平行普通列車

常磐線と新京成に魅せられた者のブログです

東急東横線Qシートの利用促進策を考える

11月~12月の「おためし半額キャンペーン」での利用促進効果はどうか?

東急から、2023年11月8日付けで「東横線 有料座席指定サービス『Q SEAT』 おためし半額キャンペーンについて ~期間限定で半額の250円で購入いただけます~」のニュースがありました。

記事の一部を引用させていただきます。

 

(以下引用)

当社は、2023年8月より東横線 有料座席指定サービス「Q SEAT」(以下、本サービス)を開始いたしました。この度、より多くのお客さまにご利用いただくことを目的に、期間限定で、通常1席500円のところを半額の1席250円にて販売する「おためし半額キャンペーン」を実施します。

本サービスは、平日の夕夜間に、東横線を運行している5050系(10両編成)のうち、一部列車の4・5号車の座席を、ロングシートからクロスシートに転換し、急行列車として、渋谷発元町・中華街行きで運行します。
既存車両よりも広い座席、電源コンセントとカップホルダー(一部座席)を設置しているほか、車内Wi-Fiサービスを無料でご利用いただくことができ、ゆったり快適な座席をご用意しております。
「おためし半額キャンペーン」の詳細は、以下の通りです。
1. 実施期間:2023年11月13日(月)~12月29日(金) 平日のみ
2. 実施内容:1席500円のところを半額の1席250円で販売(大人・小児一律)  
大井町線「Q SEAT」は対象外でございます。

(以上引用)

 

導入3か月後の年末近くで割引する背景とは

Q SEAT(以下、「Qシート」)は、で2018年12月14日から東急大井町線大井町長津田で導入され、2023年8月10日からは東横線渋谷-横浜-元町・中華街にも導入されました。

今回の「おためし半額キャンペーン」は東横線を対象に、Qシート料金500円を期間限定で半額の250円とするものです。

終日混雑する印象のある、東急の看板路線の一つである東横線で、Qシート制度開始の3か月後の年末にかけてこのキャンペーンを打ち出したのは意外でした。

「この度、より多くのお客さまにご利用いただくことを目的に」という表現からは、既に多くの利用があるが、一層の利用促進を目指してという意味にも受け取れますが、それならば11月中旬から年末に割引を打ち出すこともないのではとも感じます。

渋谷-横浜の所要時間、料金設定、運賃と料金のバランス、対象列車と設定時間帯等を勘案していくと、鉄道側が期待したほど利用が伸びていないかと思います。

そして、それがQシートの存在自体を知らないから伸びないこともあり、存在を知ってもらえば、そして料金を半額に下げれば利用が促進すると期待してのキャンペーンではないかと考えます。

今回は、東横線Qシートの利用促進策について考えてみました。

なお、正式なQシート列車の運用区間は渋谷-元町・中華街ですが、ここでは便宜上、渋谷-横浜で表現することをご了承ください。

 

利用が伸びない状況と対応策

〇 東急大井町線大井町長津田とは異なる東横線の列車設定環境

大井町線大井町起点での運転なので、大井町から先、品川方面への列車直通への欲は出ません。

東横線はそれが当てはまらず、渋谷完結でなく東京メトロ副都心線を介して新宿、池袋へ、さらに西武池袋線東武東上線に直通します。

横浜側でも、新横浜経由で相鉄線直通の新たなルートがあります。

その長いルートでの直通列車がありながら、Qシート区間が渋谷-横浜の所要約30分ではいかにも短すぎる印象を与えました。

Qシートを設けるなら区間拡大を利用者は望んでいると思われます。

 

〇 Qシート料金の見直し

渋谷-横浜の運賃309円に対し、Qシート料金は大井町線を含め、一律500円です。

運賃に対して約1.6倍の料金割合となり、東横線は運賃に対し、Qシート料金が高すぎる印象を持ちます。

渋谷-横浜の運賃が309円ならば、Qシート料金は運賃の半額150円が適価と考えます。

キャンペーン価格250円は通常の500円と比べれば半額で安価ではありますが、そもそも通常のQシート500円と比較する安さの前に、運賃309円とのバランスで比較すると思われます。

309円に追加して負担できる額は、乗車時間等も考慮すると半額ならいいかと食指が動いてくるように思います。

 

〇 駅購入でのICカードの扱い

Qシートの購入は、専用販売サイト「Qシートチケットレスサービス」に会員登録してのクレジットカード支払いが基本となっています。

東横線の急行停車駅では改札窓口で購入できますが、現金の限られます。

しかしながら、鉄道側は乗車券よりもPASUMOSuica等の交通系ICカードを推奨してきたところであり、ICカードでの購入は扱った方がよいのではないかと思います。

