JR東日本は27日、首都圏と房総エリアを結ぶ特急列車について、来春から自由席を廃止し、全車指定席とすることを発表しました。今回はこれについて考察します。

https://www.jreast.co.jp/press/2023/20231027_ho02.pdf

 

※2023.10.30  料金の比較表について、快速グリーン車自由席の料金に誤りがありましたので、修正しています。

 

1.対象列車

 対象となるのは、特急「しおさい」(東京~銚子)、特急「さざなみ」「新宿さざなみ」(東京・新宿~君津・安房鴨川)、特急「わかしお」「新宿わかしお」(東京・新宿~安房鴨川)の全列車全区間であり、来春から全車指定席となります。恐らく、ダイヤ改正日にあわせて施行されるものと思われます。

 

2.特急料金の変更

 上記列車については、現行はB特急料金が適用されていますが、全車指定席化以降は、現在東海道線の特急「踊り子」「湘南

」、中央線の特急「あずさ」「かいじ」「富士回遊」「はちおうじ」「おうめ」、高崎線の特急「あかぎ」・常磐線の特急「ひたち」「ときわ」で適用されている料金体系に変更となります。なお、えきねっとのチケットレスサービスを利用すると、さらにおトクな価格で利用できます。

 

3.全車指定席化の背景

 背景はずばり、検札業務の省略とネット予約への移行を促すことが狙いでしょう。同様の動きは、既にJR西日本管内でもみられます。業務を効率化することで、営業費用の削減を目的としているとみられます。

 

4.全車指定席化はメリットが大きい

 全車指定席化のニュースが流れると、必ずと言っていいほど反発の声が見られます。最大の理由はなんといっても、「特急に乗るための最低価格が上がるから」でしょう。

 ここで、新しい特急料金体系を、現行の特急料金体系及び総武快速線の自由席グリーン車の料金と比較してみましょう。

 

 現行の料金体系では、東京~千葉など50km未満の区間であれば550円課金すれば特急の自由席に乗れますが、全車指定席化以降は760円となるため、確かに最低価格は210円の値上げとなります。

 しかし、変更前後の指定席特急料金を比較すると、変更後は300~400円ほど安くなっていることが分かります。特に、51~100kmの区間では、現行の自由席特急料金とほぼ変わらない価格となっており、お値打ち度が高くなっています。

 さらに、えきねっとチケットレスサービスで指定席特急券を購入した場合、平日の乗車で100kmまでの区間であれば、快速のグリーン料金よりも安くなってしまうという逆転現象も起こっています。快速のグリーン料金より安い値段で、確実に着席できて、かつ速く移動できるとなれば、全車指定席化で最低価格が上がっても、コストパフォーマンスの魅力は相当高いといえます。こうしてみると、乗客にとってはむしろメリットのほうが大きいといえるのではないでしょうか。

 

5.まとめ

 いかがでしたでしょうか。房総特急は東京~千葉市内での短距離利用が多いこともあり、自由席利用者が多い傾向にあります。そのためか、首都圏の他の特急が続々と全車指定席化されても、房総特急は自由席の設定がされ続けてきました。

 そんな中でも、えきねっとトクだ値35を設定し、指定席を利用する金銭的インセンティブをつけて、指定席利用・ネット予約利用を誘導してきた経緯があります。

 今回の全車指定席化が、そうした施策の効果が出てきて、満を持して実施するのか、とにかく全車指定席化して業務の効率化を図る必要に迫られてのことなのか、それは分かりません。

 いずれにせよ、来春は房総特急の形が大きく変わることとなりました。これをきっかけに、利用状況がどのように変化するのか、注目です。