もうすぐなくなるおろち号
中国山地の中を走る木次線。
島根県と広島県を結ぶこのローカル線に名物列車が走っています。
それは「奥出雲おろち号」。
DE10がトロッコ車両1両と控え車1両を牽引するトロッコ列車で、毎年春~秋に運行されています。
この奥出雲おろち号、残念ながら2023年の運行をもって引退することが決定しており、乗れるのもあと少し。
もともと定員が少なく、さらに旅行会社がツアー用に一部区間の指定席のみを大量に確保しているため、指定券を取るのは難しいのですが、廃止が決まってさらにその傾向が強まりました。
10時打ちしても取るのは難しいのだとか…
そんな奥出雲おろち号の中でも毎週日曜日の出雲市延長便はさらに人気が高く最難関。
できればこれに乗りたいのですが、 なかなか取れるものではありません。
ところが。
空きが出ないかずっとe5489で見ていたら、なんと日曜の便の空きを発見!
ということで運良く出雲市延長便に乗ることができるようになりました。
奥出雲おろち号に乗るためにはまず始発地の出雲市に行かないといけないのですが…
どう行こうかな…と考えて、こんなきっぷを購入してみました↓
福岡市内→新山口、新山口→博多間の連続乗車券。
博多から新幹線に乗って新山口、そこから山口線・山陰本線で木次線の起点の宍道、そこから備後落合まで行って芸備線に乗り換え。
芸備線で備中神代まで行き、伯備線・新幹線と乗り継いで博多に戻ってくる行程です。
このうち特に芸備線は輸送密度が極端に低く、廃線も取り沙汰されている路線。
今回は木次線・芸備線と中国地方のローカル線を堪能したいと思います。
のぞみ短距離利用
2022年8月20日。
博多駅から山陽新幹線で出発です。
乗車するのはのぞみ10号。
いつもより少し遅い便でスタートです。
813系を追い越していきます。
小倉に停車。
新関門トンネルを抜け、山口県を走っていきます。
…という間にもう降りる時間がやってきました。
8:28、新山口に到着です。
スーパーおきに乗車
博多を出てから34分でもう降りちゃいます。
こんなに早く降りてしまうのはちょっともったいない気がします(?)
新山口に来るのは10年ぶりくらい。
当時とは多少変わっている気がするような…
これから特急に長い時間乗るのでご飯を調達。
新幹線改札内のセブンイレブンとお土産物屋がくっついているお店でお弁当を購入。
改札を一旦抜け、途中下車してみます。
在来線との間はけっこう離れているみたいで、自由通路を歩いて在来線側の改札口へとやってきました。
在来線改札から再び中へ。
…自動改札ではないんですね。
ホームに降りていくと、ちょうど向こうのホームに白い車体に赤と青のラインが入った列車がやってきました。
これは105系K-02編成。
105系は通称「末期色」と呼ばれる黄色一色で塗られていますが、この編成のみ2022年7月9日より以前使われていた通称「ゆうパック」色に戻されています。
乗るのはこれではなく…
乗車するのはこちら。
特急スーパーおき2号米子行きです。
スーパーおきは新山口と米子・鳥取の間を山口線・山陰本線経由で結ぶ特急列車。
黄色い切妻先頭車が特徴のキハ187系で運行されます。
見た目に反して速く走れる振り子式車両です。
こちらは側面のロゴ。
島根県の花、牡丹がデザインされています。
多客期のためか、3両に増結。
編成中の先頭車の前照灯を点灯するのはJR西日本ならではですね。
こちらは車内。
暖かみの感じられる暖色系でまとめられた内装になっています。
ということで、今回はこのスーパーおきに乗って出雲市まで向かいたいと思います!
新山口から山陰側へ向かうのは初めて。
いったいどんな景色が広がるのでしょうか…
まずは島根を目指して
8:53、列車は新山口を発車しました。
まずは山口線を走っていきます。
山口線は新山口~益田間を結ぶ路線。
SLやまぐち号が途中の津和野まで走っており、以前乗車したことがあります。
しばらく山口市内を走り、まずは湯田温泉に停車しました。
防長四湯のひとつで、白狐が湯に浸かっていたところを発券したという開湯伝説があるそうです。
湯田温泉はSLやまぐち号の停車駅。
昔みたいな右書きの駅名標が設置されていました。
湯田温泉のお隣、山口に停車。
山口市の中心駅です。
といっても山口市の玄関口は新山口駅が担っており、ここ山口駅は県庁所在地の代表駅では最も乗降人数が少なく、また地方交通線上に存在する唯一の駅だったりします。
もちろん山口駅にも右書き看板。
山口を発車したところで、先ほど新山口で買った駅弁を食べることに。
「山口名物 ふく福飯」。
以前下関駅で販売され、ブルトレの機関車付け替えの際に乗客が買い求めていたという「ふく寿司」に似た形の箱に惹かれて選んでみました。
こちらが中身。
鯛の出汁で炊いたご飯の上には真ふぐのからあげと天ぷら。
付け合わせは大根の寒干しの漬物だそう。
それでは、いただきます。
駅弁なのでもちろん冷めていますが、冷めていてもしっかり味がついていて美味しいお弁当でした…!
