平行普通列車

常磐線と新京成に魅せられた者のブログです

千葉県が国に要望した成田空港の鉄道アクセス向上案の現況を見る

京成スカイアクセス成田湯川-成田空港と、JR成田線成田-成田空港との複線効果の違いは?

2023年7月12日付けの乗りものニュース「拡張する成田空港『鉄道アクセス強化を』千葉県が要望 凍結状態の『壮大な地下鉄構想』動かすか」を見ました。

千葉県が国に対し、成田空港の鉄道アクセスの充実・向上のための要望をまとめた内容です。

成田空港で今後、C滑走路新設やB滑走路延伸などにより、年間発着回数を30万回から50万回に引き上げる計画に伴い、成田空港利用者の増加が見込まれることによるものです。

今回は、千葉県が鉄道の空港輸送力増強を求める中で、現状を見てみたいと思います。

 

京成線の輸送力増強について

京成成田空港線成田スカイアクセス線成田湯川-成田空港の複線化は、現在の単線では線路容量が不足しており、根古屋信号場での対向列車通過待ち解消による所要時間短縮に寄与することから、十分理解できるところです。

成田湯川駅及び同駅と空港第2ビル駅間にある根古屋信号場では、単線の影響による列車退避が常態化しており、複線化による時間短縮効果が期待されます。

 

気になるのは以下の点です。

一つは、「スカイライナー」の一部を青砥と新鎌ヶ谷停車にした背景です。

従来、青砥と新鎌ケ谷から成田空港へは料金不要特急や、「アクセス特急」利用を促すことで京成側は割り切っていました。

2019年10月26日から「スカイライナー」は、それまでの40分間隔から終日20分間隔運転へと一挙に増強されました。

2020年4月11日から「スカイライナー」の一部列車の青砥への暫定停車、2022年2月26日からの正式停車に続いて、2022年11月26日からは新鎌ヶ谷も追加されました。

 

青砥停車については、京成押上線、都営浅草線からの乗り換え客の利便を図る趣旨もありましたが、新鎌ヶ谷停車の場合は実態として「スカイライナー」の乗車実績、乗車率向上の意味合いもあるかと思われました。

現状の「スカイライナー」の利用状況の中で、成田空港輸送充実により「スカイライナー」の利用も比例して伸びていくでしょうか。

「スカイライナー」利用が伸びた場合、これ以上の増発は困難なので8両編成の9両化、10両化増結はあるでしょうか。

 

「スカイライナー」による所要時間短縮と、青砥、新鎌ヶ谷停車とを両立するには、北総線京成高砂-印旛日本医大の速度向上も望まれますが、京成本線日暮里-青砥間の先行列車追い抜き可能駅が千住大橋しかないことがネックです。

堀切菖蒲園新三河島への通過線設置が望まれます。

 

二点目として、羽田空港-成田空港の「アクセス特急」(京急線内は「エアポート快特」)の40分間隔を20分間隔にすることが要件となります。

現在の「アクセス特急」40分間隔は、羽田空港-成田空港の直通需要の結果か、成田湯川-成田空港の単線事情か、「スカイライナー」の20分間隔化により増発困難のためか、これらが絡み合っていると想定されます。

いずれにしても全線複線化を前提に、「スカイライナー」の編成増強と「アクセス特急」の終日20分間隔運転が望まれるところです。

 

JR成田線(成田-成田空港)の輸送力増強について

京成成田スカイアクセス線と類似しますが、JR成田線の場合は成田-堀之内信号場-成田空港の複線化による時間短縮と、「成田エクスプレス」の終日毎時2往復化が先決です。

既に整備されている15両編成ホームを活用し、「成田エクスプレス」の6両単位の編成を7両化し、東京-成田空港を14両編成化することです。

東京-千葉-佐倉間の総武線特急「しおさい」の本数は限られているほか、佐原発着特急も全廃されている分、総武快速線東京-千葉-成田の線路容量には余裕が生まれています。

成田空港輸送増強には、東京折り返しの「成田エクスプレス」を新たに追加しての毎時3往復設定もできると考えます。

 

一方、東京-成田空港の直通快速は2023年3月ダイヤ改正から本数が減り、5往復が千葉-成田空港の各駅停車に短縮されています。

現状を見る限り、JRの成田空港輸送は「成田エクスプレス」に集中させる印象があります。

成田空港発着の快速が、千葉止まりの普通列車5往復の中で、一挙に毎時3往復、全列車15両編成まで増強するには相当の飛躍があります。

成田エクスプレス」は高速運転、時間短縮の気合いよりも東京、新宿、横浜発着という「スカイライナー」と「アクセス特急」にはできない利点でマイペースに進む印象を受けます。

ましてや20分間隔、15両編成の快速を設定するとは感じられず、成田-成田空港の複線化効果は半分しか発揮されないように感じますが、うがった見方でしょうか。

 

都心直結線について

都心直結線は都営浅草線とは別に、押上から東京駅付近を経由し、泉岳寺に至る大深度地下鉄計画です。

東京-成田空港は京成押上線押上-京成高砂区間が6.9kmと短いため、時間短縮効果は大きいと思われます。

羽田空港-成田空港の空港間輸送需要はどの程度か、需要があるなら高速バスから転移が見込めるかどうかです。

また、現在の「スカイライナー」車両では地下線走行ができないため、新たな車両の新製が伴います。

京成側は、日暮里と京成上野からの現「スカイライナー」と両立できるのでしょうか。

青砥で5両ずつに分割して、日暮里側と都心直結線と狂直通の両立化を図るのでしょうか。

それとも日暮里側、都心直結線側の交互運転、両者40分間隔化、青砥-成田空港は20分間隔化にするのでしょうか。

少なくとも都心直結線ができたからといって、それを機に日暮里側は「アクセス特急」だけという割り切りはできないと思われます。

 

一方、京急側では都心直結線経由の有料特急をどのように受け止め、品川-京急蒲田の線路容量に対応するか、「エアポート快特」(「アクセス特急」)の20分間隔化と両立するかなど、京急との調整にも課題があります。

 

東京-羽田空港間については、JR東日本羽田空港アクセス線建設を決定しており、東京-羽田空港に限っての利用は見込めないと思われます。

また、東京-成田空港間については「成田エクスプレス」の牙城に食い込めるかどうかですが、北総線側の京成高砂-印旛日本医大の最高速度を130km/h以上に向上するのは難しそうです。

 

一方、東京都で検討中の深度化路線(羽田空港アクセス線蒲蒲線有楽町線延伸、大江戸線延伸、多摩都市モノレール延伸)に都心直結線は入っていないのが気になります。

さらに、りんかい線建設、つくばエクスプレス東京延伸、両線の乗り入れの話題もあります。

東京都から見ると都心直結線は対千葉県、対成田空港の話であって、東京都内で完結する路線優先、成田空港の話は二の次の空気を感じます。

東京-羽田空港は都内完結の話ですが、JR東日本の空港アクセス線が具現化しており、都心直結線の実現には東京都の理解が求められます。

 

鉄道整備に順序あり

総合すると、京成スカイアクセス成田湯川-成田空港の複線化が第一です。

その次にJR成田線の複線化があり、東京都と協議の上で都心直結線整備の話に進むのが順序と考えます。

 

(※乗りものニュース 2023年7月12日「拡張する成田空港『鉄道アクセス強化を』千葉県が要望 凍結状態の『壮大な地下鉄構想』動かすか」を参考にさせていただきました。)