「鉄道の日」に想う~鉄道趣味雑感 | 書斎の汽車・電車

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インドア派鉄道趣味人のブログです。
鉄道書、鉄道模型の話題等、つれづれに記していきます。

 将棋の藤井聡太八冠のプロフィールを見ると、趣味:鉄道とありました。

 なるほどこの21歳の青年が、恐らく現在の日本で一番有名な鉄道ファンなのでしょうね。

 

 藤井八冠の話題なら明るいニュースとして伝えられますが、こと鉄道趣味人全体となると、どうも雲行きが怪しくなってきます。特に一部の「撮り鉄」と称される人々の行状などは、眉を顰めざるを得ません。「撮り鉄」=フーリガンみたいに思っている方も多いようで、同じ趣味を持つ身としてはお恥ずかしい限りです。

 ただでさえ出不精の小生ですから、カメラを抱えて線路際へという機会は元々あまり多くはないのですが、最近では沿線の混乱ぶりを考えると、ますます足が遠のいてしまいます。先ごろ引退した西武鉄道の2000系2031Fなども、いちおうは写真を撮っておこうかなと思いましたが、結局は見送りました。まあ、地元の西武鉄道については、日頃から普段の姿を記録にとどめておけばそれでいいと考えています。

 

 思えば、鉄道趣味というものも、多様化しています。そんなことは今更お前に言われなくてもということになりましょうが、様々な鉄道趣味のジャンルの中でも、小生のような古くさい人間は、「車輛研究」こそが王道と(勝手に)思い込んでおります。(あくまでも個人の見解ですし、他のジャンルを貶めようという意図は全くありません)

 その「車輛研究」ですが、究極の目標はやはり、日本の鉄道に存在したすべての車輛の来歴を明らかにすることでしょう。先ごろまで放送されていた朝ドラ・『らんまん』の主人公が、日本の植物すべてを網羅した図鑑を作ろうと奮闘する姿というのは、鉄道趣味人としても共感できるところでありました。(ドラマのモデル・牧野富太郎にちなんだ記念乗車券を西武が出すとは思いませんでしたが)

 で、日本の鉄道車輛すべてを完全に網羅することは可能かといえば、たかだか151年の歴史とはいえ、少々難しいかもしれません。しかし、先達はすこしでもそれに近づけんとする成果を残して下さっています。

 まずは蒸機、それも国鉄ということで、臼井茂信氏の『国鉄蒸気機関車小史』(鉄道図書刊行会)です。昭和31(1956)年刊行といいますから、この分野では古典中の古典といえましょうが、国鉄に在籍した蒸気機関車の全形式を網羅した本というのは、本書が初めてと思われます。刊行時期が早いので、D61形はまだ存在しませんし、C58形の解説のところでは、後継機としてC63形の計画が進んでいる旨が記されるなど、国鉄蒸機がまだバリバリの現役であった時代の本でもあります。

 

 時代は進みまして、平成26(2014)年刊行、沖田祐作氏の手になる『機関車表』(ネコ・パブリッシング)です。国鉄だけでなく、私鉄や専用線も含めてすべての機関車(電気や内燃も)を網羅しようというとてつもない試みです。総頁数2万2000頁超ということで、もはや「紙の本」としては刊行できず、DVDブックという形での刊行となりました。

 この『機関車表』もまた、完璧な存在ではないでしょうが、それでも日本国内に存在した機関車の大半について、その来歴が明らかになりました。

 

 このように、やはり機関車というジャンルから車輛研究は進んでいるのですが、電車(とくに国鉄・JR)の研究も相当進んでいますし、鋼製客車や昭和以降の貨車などの研究も充実しているといえましょう。その点、明治・大正期の車輛や戦前の地方私鉄の車輛というのは、史料的な制約もあり、まだまだ未解明の事柄も多く、研究対象として魅力的です。もちろん、新事実の発掘というのは容易ではありませんが、公文書や古写真には、まだまだ未発見の「お宝」が眠っていると思います。若手のファンの方にもぜひ参入していただければと願っております。

 

 「鉄道の日」の随想、現実の鉄道を忘れて浮世離れしたお話に終始した感がありますが、鉄道趣味の来し方行く末を考えるというのも、「鉄道の日」に相応しいのではないかと勝手に思い込み、本日はこれにて失礼いたします。