年で閉店。
EF58は残念ながら解体となり、客車も一部が目白駅構内に映ったもののそれも長続きせずに姿を消してしまい、とうとう私の小さな夢は叶いませんでした。
その後、同じ「ビアステーション恵比寿」というお店がガーデンプレイスの中の施設として再びオープンしましたが、かつてのように実物の鉄道車両の中で飲食ができるというわけではなかったようで、このお店も2021年末で閉店したそうで、名前だけとはいえ残っていた面影も消えてしまいました。

ところで、「ビアステーション恵比寿」がEF58+旧型客車のスタイルで営業していた当時、客車の窓から見えるのは山手線を走る103系や205系、それに山手貨物船を走る貨物列車や臨時・回送列車ぐらいでした。
しかし、今や山の手貨物船には湘南新宿ラインや埼京線、「成田エクスプレス」や伊豆方面への特急、それに埼京線と相互直通する相鉄やりんかい線の車両など実に様々な車両が数分間隔で走る状況になっており、山手線のE235系ともども40年近く前とは別世界のように景色が変わっています。
もし「ビアステーション恵比寿」が、車両は変わったとしてもオープン当初と同じスタイルで今も営業していたら、いろいろな列車を眺めながらお酒や食事が楽しめる飲み鉄&食べ鉄スポットとして、平日・休日問わず大賑わいだったに違いないでしょう。
そう考えると、「ビアステーション恵比寿」はある意味時代を先取りし過ぎたともいえるかもしれませんね。

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