皆さん,こんばんは。

本日は「東急田園都市線の歴史」第4編として,「半蔵門線押上延伸・東武線直通」,「東武線直通列車増便」について書いていきます。

 

①半蔵門線押上延伸・東武線直通

 (1)押上延伸計画の概要

  水天宮前から先の延伸計画は,次のように変遷しました。

 昭和47(1972)年3月1日

都市交通審議会答申第15号:深川扇橋まで延伸

 昭和60(1985)年7月11日

運輸政策審議会答申第7号:錦糸町・松戸方面に至る路線

 平成5(1993)年6月23日

 営団は水天宮前~押上間の第1種鉄道事業免許を取得。同年12月に建設工事に着手しました。

 免許申請時の開業予定は平成12(2000)年3月でしたが,次のような理由で平成15(2003)年3月に延期となりました。

・下町地区の超軟弱な地盤において,工事に難渋。

・押上地区の用地取得と地下空間利用に伴う他関連事業計画との協議・調整に時間を要した。

 水天宮前~押上間の途中駅は全て他社線との乗換駅となっています。

 南側から順に清澄白河,住吉,錦糸町です。清澄白河では都営大江戸線,住吉では都営新宿線,錦糸町ではJR総武線と乗り換えが出来ます。終点の押上では都営浅草線京成押上線に乗り換えられます。押上駅からは後述する東武伊勢崎線に入り,日光線の南栗橋まで相互直通運転が実施されることとなりました。

 (2)東武線直通の経緯

 東武が営団半蔵門線との直通を検討した理由は,次の通りです。

 ・昭和39(1964)年8月から営団日比谷線との相互直通運転を開始し,東武伊勢崎線の利便性が向上し,通勤・通学の旅客需要が増大。

 ・輸送力増強のため,北千住~北越谷間で順次,複々線化が進められてきたが,北千住駅の混雑は著明であった。そのため,同駅は3層化工事が実施された。

 ・半蔵門線直通を行えば,新たな都心直通ルートが生まれ,北千住駅の混雑緩和につながる。

 このような経緯があり,平成8(1996)年12月に曳舟~押上間の連絡線建設に着工し,東武線からの半蔵門線直通に向けて準備が始まりました。

 (3)東武線直通開始時の運行体制

 平成15(2003)年3月19日,営団半蔵門線の水天宮前~押上間延伸開業,東武伊勢崎線の曳舟~押上間連絡線開業により,東急田園都市線の中央林間駅から東武日光線の南栗橋駅まで98.6kmが結ばれることになりました。

 これに伴い,東急は田園都市線のダイヤ改正を実施。東武では伊勢崎線・日光線のダイヤ改正が実施されました。

 この延伸開業・直通開始に伴い,東急は「5000系」,営団は「08系」,東武は「30000系」を事前に導入しました。

 押上延伸・東武線直通開始時における東急田園都市線の運行体制は,次の通りです。

 〔平日〕

朝(上りラッシュ時) 2分10秒(28本/h〔東武線直通6本/hを含む〕)

昼(上り下り)     5分00秒(12本/h〔東武線直通3本/hを含む〕)

夕(下りラッシュ時) 3分20秒(18本/h〔東武線直通4本/hを含む〕)

 〔土休日〕

朝(上り下り) 5分00秒(12本/h〔東武線直通4本/hを含む〕)

昼(上り下り) 5分00秒(12本/h〔東武線直通3本/hを含む〕) 

夕(上り下り) 5分00秒(12本/h〔東武線直通4本/hを含む〕)

 東急では,この改正で急行列車の増便が実施されました。従来,田園都市線の急行列車は平日の日中時間帯,土休日は30分間隔(2本/h)でしたが,この改正で15分間隔(4本/h)になりました。普通列車も中央林間~渋谷間を通して7~8分間隔(8本/h)に増便されました。

 

東武動物公園駅を発車する東急5000系

地下鉄半蔵門線・東急田園都市線直通

準急 中央林間行き

 

長津田駅に入線する東京メトロ08系

急行 中央林間行き

 

東武動物公園駅を発車する東武30000系

地下鉄半蔵門線・東急田園都市線直通 

急行 中央林間行き

 

②東武線直通列車増便

 平成18(2006)年3月18日,東武線直通列車増便と直通運転区間の追加を伴うダイヤ改正が実施されました。

 この改正では,相互直通運転区間に東武伊勢崎線の「久喜」駅が追加されました。これにより,平日の日中時間帯で毎時12本のうち6本(南栗橋行き,久喜行き,各3本/h)が東武線直通列車として運行されることになりました。

 この改正では,東武で列車種別の改定が行われました。

 東武の半蔵門線直通列車は平成15年3月から「通勤準急」と「区間準急」でしたが,本改正から「急行」「準急」に改められました。これにより,東武では特別料金を必要とする優等列車は全て「特急」に統一されました。浅草駅を発着する伊勢崎線・日光線の料金不要な優等列車が「区間準急」「区間急行」,日光線・鬼怒川線系統は「快速」「区間快速」という形に変更されました。

 また,東武は半蔵門線直通用に「50050系」という新型車両を導入し,東急田園都市線の渋谷駅における混雑緩和を図ることになりました。

 これを受けて,半蔵門線直通で運用されていた30000系は順次,浅草発着列車(普通,区間準急,区間急行),伊勢崎線(久喜以北)・日光線(南栗橋以北)の普通列車へ運用が変わりました。

曳舟駅に入線する東武50050系

伊勢崎線  急行 久喜行き

 

東武動物公園駅に入線する東急8500系

(東急の車両としては珍しい青帯が巻かれている8637編成)

日光線 準急 南栗橋行き

                                  

【参考文献・資料】

金子元昭『営団地下鉄車両写真集』(2004年)

東武鉄道株式会社『東武鉄道百年史』(1998年)

大塚和之・諸河久『日本の私鉄⑧ 営団地下鉄』(1993年)

宮田道一・いのうえ・こーいち『日本の私鉄⑥ 東急』(1989年)

宮田道一『東急今昔物語』(2016年)

宮田道一『東急の駅 今昔・昭和の面影』(2008年)

宮田道一『東急電車物語』(1995年)

渡部史絵『首都東京 地下鉄の秘密を探る』(2015年)

高松良睛『東京の鉄道ネットワークはこうつくられた』(2015年)

 

【参照サイト】

『「古時刻表」ホームページ』(個人サイト)