どうもどうも、けいです。

 

「高校では何をしていましたか?」という問いに対して、

「地域の魅力を発信する活動をしていました」と答える私。

…ウソじゃないんですが、事実ではあるんですが。

なんかウソを言ってる気分。

 

そんなことから始まったブログシリーズ第18弾。

本日はえちご押上ひすい海岸駅です。

 

ではでは、どうぞよろしくお願いします。

 

18-1.押上海岸駅 概要

えちご押上ひすい海岸駅は、新潟県糸魚川市にあるえちごトキめき鉄道の駅です。

日本海ひすいラインのみが乗り入れる単独駅となっています。

 

駅構造は対向式2面2線の駅ですが、西海踏切を挟んで千鳥配置になっています

ホーム番号は設定されていないため、この記事は便宜上「山側」「海側」とします。

山側ホームが上り糸魚川方面、海側ホームが下り能生、名立、直江津方面です。

 

後述しますが、えちご押上ひすい海岸駅は2021年に新設された、

えちごトキめき鉄道線内では最も新しい駅です

周辺の地名は「押上」というのですが、これでは東京都の押上駅と被るため、

区別するために要素を加えたところこのような収拾のつかない駅名になりました。

 

駅名の文字数は漢字表記で10文字、かな表記で14文字と長いため、

スタフや停車場接近標識には「押上海岸」と略して書かれます。

この記事でもいちいち正式名称で呼ぶとややこしいことになるため、

特別な場合を除き以降は「押上海岸」と表記することにします。

 

新設駅ではありますが、なんと接近メロディーの設定がされました

山側糸魚川方面ホームが「エリーゼのために」新音源、

海側直江津方面ホームが「かっこう」新音源です。

しかし収録となると裏で西海踏切の警報音がモロ被りするため、

気になる方は避けて別の駅で収録した方が賢明です。

 

開業と駅員キャラクター登場が被った関係か、

当駅には無人駅でありながら駅員キャラクターが存在します。

そこ、それじゃ無人駅じゃないとか言わない

名前は「三葉 葵(みつは あおい)」となっています。

やはりどこへ行っても見なくなった

 

18-2.押上海岸駅 駅設備

えちご押上ひすい海岸駅は地上駅です。

2021年に開業したため近年の輸送状況を反映した構造になっており、

ホーム長は45m、幅は2.5mしかありません

このため、20m級の車体なら2両編成までしか停車ができません。

一度413系が停車したことがありますが、当然ドアカットされました

 

踏切を挟んでいるためホームが離れていますが、

駅舎は山側の糸魚川方面ホームにのみ設置されています

つまり直江津方面へ行く人は猛暑だろうと極寒だろうと外で待たねばならない

 

ホームの配置は山側ホームが踏切より糸魚川方面に、

海側ホームは踏切より直江津方面に設置されており、

停車列車であっても無駄に踏切を閉めない工夫がされています。

逆にしてしまっていた際の道路状況は実に想像したくない

 

ホーム間を移動する方法は踏切を渡るしかないので、

西海踏切が事実上当駅の構内踏切を兼ねているともいえましょう。

 

山側ホームのみに設置されている駅舎の中は至って簡素な造りで、

ベンチがある以外は何もありません。

券売機もないので、列車乗車時は整理券を受け取る必要があります

また、駅員はおらず、その必要もないため駅事務室はありません。

ちなみに駅舎は水路の上にあるので、横から見ると宙に浮いています

 

駅舎のデザインは、かつて押上地区が漁師町だったことに因んで

船小屋をモチーフにしています。

駅の木材には糸魚川産のものが使用されているなど、

最近の新駅舎らしい特徴が窺えます。

 

トイレですが、改札外に1ヶ所あります

山側糸魚川方面ホームの踏切側にありますが、

直江津方面ホームの付近にはありません。ご注意を。

 

当駅と糸魚川駅の間は1.6kmしかなく、

えちごトキめき鉄道線内では最短の駅間です。

そのうえ当駅の糸魚川方180m地点には糸魚川駅の場内信号機が待ち構えており、

仮にこれが注意信号を現示していた日には

普通列車は発車後即45km/h制限を受けることになります。

押上海岸駅と糸魚川駅が近すぎるというより、

糸魚川駅の場内信号機が駅ホームから遠すぎるだけなのだが…

 