※残念ながら「ふく福飯」も2022年中に販売終了したとの情報があります(詳細不明)
ふく福飯を食べながら見る山口線の景色は田畑が続く郊外の景色へ。
三谷に停車。
この駅はスーパーおきは停車するものの、SLやまぐち号は停車しないという逆転現象が起こる駅です。
ここで新山口行きスーパーおき1号と行き違い。
続いて徳佐に停車。
徳佐はりんごで有名な地。
車窓からもりんご園の姿を見ることができました。
徳佐を出ると列車は峠越え。
山口県から島根県に入ります。
山を越えると遠くに神社のようなものが見えました。
太皷谷稲成神社です。
日本五大稲荷の一つであり、毎年1月にはこの稲荷に参拝するために「SL津和野稲成号」が運行されるのだとか。
この神社が見えてくるとまもなく津和野。
列車はSLやまぐち号の終点・津和野に停車しました。
津和野は伝統的な建物が立ち並ぶ観光地。
以前SLやまぐち号で来たときはまちなかを散策した記憶があります。
9:59、津和野を発車。
ここからは未乗区間です。
発車するとすぐ左手にSLを転回するための転車台が現れました。
SL発着時は賑わうここも、今日はひっそりとしています。
津和野を出ても列車は山間部を走ります。
日原に停車。
国鉄岩日線(現・錦川鉄道錦川清流線)はこの駅まで伸びてくるはずでしたが建設は中止され、岩国からの陰陽連絡線の夢は絶たれました。
ちなみにここ日原は「星のふる里」と呼ばれています。
その由来はここから2kmくらい離れた場所にある日原天文台。
2008年の調査では波照間島に次いで日本で2番目に光害の影響が小さい場所だそうで、まさに「星のふる里」にぴったり。
そんな日原を発車し、列車は次の停車駅、益田に向かいます。
列車は高津川に沿って、ときどきは鉄橋でまたぎながら海へ向かって走っていきます。
やがて市街地へと入り、左から単線の線路が合流してくると、まもなく益田です。
10:31、列車は益田に到着。
山口線はここまで。
ここからは山陰本線に入っていきます。
益田を境に普通列車は系統分割されており、同じ山陰本線であっても益田以西は特に旅客が少ない区間として知られています。
2005年以前は特急「いそかぜ」が小倉~益田間で運行されていましたが、今は普通列車のみの運行。
本数の少なさも相まって山陰本線完乗のためのちょっとした壁として立ちはだかっています。
乗車しているスーパーおきはそれとは逆、東へと足を進めることとなります。
山の中を通り抜けてきた山口線とは異なる景色が楽しめそうですね。
日本海を見ながら
益田を発車した列車。さっそく絶景ポイントにやってきました!
日本海です!
今日はちょっと曇りがちで海の色も冴えませんが、日本海の(なぜか)物悲しいイメージ通りの景色が味わえます。
ちょっと寂しさを感じるこの海を見ていると旅情というものが湧き上がってくる気がしますね。
遠くにうっすら見えている島は高島。本土からは12km離れており、現在は無人島ですが、1975年までは有人島でした。
交通手段が船に頼る他なく、無線電話が整う1959年までは緊急の通信手段として狼煙が使われていたそうです。
しばらく進むと大きな白い塔が見えてきました。
中国電力三隅発電所です。
石炭火力発電を行っており、2013年までは最寄りの岡見駅までの専用線を通して、美祢~岡見間(美祢線・厚狭・山陽本線・新山口・山口線・益田・山陰本線経由)で美祢発は炭酸カルシウムを、岡見発はフライアッシュ(石炭灰)を輸送する貨物列車(通称・岡見貨物)が運行されていました。
現在も専用線の跡が残されているようです。
景色が街中に移り変わったところで吊り橋が見えてきました。
浜田マリン大橋です。
列車は浜田に到着。
以前は東京からの寝台特急出雲1号の終着駅だった駅です。
続いて停車したのは波子。
小さな駅ですが、島根県立しまね海洋館アクアスの開業に合わせて特急停車駅に格上げされました。
鉄道ファンの間では国鉄時代に数回運行された広島~当駅間の夜行臨時快速「波子ビーチ」(芸備線・三江線経由)のほうが有名かもしれません。
波子から3駅、江津に停車しました。
2018年3月31日までは三好までの108.1kmを結ぶ三江線の起点駅だった駅です。
一度は乗ってみたかったですね…
江津を発車すると車窓右側に三江線の跡が見えました。
2018年廃線と比較的新しいですが、注意深く見てないとわからないくらいになっていました…
三江線跡と分岐するとすぐ江の川を渡ります。
三江線はこの江の川に沿って走っていたことから、江の川鉄道という愛称で呼ばれていました。
江津から4駅、列車は温泉津を通過します。
温泉津と書いて「ゆのつ」。地味に難読駅名です。
その名の通り温泉街がある港町で、2005年に日本温泉協会が認定した最高評価を誇る食塩泉が湧出しています。
古くは石見銀山からの銀の積出港だったことから、世界遺産にも登録されているとか。
そんな温泉津を列車は素通りしていきました。
温泉津を過ぎると、車窓には再び海が広がりました。
鳴き砂で有名な琴ヶ浜もこの付近にあるそうです。
大田市に停車。
有名な世界遺産・石見銀山の玄関口です。
太田市を出ると、しばらく車窓には日本海が広がります。
ときどき断崖のような場所を通過するのでけっこう迫力がありますね~
しばらくすると海から離れ、内陸に入りました。
車窓にはやくも用381系が止まっている姿が見えます。
ここは後藤総合車両所出雲支所。
381系やサンライズ用285系のねぐらです。
この車両基地より東は電化区間。
列車は高架に上がりました。
高架上から見えるのは出雲市中心部の街並み。
12:10、列車は出雲市に到着しました。
列車自体は米子まで向かいますが、今回はここで下車します。
米子へ向かうスーパーおき2号を見送ってホームを後にしました。
★乗車データ
10A のぞみ10号 東京行き 博多(7:54)⑬→新山口(8:28) JR西日本 N700系 F19編成
3002D 特急スーパーおき2号 米子行き 新山口(8:53)→出雲市(12:10) キハ187系 キハ187-1006+キハ187-6+キハ187-11
※2022年8月20日乗車
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