今回は、「珍しい車内販売」を紹介します。
一般的な車内販売とは、列車で移動する乗客に、飲み物・食べ物を販売する形式です。
一部の観光列車では、グッズ類を販売することもあります。
JRの直営・または系列の車内販売会社が販売するのではなく、地元の業者が乗り込んで販売してもらう形式です。中小の業者になりますから、販売品が限定されて、個性的な珍しい車内販売が見られます。
※「現在は実施していない」「実施する列車や機関が限定されている」車内販売が大多数ですのでご注意ください。
【1】奥出雲おろち(出雲市・木次~備後落合)JR西日本
この記事がアップされる本日2023年11月23日で、運行を終了するのが「奥出雲おろち号」です。
指定券を1枚買うと、トロッコと雨風をしのげる通常の座席の両方確保できます。
2両とはいえ、実質1両だけの人数の乗客です。
ところが、この1両だけの乗客のために、地元の中小の業者が、車内販売に何社も乗り込んでくるのです。
手軽に買えて人気なのは、乳製品です。
カスタードプリン250円、コーヒー牛乳100円です。
私は「仁多牛べんとう」も買いました。
予約しなかったので買えるか不安でしたが、買えました。
温かくて美味しかったですね
車内販売とは言いにくいのですが、途中駅で「そば」も販売しています。
トロッコ車両ですから、車内で座ったまま品物と代金の受け渡しができます。
【2】「鮎の塩焼き」(五井~上総中野)小湊鉄道
地元の川で捕った魚を焼いて、温かい状態で販売していて驚きました。
特に観光列車では無く、通常の列車に近くの川で捕れた「アユの塩焼き」を売りに来たのです。
600円で買いましたが、温かい状態でいただきました。ビールが欲しかったです。
季節と列車限定です。来年度は販売するか不明です。
【3】リゾートしらかみ(青森~五能線経由~秋田)JR東日本
観光快速「リゾートしらかみ」ですが、通常の車内販売は、ほぼ無くなったと言えます。
それを補う形で、地元の業者が何社か乗り込んで、自社の製品を販売する「ふれあい販売」が実施されました。
(現在はスマホからの予約制で弁当も買えます)
地元の名産品が買えるのは、乗客にとってラッキーです。
別の業者は、自分の店で取り扱う別の品物を販売して、競合はほぼ無いようです。
販売に乗り込む日は、業者が決めることができます。
ですから閑散期の平日は、販売する業者が無かったりします。
「リゾートしらかみ1号」で深浦駅まで販売して、ホームに降りると7分後に発車する「リゾートしらかみ2号」に乗って折り返して再び販売できる絶好のダイヤになっています。
【4】もやし弘南鉄道
青森県の弘前周辺を走る弘南鉄道では、車内で「もやし」を販売する時期があります。
地元では有名な「もやし」を、日付と本数限定ですが、電車の中で買うことができるのです。
帰りの新幹線のテーブルに載せたら、かなり大きいことが分かります。
販売している方に、写真を撮らせていただきました。
風情を感じます。
【5】ストーブ列車「するめ」津軽鉄道
有名な津軽鉄道のストーブ列車です。
暖房に石炭ストーブを利用する旧式客車なのですが、これがレトロで人気です。
そして、「スルメ」をストーブで焼いて食べることができるのです。
(焼いて良いのは車内販売で買ったスルメだけで、イギリストーストは不可です)
車内販売で、スルメの他に、日本酒や石炭クッキーが、よく売れます。
スルメを焼くのは、観光アテンダントですので、地元業者というわけではないですが。
【6】ほっかむり行商隊(大湊線)
「リゾートあすなろ下北」に、ほっかむりをしながら地元の品物を販売する「ほっかむり行商隊」が乗り込んできた時期がありました。
いや~、【3】から【6】は全て青森県なんですね。
青森県は奥深い魅力がある地域ですね。
【7】予土線JR四国
愛媛と高知の四万十川流域を走る予土線。
地域と予土線を活性化させようとする活動が盛んです。
その一環として、1両だけのトロッコの乗客に地元の品物を販売しています。
売り上げを考えたら、缶コーヒー・缶ビールでもワゴンに入れるのが良いのでしょうが、厳選された地元の品物だけを置いています。5分~10分で販売は終了して、販売員さんは自主的に観光案内をしてくれました。観光客にとっては有難いことです。
四万十牛ライスバーガー、食料の調達が難しいなかで助かりました。
【8】只見線JR東日本
只見線が会津川口までの時期に、往復して車内販売を利用しました。
普通列車ですが、1日1往復だけ地元の特産品を販売していました。
特に「柳津あわまんじゅう」は人気でした。
4店の品を1個ずつ食べ比べできるのです。
他の地元の品も、一通り購入しました。
【9】会津17市町村ぐるっと!いいもの・うまいものリレー会津鉄道
地域活性化の一環として、会津鉄道が、沿線の17市町村の特産品販売と観光PRを日替わりで行う企画です。
私が乗った日は、磐梯町の日でした。
特産品の販売を行なっていました。観光宣伝のパンフも配布します。
地元観光協会の人は慣れていますが、市役所の職員が動員されると不慣れでぎこちない表情の時があり、結果的に研修の効果も出ているようです。
この磐梯町の方は、手際よい接客でした。
【10】停車中に車内販売 会津鉄道
会津鉄道で感心するのは、2~3分の停車時間に、駅員さんなどが乗り込んできて車内販売を行なうことです。
下郷町で養殖が盛んな「鱒」を使用した「マスバーカー」、そして花豆パイを販売するために乗り込んできます。
別の駅では、暑い日にはアイス、涼しい日にはホットコーヒーなど品を変えて単品販売です。
買いたい客が多いと、発車時刻が1~2分遅れることもあるようですが、余裕を持ったダイヤで回復できるようです。
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この10種類の車内販売ですが、
「リゾートしらかみ」以外は、2両か1両で走る列車です。乗客は少ないです。
安定して収益が上がるとは思えません。
収益だけ考えるなら、1箱2000円の「まんじゅうセット」のお土産を売れば儲かるかもしれません。ただ乗客の感動にはつながりません。
ですから、
《1》地域振興の役割を担う
観光協会など地域の活性化を取り組む人たちを巻き込むと、若干赤字でも続けられそうです。
弘南鉄道の「もやし」は、直接の売り上げは少ないですが、「電車の中で今年も《もやし》の販売」とマスコミで報道されますから、結果的に良いPRになるのです。
《2》一部の時間を車内販売に振り向ける
無理のない時間で、車内販売をするなら売り上げが多くなくても続けられそうです。
車内販売は、簡単に休めないものです。でも「リゾートしらかみ」の「ふれあい販売」だと、地域の祭りで大量注文が入っている日は、車内販売を休みやすいです。
夫婦で営む小規模な弁当店なら、朝7時から12時まで弁当作って、そのあと1人が2時間かけて車内販売できます。
70歳くらいの人でも、昼間に3時間なら十分仕事できます。
農繁期でない時期なら、農家の人は車内販売に乗り込めます。
まあ、腰を痛めて寝込んだら車内販売できない不安定さはでてきますけど。