続・吾輩はヲタである

JR券をメインとしたきっぷのブログ

ピーク期のぞみ全車指定席化へ

 9月13日のJR東海と西日本のプレスリリースで今度の年末年始(12月28日から来年1月4日)の「のぞみ」の自由席の設定を取りやめ全車指定席化することを発表しました。今後ピーク期(GW・旧盆・年末年始)は同様に全車指定席化を実施するとし、対象日は曜日の並びによって都度決めるそうです。

 自由席特急券は通常通り発売します。ただし、期間中は自由席特急券では「のぞみ」の座席の利用はできず、空席を利用した場合は「のぞみ」指定席特急券との差額の支払いが必要になります。また、「のぞみ」以外の列車では通常通り自由席が設定されます。

 この話を聞いた第一印象は期間限定ながら20年前の全車指定席時代に戻ったなと。でも、20年前は「のぞみ」の本数はせいぜい1時間1~2本で、あくまで「ひかり」の補完でした。現在は「のぞみ」主体ダイヤで最大で1時間に12本も運行されているので、全車指定席化の影響は今度の年末年始の方が大きいです。

全車指定席時代の「のぞみ」の特急券

 こちらの特急券は「のぞみ」が全車指定席だった頃のものです。現在は自由席になっている2号車が指定されています。今度の年末年始は全車指定席化されるので1~3号車が指定された「のぞみ」の特急券が再登場することになります。

 全車指定席化の理由を「のぞみ」指定席の発売席数を増やすのと途中駅での自由席待ち客を減らしてホームの混雑を緩和し定時運行するためとしています。

GWのピーク期に遅延する山陽新幹線:岡山駅 2023/5/3

 ピーク期は事故や悪天候といった要因がなくてもホームや車内の混雑で乗り降りに時間がかかり、5分10分は当たり前のように遅れます。そして指定席に座っていても、席にあぶれた人でデッキだけでなく客室の通路まで人が溢れかえることがあります。車内販売はもちろん来れません(東海道新幹線の普通車からは11月から車内販売がなくなりますが)し、席を立ってトイレに行くのも一苦労です。

 なので、指定席派の私でも混雑は何とかして欲しいなと思っていますが、指定席供給数を増やすだけで座席の総供給数には変わりないので、混雑は多少マシになるかもしれませんが特効薬になるとも思えません。全車指定席化のアナウンスはあっても自由席特急券で突撃してくる人は相変わらずいて、通路やデッキの混雑はさほど変わらないと思います。それに自由席が設定される「ひかり」や「みずほ」「さくら」の方に混雑が集中する副作用も考えられます。

3連休前で混雑する「のぞみ」自由席車内 2022/9/16

 本気で混雑緩和をしたいならば自由席特急券では乗車できなくして、列車を指定し発売枚数に制限のある立席特急券の方がいいように思います。しかし、ピーク期に指定席も立席特急券も取れなかった人を救済する術がないというのは厳しすぎるのでそれも難しそうです。結局は特急料金をちょっといじくったところで日本人の休みの取り方が分散しない限り混雑緩和は難しいと感じます。

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 「のぞみ」の立席特急券は満席時に立席でもいいから乗りたいというニーズに応えるべく列車と号車を指定して2000年7月~2003年9月の3年ほど発売していました。価格は自由席特急券に「のぞみ」加算料金を加えたものです。2003年10月のダイヤ改正で「のぞみ」に自由席が設定されたことにより発売終了していました。


 プレスリリースには『3大ピーク期に「のぞみ」号の指定席を増やし、ご予約いただきやすくします』と記されており、さも利用客のことを考えた措置であるかのようなアピールが垣間見えますが、私の心が汚れているせいかそれを素直に受け取れず、お手軽な増収と「EX予約」会員の解約防止を狙ったのではないか思っています。

 自由席と繁忙期の「のぞみ」指定席とで主な区間の価格の比較をしてみます。

区間 全列車自由席
(通年)
のぞみ指定席
(繁忙期)
差額
東京~名古屋 4,180円 5,120円 940円
東京~新大阪 4,960円 6,010円  1,050円
東京~岡山 5,930円 7,190円  1,260円
東京~広島 6,500円 7,760円  1,260円
東京~博多 8,140円 9,510円  1,370円
名古屋~新大阪 2,530円 3,470円 940円
名古屋~広島 4,960円 6,110円  1,150円
名古屋~博多 6,500円 7,760円  1,260円
新大阪~広島 4,170円 5,110円 940円
新大阪~博多 4,960円 6,010円  1,050円
岡山~広島 2,530円 3,470円 940円
岡山~博多 4,620円 5,670円  1,050円
広島~博多 3,400円 4,340円 940円

 自由席はどの列車を利用しても通年同額ですが「のぞみ」の指定席だと繁忙期指定料金730円に加えて「のぞみ」の加算料金が上乗せされます。それがこの差額です。さらに最繁忙期にはもう200円上乗せされます。JRは何も汗をかかず「のぞみ」を全車指定席化するだけでこの差額分がまるまる増収になります。

 また、9月30日から「EX予約」の商品改定が実施されます。商品改定と言いつつ全体的な値上げやグリーンプログラムの終了が盛り込まれて既存の利用者にとってはほぼ改悪と言っていい内容です。利用頻度が低ければ年会費がかかる「EX予約」会員は解約を検討してもいいぐらいです。

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 一方で商品改定で乗車の1年前から予約できるようになります。一般発売が1ヶ月前であることと比べると大きなアドバンテージです。ピーク期に指定席を取らざるを得ない仕組みに変えて、1年前から予約できることを売りにして引き続き「EX予約」会員に踏み止まってもらおうという魂胆じゃないかと思っています。

 そう考えると一連の「EX予約」の改悪とピーク期の「のぞみ」全車指定席化は発表時期がズレただけで、もともとセットの施策だったのかもしれません。しばらく経ったら「今後は自由席に並ぶ必要がなくなります!」とか言って通年で「のぞみ」を全車指定席に戻すんじゃないかと勘ぐっています。こういう邪推は当たらないで欲しいですけどね。