1958(昭和33)年にデビューした「こだま形」151系を源流とする国鉄ボンネット特急。その優美な姿は多くの人々に親しまれました。ボンネット形の先頭車は全国で6両が保存されていますが、その運転台の雰囲気を見てみようと、九州鉄道記念館(北九州市門司区)のクハ481-603を訪ねました。

 

 

九州鉄道記念館で展示されているクハ481-603。文字ヘッドマークは代替品が取り付けられていますが、往年の雄姿を保っています

 

 

 

クハ481-603は、グリーン車のクロ481-5として69年に登場。当初は東北特急の一員として「ひばり」などで活躍しました。東北新幹線開業後の83年に鹿児島車両所に転属、普通車に格下げされて95年まで特急「にちりん」「かもめ」などとして九州各地を走りました。九州鉄道記念館では2003年の開館時から展示されています。

 

 

クハ481-603の先頭部分。ボンネット形をサイドから眺めると、運転台が高い位置にあるのが分かります

 

 

 

クハ481-603の運転台は通常非公開ですが、10月7、8の両日開かれた「鉄道の祭典」で立ち入ることができました。

 

乗務員室ドアから入り、中央の階段を4段ほど上がると運転台があります。このアプローチはまるで隠れ家に入るようです。

 

 

乗務員室ドアから見る内部。中央の開口部に運転台に上がる階段があります

 

 

 

階段を上がったところに運転台があります。同じ485系でもボンネット形の階段は、貫通形より緩やかでアプローチしやすいようです

 

 

 

クハ481-603の運転台に上がった第一印象は思ったより広く、側面や後方にも窓があるため明るい雰囲気です。ただ、この日は友人と「乗務」しましたが、二人で同時にゴソゴソ見て回るほどの広さはありませんでした。

 

運転席に座ってみると見晴らしが良く、窓ガラスの位置も自然で、運転感覚がつかみやすそうでした(実際のところは分かりませんが)。

 

 

 

クハ481-603の運転席(写真上)と助士席側(同下)からの眺め。外観からイメージするとおり、見晴らしは良好です

 

 

 

ボンネット形の運転台は貫通形よりもゆとりを感じ、後方の通路天井上部にもスペースがあります。一方で夏は暑そうで、扇風機はありましたが労働環境としては快適でなかったかもしれません。

 

 

 

運転台後方のスペース。運転席側(写真上)は機器が設置されていますが、助士席側(同下)は比較的空いています

 

 

運転台から下の通路を見る。4段とはいえ高さを感じます

 

 

方向幕の対照表もありました。「有明・西鹿児島」「にちりん・下関」など、ここからも歴史を感じることができます

 

 

 

今回の運転台見学は、国鉄特急を見て育った私のような世代には夢のような時間で、子どもの頃あこがれた運転士さんの気分を少しだけ味わうことができました。

 

九州鉄道記念館では新型コロナウイルス禍で中止していたクハ481-603、581系の外観を復元したクハネ581-8、14系寝台客車のスハネフ14 11の客室公開を再開していて、国鉄時代を懐かしんだり体感することができます。昭和後期の鉄道史を彩る車両たちを今後も守って後世に伝えていってほしいものです。

 

 

 

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