JR各社は22日、特急料金制度の一つである「乗り継ぎ割引制度」を全廃することを発表しました。今回はこれについて考えてみます。
1.乗り継ぎ割引とは
乗り継ぎ割引とは、指定された新幹線駅で新幹線と在来線特急列車を乗り継ぐ場合、在来線特急・急行列車の特急(急行)料金が半額となる制度です。
例えば、東京~(新幹線)~名古屋~(在来線特急「ひだ」)~高山と乗り継いだ場合、在来線特急である「ひだ」号の特急料金が半額になる、というものです。
新幹線が開業する前は、長距離の在来線特急が走っていたわけですが、新幹線開業とともに新幹線と特急列車を乗り継ぐスタイルに変化し、特急料金が大幅に上がってしまうのを防ぐための救済措置として制度化されました。
しかし、2011(平成23)年に九州エリアではいち早くこの制度を廃止。今年4月からは岡山・新山口での乗り継ぎ割引も廃止となっており、乗り継ぎ割引制度自体が近々廃止されるのではないか?という話がまことしやかに出ていました。
結果として、来年3月16日をもって乗り継ぎ割引制度は廃止となりました。
2.JRの思惑
乗り継ぎ割引廃止の主な理由について、「利用状況や環境の変化」や「デジタル化の進展」などを挙げています。これをもとに、JRの思惑を探ってみたいと思います。
(1)インターネットできっぷを予約する人が増えた
これは一つ挙げられるでしょう。今では「えきねっと」や「エクスプレス予約」など、JRが運営する会員制予約サイトで、割安なきっぷが数多く販売されています。これらの割安なきっぷは、乗り継ぎ割引の対象外となっているため、そもそも乗り継ぎ割引を使う人も減っている、という見方もできます。
(2)というよりも、きっぷは窓口ではなくインターネットで購入してほしい
JRだけでなく、各鉄道事業者はインターネットによるきっぷの販売を強化しています。破格に安い商品を設定してでもインターネット予約に誘導したい要因としては、窓口と紙のきっぷを減らし、人件費や紙代といった経費を削減することで、より安定的な運営を目指したいという意図がうかがえます。
乗り継ぎ割引を適用させる場合、紙の新幹線特急券と紙の在来線特急券を同時購入するのが原則となっています。となると、乗り継ぎ割引制度は、インターネットでの販売促進の足かせになってしまいます。
(3)”裏技的”利用をなくしたい
実はこの乗り継ぎ割引制度、裏技的な利用ができてしまいます。例えば、新大阪から金沢に行く場合を考えてみましょう。
新大阪~(特急サンダーバード指定席)~金沢と普通に利用した場合、指定席特急料金は2,950円となります。しかし、これを新大阪~(東海道新幹線自由席)~京都~(特急サンダーバード指定席)~金沢と利用した場合、特急料金は
990円(新幹線自由席特急料金)+2,950÷2(特急サンダーバード指定席 乗継割引適用)=2,460円
となり、なんと新幹線を利用したほうがかえって特急料金はお得になってしまうのです
新幹線の自由席特急料金は、1区間(場所によって2区間)だけ利用する場合、特定特急料金という安い特急料金が設定されています。これと乗継割引制度を組み合わせることで、素直に特急で通し乗車するより新幹線に乗ったほうがお得という逆転現象が起こってしまうのです。
私を含め、乗継割引制度をこのような形で裏技利用したことがある人は少なくないと思われます。当然、こうしたことをJRが知らないわけはなく、こうした裏技的な利用を排除して収益を確保したいという狙いはあるでしょう。
4.乗継割引廃止に思うこと
私自身も、いずれ乗継割引は全廃されるだろうと考えていたので、驚きはありませんでした。既にエクスプレス予約などの会員制予約サイトできっぷを購入すると、低下と比較して乗継割引と同等、もしくはそれ以上に安くなるケースもありますし、コロナ禍を経て経営状況が苦しい今、収益確保を図るうえでは、乗継割引廃止は避けては通れないでしょう。
その方向性は支持するのですが、一つだけ改善されてほしいな、と思うことがあります。それは、新幹線や特急列車の割安きっぷが、新幹線駅どうし、特急停車駅どうしの移動でないと使いづらいということです。
例えば、千葉から仙台まで移動する場合、えきねっとトクだ値などで新幹線を安く手配できても、千葉~東京間のきっぷ及び運賃は別に用意しなければならず、お得額が減ってしまうという問題があります。また、購入回数も「千葉~東京」「東京~仙台」の2度にわたってしまい、煩わしさを感じるのも事実であり、それならば「千葉~仙台」の通しの乗車券と、「東京~仙台」の特急券を紙で一挙購入しようと考えたくもなってしまいます。
そうした煩雑さがなくなり、あらゆる移動に対応できるような予約システムが構築されれば、乗継割引が廃止されても利便性はさほど落ちないのではないか、と思います。