JR東海・JR西日本・JR九州は17日、東海道・山陽・九州新幹線の車両に設置されている「喫煙ルーム」を、2024年春をもってすべて廃止することを発表しました。

https://jr-central.co.jp/news/release/_pdf/000042990.pdf

https://www.westjr.co.jp/press/article/items/231017_00_press_shinkansen.pdf

https://www.jrkyushu.co.jp/common/inc/news/newtopics/__icsFiles/afieldfile/2023/10/17/20231017_kyushu_kitsuen.pdf

 

1.概要

 東海道新幹線、山陽新幹線、九州新幹線を走る列車は、全車禁煙車となっています。ただし、東海道・山陽新幹線を走るN700系16両編成、山陽新幹線・九州新幹線を走る8両編成の列車(N700系・500系)には、喫煙ルームが設置されており、この場所に限っては喫煙が可能となっています。

 その喫煙ルームですが、来年春をもって全廃されることとなりました。JR各社は、「健康増進志向の拡大」「喫煙率の低下」を理由にあげています。

 なお、喫煙ルームの跡地には、災害等で長時間運転見合わせになった場合に備え、非常用飲料水を配備するということです。

 

2.背景

(1)健康増進志向の増大

 2003(平成15)年に施行された健康増進法では、国や地方公共団体が受動喫煙を防止する措置を講じることが初めて法律に明記されました。(出典:厚労省ホームページ e-ヘルスネット)

 

 

 また、2020(令和2)年に施行された「改正健康増進法」では、鉄道について「喫煙ルーム内以外での喫煙は禁止」と明記されています。(出典:厚労省ホームページ)

https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000340886.pdf

 

 禁煙の推進だけでなく、受動喫煙の防止について法律に明記されているあたりに、健康増進志向の高まりをみることができます。

 

(2)喫煙率の低下

 これは数字でその傾向はくっきりと表れています。(出典:健康・体力づくり事業財団ホームページ)

https://www.health-net.or.jp/tobacco/statistics/kokumin_kenkou_eiyou_report.html

 そもそも、喫煙ルームへの需要が減少傾向にある、という見方ができそうです。

 

(3)災害発生のリスクの高まり

 近年は災害の激甚化が問題となっています。鉄道会社も計画運休を行うなど対策を講じていますが、それでも今年のお盆のように、長時間運転見合わせが発生するリスクも高まっています。

 そのため、空いたスペースに非常用の飲料水を配備することで、長時間運転見合わせになってしまっても乗客を迅速に救済できる体制をとろうということでしょう。

 

(4)他の列車との整合性

 実は、東北・北海道・秋田・山形・上越・北陸新幹線及び西九州新幹線は全席禁煙で、喫煙ルームがありません。また、JR各線の在来線特急列車も同様です。

 さらに言えば、山陽新幹線や九州新幹線でも、6両編成の列車や700系(レールスター車両)には全席禁煙かつ喫煙ルームもありません。このように、既に列車内は全席禁煙、喫煙スペースなしというのが主流になっています。

 今回、喫煙ルームの全廃に踏み切ったのは、他の列車の設定と整合性をとるという目的もあるとみられます。

 

<まとめ>

 いかがでしたでしょうか。 新幹線車両は全席禁煙ですが、喫煙ルームが設置されている箇所の近くの座席は、喫煙ルームに出入りがあるたびに受動喫煙のリスクが伴うなど、問題があるのも事実です。そのため、喫煙ルームの全廃は、非喫煙者にとっては非常に朗報といえるでしょう。

 あとは、空いたスペースをどう活用するかというところですが、非常用飲料水の配置だけというのは少々もったいなくも感じます。もしかしたら今後、自動販売機やワーキングスペース、多目的スペースに使用されるという可能性もあります。

 禁煙志向や健康増進志向の流れを捉えつつ、時代の変化に伴う新たな需要にどのような対応がなされるのか、注目です。