 

〇 土曜・休日の終日運転化

平日の夜5本だけの運転では沿線に定着しにくいと思われます。

少なくとも帰路の通勤時間が始まっていく16時以降からの設定が望まれます。

また、土曜・休日には終日設定してPR、利用啓発に努める余地があると考えます。

 

〇 4号車のみのQシート設定化

渋谷-横浜33分乗車で10両編成にQシート2両は輸送力過大で、4号車の1両設定が適当と思われます。

2両にするならば、逆に区間拡大が必須要件と思われます。

 

〇 相鉄、地下鉄副都心線、西武、東武への直通と「S‐TRAIN」の東急版列車投入

Qシート制度を東京メトロ、西武、東武、相鉄と一体化して理解、協力を得て相手方路線まで拡大するのは、会社ごとの意向が異なり、調整時間的にも限度があったと思われます。

それにより、自社路線の渋谷以南の自社路線急行のみの設定になっているのですが、渋谷-横浜約30分の時間での列車設定ではQシートの効果は出なかった結果になったと受けとめられます。

少なくとも新宿、池袋まで直通し、横浜側も新横浜経由で相鉄線直通で活路を見い出し、列車種別は急行でなく特急であってこそQシートの効果は出たと思われます。

 

一方、JR東日本は同じ渋谷-横浜であっても熊谷、大宮、大船、逗子、平塚、小田原方面まで広範囲の中での一部区間としての渋谷-横浜の位置づけになります。

JR東日本と比べると東横線のQシート設定距離と利用時間はいかにも短く感じます。

他線への直通列車による運転区間拡大が望まれるものの、Qシートの存在が逆にネックになってしまったようにも感じられます。

 

ひとまず西武主体の「S‐TRAIN」のような運用距離の長い全車指定席列車の思想で、東急版(仮称)「Q‐TRAIN」のような列車設定の方が実現しやすいと考えます。

 

〇 ホームページ「東横線有料座席指定サービス Qシート」の文章表現について

最後に、東急のホームページで気になった文章の言い回し箇所について。

ニュース記事の最後の段に「有料座席指定サービスQシートの詳細は、当社HPよりご確認ください。」とあり、そのサイトを開くと冒頭に「概要」の項目があります。

概要の項について以下、引用させていただきます。

 

(以下引用)

こんな方におすすめのサービスです。

● 帰宅ラッシュを避けてゆったりとした空間で帰宅。

● 仕事を頑張った自分にご褒美。ほっと一息で明日に向けてリフレッシュ。

● お子様とおでかけした帰りに、疲れたお子様はぐっすり夢の中へ。

(以上引用)

 

以下、上げ足をとるかのような意地の悪い指摘と受け取られるかもしれませんが、文章表現の一部に改善の余地があると感じます。

考えすぎかとも思いますがご了承ください。

 

・「こんな方に」の「こんな」という言葉は「こんなもの」とも受け止められ、良い印象を与えないこと。

・「帰宅ラッシュを避けてゆったりとした空間で帰宅」と、同じ文章で「帰宅」を2回使うのは避けた方がよいこと。

・世間一般でも「自分にご褒美」と言いいますが、「ご」褒美とは相手に対しての丁寧語であり、自分で自分にも言うかどうか。

休暇の際、周囲から「明日、お休みなんですね」というのは自然ですが、自分から「私は明日、お休みします」という違和感と似ています。

・同じ平日夜でも、子どもとの行楽で過ごした家族の帰りを前提に「疲れたお子様はぐっすり夢の中へ」とも謳っています。

前項では仕事を頑張った後の、自分へのご褒美でしたが、そのあとで子どもと行楽で過ごした家族のことを謳うならば、土曜・休日にもQシートの設定があると期待を抱かせます。

また、随所に「ございます」の表現がありますが、丁寧なのはよいものの、多用しすぎて読み手側が逆に遠慮してしまうような違和感を覚えます。

普通に「です」「ます」の方が自然と思います。

以上を総合して、筆者ならば次のように表現します。

 

お帰りの電車にQシートはいかがでしょうか。

● 帰宅ラッシュを避けてゆったりとした空間のQシート車内と座席(車内Wi-Fi、電源コンセント付き)

● 仕事を頑張った帰り道、Qシートでほっと一息で明日に向けてリフレッシュ

● 平日夜、お子様との行楽のお帰りにも、Qシートで疲れた体を癒してゆったり移動

 

以上ですが、11月13日からの「おためし半額キャンペーン」のQシートの成果を期待するとともに、キャンペーン終了後の来年、元の価格に戻った後の今後の展開を見守りたいと思います。

 

※写真は本文と無関係です。