当駅付近の津波避難場所も記しておきます。

押上海岸駅は海抜7.7mで、駅周辺の浸水想定はありませんが、

標高がやや低い以上津波が到達することは否定しきれません

また、第1波の到達まで10分ないと思われるので、

駅周辺で大きな揺れを感じたら

津波警報を待たず直ちに以下の場所に避難してください

・糸魚川地域振興局(10.0m、3階建て)

・糸魚川建設会館(9.2m)

・糸魚川高等学校(7.8m)

・京ヶ峰区民運動広場(18.0m)

※詳しい場所は糸魚川市のハザードマップをご覧ください(カッコ内は海抜高度)

 

18-3.押上海岸駅 周辺と駅の歴史

えちご押上ひすい海岸駅の開業は2021年ですが、

駅設置の要望自体は1972年から出ていました。

ではなぜ半世紀近くも実現が遅れたのでしょうか?

 

そもそも押上地区に駅を設置する要望が出た理由が、

県立糸魚川高等学校にありました。

1972年に糸魚川高校が現在地に移転したため、

通学の便宜を図る目的で押上に駅を設置するよう要望したのです

 

しかし、国鉄にはそれに応えられない理由がありました。

それが当駅東方1.3km地点にある交直セクションです

 

交直セクションとは、交流と直流が接続する場所を指します

日本の鉄道で架線電流に用いられている電気にはいくつか種類があるのですが、

直接繋ぐと危険な場合もあります。

交流と直流も同じで、直接繋ぐと非常に危険であるため

(とある鉄道小説には「パーンと雷が落ちたようになる」とありました)、

わざとダミーの架線を挟んで接続しているのです

 

国鉄は高度経済成長期に全国の幹線を電化する工事を進めましたが、

都市圏は車両側のコストが安くなる直流で、

地方線区は設備側のコストが安くなる交流で、それぞれ電化しました。

 

北陸本線は主に交流で電化されたのですが、

ずっと先の長岡駅(正確には1つ前の宮内駅)で合流する上越線は直流電化。

ということは、どこかに交直接点を設置しなければなりません。

 

結局糸魚川まで交流電化、糸魚川~村上間が直流電化とされ、

糸魚川駅付近に交直セクションが設置されることになりました。

これより東に移してしまうと、電源周波数の問題で

交流60Hz、50Hz、直流と電化方式が複雑になってしまうのを嫌ったのです

(関東の電子レンジは関西で使えないと言われたこともあるかもしれませんが、

それはこの周波数が関係しています…交流は1秒間に何度か電流の向きが変わり、

その回数を表すのが「周波数」なのです)。

 

糸魚川以西ではダメだったのでしょうか?

これはいくつか理由がありますが、糸魚川~直江津間を直流にすると

電化完成が1970年頃と遅くなってしまうこと、

糸魚川駅構内を直流にした場合に対応できる交直両用電気機関車が当時まだなく、

下手をするとこの区間だけSLを使うという本末転倒な事態に陥ることなどで、

糸魚川~梶屋敷間にセクションを設置することになります

(後者に関連して、北陸本線関西側の交直接点であった米原~田村間に架線を張らず、

この区間はSLを使い続けるということを実際にしています)。

 

こうして交直セクションが糸魚川~梶屋敷間に設置されました。

交直セクションでは電車が電源を切り換える必要があり、

この間は架線給電も含め一切の電源供給がされなくなります

(さもないと異電源接続で電車がぶっ壊れます)。

 

電車は駅発車後一気に加速し、電源を切断して惰性でセクションを駆け抜けます

このため、ある程度の勢いをつけないと途中で失速してしまいます。

電気が流れていないために停止した場合の再加速もできなくなるので、

セクション内停車というのはそれだけで事故になります。

 

※実際にこのセクションでもトラブルが起きており、

2004年2月6日、寝台特急「トワイライトエクスプレス」が当セクションを通過中に

踏切に進入する自動車に気がついて緊急停止したのですが、

停止位置がよりによってセクション内であり、再加速ができなくなったため

救援のためにディーゼル機関車に出動要請をかける事態となりました

結局「トワイライトエクスプレス」は約1時間ここで立ち往生しています。

 

