行楽客の利用回復に伴い、激しい混雑をみせるJR山陰本線(嵯峨野線)。これに対し、京都府の西脇知事は、ダイヤの見直しや混雑緩和を求める要望書を提出しました。

 

 

 

1.これまでの経緯

 JR嵯峨野線は、JR山陰本線の京都~園部間の愛称であり、観光地である嵯峨嵐山、トロッコや保津川下りの拠点となる馬堀も経由しています。そのため観光客の利用も非常に多く、混雑していることが多い路線です。

 嵐山は外国人観光客にも人気であり、特に京都~嵯峨嵐山間は著しく混雑します。そのためJR西日本は2017(平成29)年3月のダイヤ改正で、京都~嵯峨嵐山間に普通1本を増発し、快速1本普通4本の毎時5本体制としていました。

 しかし、新型コロナウイルスの影響で行楽客が大きく落ち込み、2021(令和3)年3月のダイヤ改正で減便となり、京都~嵯峨嵐山間は快速1本普通3本の毎時4本体制に戻されました。さらに2022(令和4)年3月のダイヤ改正では、亀岡~園部間が毎時2本から毎時1本に、胡麻~綾部間で毎時1本から2時間に1本に半減されるなど、大幅な減便がなされています。

 

2.現状とJR西日本の対策

 ですがここにきて、行楽客を中心に利用が回復したため、減便後の運行本数では捌ききれず、乗客が列車に乗れないレベルの混雑を見せるようになっていました。

 こうした現状を踏まえ、JR西日本では土休日を中心に京都~嵯峨嵐山間で臨時列車を増発する策を講じ、さらに紅葉シーズンは一部の特急列車を嵯峨嵐山駅に臨時停車させることとなりました。

 

3.要望を出した理由は?

 このように、JR西日本もいろいろと対策を講じていますが、京都府知事は要望書提出に動きました。その理由としては、これらの策があくまでも一時的な策にすぎないからでしょう。

 前述の通り、京都~嵯峨嵐山は連日激しく混雑しており、ホーム上の安全確保についても心配の声が出るほどです。それほどの状況であれば、行政として何かアクションを起こすのは筋だと考えます。

 また、前述の通り京都~嵯峨嵐山間以外の区間でも大幅な減便がなされました。嵯峨野線区間を含め、山陰本線は南北に長い京都府を縦貫するように通っており、京都府としては主要幹線ですが、複数区間で本数が半減し、かなり不便になりました。

 新型コロナの影響による乗客減少が減便の主な理由として挙げられていたので、利用が回復基調に転じていれば復便を求める、これも決しておかしなことではないと考えます。

 

4.今後の展望

 JR西日本は要望書について、「利用状況を見ながら対応したい」としています。ここからは私の推測ですが、来年3月のダイヤ改正で動きがあるとすれば京都~嵯峨嵐山間だと考えます。同区間は、土休日は連日のように臨時列車が走っているような状況なので、この臨時列車が次の改正で土休日の定期列車となる可能性は大いにあるとみています。

 反面、その他の区間については復便の可能性は残念ながら低いと考えられます。JR西日本が現状とっている対策は、京都~嵯峨嵐山間に特化しており、その他の減便区間については現状のダイヤで対応しています。

 他の地域にも言えることですが、人口減少などにより元から利用客も減っていると思われ、新型コロナを機に大幅な減便に踏み切った感もあります。

 とはいえ、本数半減は地域にとって大きな痛手であることは間違いありません。何とか2019年水準のダイヤに近い状態に戻ることを願います。

 

 

追記:JR西日本は嵯峨野線について、「これ以上の増発は車両の新造が必要」との見解を発表しました。大幅な減便を機に、車両や乗務員も減らしたと思われ、簡単に増発することが難しくなっているのかもしれません。