「歴史は繰り返す」と言いますが、かつて国鉄時代にもその議論が交わされていたJR赤字ローカル線における「存続か否か」の問題。中には災害に見舞われて復旧することなく廃止になったケースもありますが、存続路線についても毎日空気を運んでいるだけで、沿線住民の反対をよそに、現実的な問題として経営への足枷になっている路線については、「廃止やむなし」の声も出ており、特にJR北海道とJR西日本でその動きが活発化しているようです。

 

以前もお伝えしたことがありましたが、「雨後の竹の子」の如く開通しまくった、閑散地域の赤字ローカル線は元を正せば国鉄時代、選挙の度に繰り返される政治家及びその候補者の「この地に汽車を走らせます」的公約が元凶。人っこ一人住んでいるかいないかという過疎地に汽車を走らせたところで、新幹線や山手線も羨む真っ黒字になるわけがないを承知の上で、「自身の当選」を最優先し、大言壮語で有権者を洗脳させ、大風呂敷を広げてまんまと当選して、当時の鉄道建設公団との癒着も手伝って、公約通り、開通させることになります。沿線住民の喜び様はハンパなく、「オラが街に汽車がやって来た」と汽車の物珍しさも手伝って最初のうちは乗車率もそこそこだったのですが、次第にメッキが剥がれると、乗ると言えば老人や朝夕の学生だけという有様で、赤字に赤字に赤字を重ね、政治(主に自民党ね)・鉄建主導で建設された地方のローカル線は国鉄の "お荷物" となり、貨物輸送とともに経営の妨げになって、墜ちるところまで墜ちていきました。

 

昭和40年代に入り、その中でもあらゆる手を打ってもV字回復の見込みがない、運営的・経営的にどうしようもない83の路線について見切りをつける、つまり廃止する方向でプロジェクトを立ち上げたのですが、地元の激しい反対に遭ったばかりでなく、ここでまた政治家が首を突っ込みぃの、口を挟みぃので、実際に廃止されたのは13路線(支線や一部廃止区間を含む)にとどまりました。

このプロジェクトは国鉄末期の昭和50年代後半に「日本国有鉄道経営再建特別措置法」と法整備されて再活動し、今度は規定(詳細は省略します)に満たないローカル線(特定地方交通線)は容赦なく廃止という手荒な手法で実施し、ある線は第三セクターで、ある線はバス転換でそれぞれ再出発を図ることとなります。それでも急激に乗車率が良くなるはずもなく、転換後に消滅した路線も少なくありません。

 

現在のJR赤字ローカル線は国鉄時代の "負の遺産" を引きずったものばかりで、中には観光路線に転じて一瞬だけ息を吹き返した路線もあるけど、やはり会社としては廃止したいのが本音といったところ。でも、第三セクター化にしても、バス転換にしても、昨今の人材不足で、あっさり切ったところで沿線住民の「生命線」保たれるのかが議論の中心になりそうです。

世が世であれば、千葉の小湊鐵道やいすみ鉄道のように「昭和ロマン」を感じさせる路線を再整備させるというのも選択肢にあるのかもしれませんが、「=増収益」にはよほどの企業努力をしなければ、カンフル剤にもなりません。

 

 

画像もまた、典型的なローカル線。九州の大隅線だそうです。

日南線の志布志駅と日豊本線の国分駅とを結ぶ、線名の通り、大隅半島の錦江湾沿いに敷かれていた路線です。

大隅線もまた、昭和40年代の「赤字83線」に選ばれまして、さらに昭和50年代の「特定地方交通線(第2次)」にも選ばれた "裏エリート" 路線だったわけですが、民営化寸前の昭和62年3月14日に廃止されました。志布志駅で連絡して都城駅まで結んでいた志布志線も同年3月28日に廃止されています。

 

国鉄ローカル線では至極普通の光景だった、キハ10系とキハ20系の混結編成。でも、キハ10系にとっては再末期の姿です。

顔つきこそ、後続のキハ20系に似ていますが、キハ10系とキハ20系とでは車格が全然違うのがお判り(お解り)いただけるかと思います。

キハ10系ファミリーは新製車は元より、改造車を含めるとそのバリエーションは天文学的に拡がり、その出自や詳細が判る人は皆無だと言われています。改造車はとにかく "魔改造" 、 "痛車" が多い。

 

ところでこの画像、撮影日は昭和58年7月と記されていましたが、キハ11 43の廃車が昭和55年3月26日なので、撮影日と辻褄が合いません。もしかすると西暦と元号とごっちゃになっていませんかねぇ~? 昭和53年(1978)と考えると喉の閊えが取れるんですけどね。

ただ、キハ11 43の最終配置は確かに志布志機関区(鹿シシ)でした。

 

この組み合わせは近年だと茨城交通(→ひたちなか海浜鉄道)で見られたと思いますが、縁がなくても郷愁は感じます。


 

 

【画像提供】

い様

【参考文献・引用】

鉄道ピクトリアルNo.980 (電気車研究会社 刊)

日本鉄道旅行地図帳第12号「九州・沖縄」 (新潮社 刊)

ウィキペディア(大隅線、志布志線、赤字83線、特定地方交通線)