話を押上海岸駅に戻しましょう。

押上海岸駅は交直セクションに近く、

本来電車は勢いをつけて一気に駆け抜けなければならない区間です。

仮に押上地区周辺に駅を造って列車を停めてしまうと、

駅発車後に勢いが足りずセクションを通過できなくなるおそれがあります

このことから、押上地区への駅設置が実現できなかったのです。

 

しかし時が流れ2015年、北陸本線がえちごトキめき鉄道に転換されました。

えちごトキめき鉄道は交直セクションや輸送力を理由として、

北陸本線改め日本海ひすいラインの普通列車に気動車を採用します。

 

この気動車というものは、架線から電気を受け取って走るものではありません。

自動車と同じように、エンジンを回して走る列車です。

このため、電車なら本来惰行しなければいけないような場所で

エンジンをふかして加速しても構いませんし、

極端な話セクション内で停車しても何の問題もありません

踏切が無駄に閉まるとか他の列車の邪魔だとかいう問題はこの際置いておくとして

 

ですので、勢いが足りないかもしれないという懸念は打ち破れるのです

これをきっかけに一気に押上新駅の計画が進み、2019年に駅設置が認可。

2021年3月、ついに押上地区に「えちご押上ひすい海岸駅」が開業し、

半世紀にわたる駅設置運動は実を結んだのでした。

おしまい。

 

としたかったところなのですが、

筆者はこの理由に疑念の目を持たざるを得ません。

「交直セクションに向けた加速力が足りないから

えちご押上ひすい海岸駅は造れなかった」という理由は本当なのか?

というのが筆者の疑問です。

 

何がおかしいのでしょうか?

 

まず、押上海岸駅から交直セクションまでの距離が1300m。

電車はその直前に惰性に切り替えますので、加速猶予距離は800mくらいです。

確かに距離に余裕がないように見えます。

 

しかし、反対側の梶屋敷駅から見るとそうは言えなくなります。

梶屋敷駅からセクションまでの距離は、

実は押上海岸駅から交直セクションまでの距離とほとんど変わりません(1300m)。

セクション手前の惰行標識までの距離も800m程度と、

押上海岸駅からの距離とこちらもほぼ同じなのです。

 

何が言いたいのかというと、仮に押上海岸駅に停車した電車が

加速力不足でセクションを通過できない場合、

反対側の梶屋敷駅を発車した列車もセクションを通過できなくなるはずなのです

同じ距離なのですから、列車の挙動も大差はないはずなのです。

 

ついでに言うと、この周辺はほぼ平坦線です。

列車の加減速に大きく干渉するような勾配はほとんどありません。

 

また、七尾線の津幡~中津幡間や山陽本線の門司駅構内など、

さらに加速猶予距離がない中でも問題なく切換が行われている区間もあります

 

まぁ、筆者がいくら論じたところで

国鉄がどう考えていたのか断定できる材料はないのですが…

とりあえず併せてそこだけ、という感じで。

 

18-4.押上海岸駅周辺の施設・名所

・糸魚川海水浴場 / ヒスイ海岸

押上海岸駅北にある海岸で、駅名の由来にもなりました。

夏場は海水浴場として賑わうこの海岸は遠浅で良水質です。

しかし、ここではヒスイも見つかることがあり、侮れません。

 

ヒスイは姫川支流の小滝川ヒスイ峡から流れてくるのですが、

一部は糸魚川市の海岸に打ち上げられています

海岸のものは拾っていってもOKで、専門の方に石の鑑定を依頼することもできます。

もしかしたら価値の高い石が見つかるかも…?

 

糸魚川のヒスイは全国的にも知名度が高く、

日本全国の古代の遺跡から見つかるヒスイはここ糸魚川産だと考えられています

 

岡田依世子氏の作で「夏休みに、翡翠をさがした」という本もあります。

小学校高学年向けのものですが、一度読んでみると面白いかもしれません。

かく言う筆者は小学校で少し読んだきりで読みかけです…全部読めや

 

ちなみに糸魚川市などの案内では「糸魚川駅から電車で1駅!」と謳っているのに

アクセスには「糸魚川ICから車で8分」としか書いていません

 

押上海岸駅から徒歩7分です。

 

 

 

 

 

 

というわけでえちご押上ひすい海岸駅の紹介でした。次回は糸魚川駅です。