↑前回からつづく↑

 

札幌から789系「ライラック」号に乗車し、旭川駅前のホテルで一夜を過ごした管理人

年越し北海道旅行も3日目を迎え、本日で2021年も終了となる本日は、まず旭川駅から「オホーツク」2号に乗り込み、札幌駅で小休止してから「おおぞら」9号で帯広駅まで向かう予定です

 

 

ホテルの自室のカーテンを開けると、旭川の街並みは一面の銀世界でした

 

 

それでは、旭川駅から旅を再開することにしましょう

 

 

乗車路線:函館本線

乗車区間:旭川0947発→札幌1119着

乗車列車:オホーツク2号(72D)

乗車車両:札ナホ183系気動車キハ182-505(2号車6番A席)

座席種別:グリーン車指定席

 

 

 

旭川のホームに滑り込んでくる「オホーツク」号の写真があればよかったのですが、生憎ながら下手くそな動画しか撮れていないので、昨晩撮っておいた「大雪」の写真を載せておきます

 

 

「オホーツク」の走行区間を短縮する形で「大雪」が登場したのが2017年3月のダイヤ改正時ですが、管理人が旭川を訪れるのは2015年6月以来、実に6年半ぶりのことなので、「大雪」のヘッドマークを直接この目で見るのは初めてなのです

 

 

もともと「大雪」の愛称は石北本線を走る急行列車に用いられてましたが、特急格上げで徐々にその本数を減らしていき、最後まで残った夜行便も1992年3月のダイヤ改正時に「オホーツク」9・10号へと変更され、「大雪」の愛称は消滅しました

 

それから四半世紀の時を経て「大雪」は復活を遂げたわけですが、用意されたヘッドマークは急行時代と変わらない凛とした大雪山系をモチーフにしたものでした

 

 

HET色のキハ183系といえば、まだまだ「北斗」のイメージが強いのですが、同列車からは2018年3月改正で撤退し、余剰となった車両が「オホーツク」「大雪」へ投入されています

 

 

これまでキハ183系へは2回乗車したことがありますが、キロハ182形を含めてグリーン車は未乗車でした

ということで、札幌駅まで約1時間半となりますが、人生初のハイデッカーグリーン車の旅を楽しみたいと思います

 

▲/▲▲札幌駅到着後に撮影

 

 

 

それではさっそくキロ182形500番台車の車内を紹介していきましょう

この車両の特徴は、何と言っても天井まで回り込んだ大きな側窓から北海道の雄大な車窓を堪能できることにあります

 

メジャーを持ち込んできちんと計測したわけではないのですが、眺望性と開放感でこれと勝負できる車両はJR東日本の251系「スーパービュー踊り子」か、「トワイライトエクスプレス」の”サロン・デュ・ノール”くらいかと思われます

 

 

グレー系の化粧板だった妻壁は、座席の交換に合わせて明るい木目調に交換されています

LEDによる情報案内板のような気の利いたものはなく、昔ながらのサボで号車や座席種別を乗客に伝えています

 

 

座席そのものは、昨日乗車した789系「ライラック」と同じものです

789系がブルー系のシートモケットなのに対して、こちらはブラウン系のシートモケットとなっており、同じ座席ながらも、こちらの方がアッパークラスらしい重厚感に溢れています

 

フットレストやアームレストに見覚えのあるパーツが見え隠れしますが、座り心地そのものは「オホーツク」のように5時間超えの乗車にも耐えうる上々の出来栄えで、文句の付けどころがない完成度の高いものです

特に、バックレストの背中を受け止める部分…ちょうどモケットの色が変わっている部分…が柔らかくなっていて、着座時に感動を覚えるほどです

 

強いて欠点らしい欠点を挙げるとすれば、プライバシー性を考慮して大きく張り出したヘッドレストが車窓を遮ってしまうことでしょうか?

ヘッドレストピローに頭を預けた状態で、視線を窓の方へ向けると、否応なく視界にヘッドレストの張り出しが飛び込んでくるんですよね

 


キハ261系の7次車に搭載されている座席では、ヘッドレスト部分に面一で埋め込まれている読書灯ですが、こちらの座席ではぴょこんとヘッドレストから飛び出すようにして設置されています

 

まるで後付けされたような外観ですが、登場時からこんな余所余所しい見た目をしています

もしかしたら、ひょっとしてこれは青函連絡船に搭載されていたグリーン席へのオマージュなのではないだろうかと勘ぐってしまうわけです

 

さすがにバカバカしい妄想かもしれませんが、摩周丸のグリーン席と読書灯周りの佇まいが近似しているんですよね

 

【参考】青函連絡船摩周丸のグリーン席

 

 

話が横道に逸れてしまいましたが、ここでキハ183系へ話を戻して、引き続き座席紹介を続けます

上の写真は、座席のリクライニングを目一杯倒した状態で撮影しており、写真では伝わりにくいですが、体感ではかなり傾いています

 

付帯設備としては、先述した読書灯と背面テーブル、ドリンクホルダー、フットレストが設置されていますが、かつてキハ281系などで見られたオーディオユニットはありません

いつでも自分のスマホで好きな音楽を聴ける時代なので、これは”退化”ではなく、時流を捉えた”変化”といえるでしょう

 

 

背面テーブルは、N700系やE5系など近年の新幹線車両のグリーン車でよく見かける前後にスライドするギミックが仕込まれたものです

 

 

アームレスト内にテーブルは収納されておらず、その代わりにドリンクホルダーがあります

ドリンクホルダーは、JR西日本が手掛けたN700系S・R編成の指定席やE/W7のグリーン車で見かけるのと同じパーツですね

 

 

グリーン車では各座席に1個ずつコンセントが設置されており、長距離・長時間乗車が多いであろう北海道において、普通車に対するアドバンテージが確保されています

一通り座席の周りの紹介が済んだところで、今度はデッキへ出てみましょう

 

 

本日、乗車しているキロ182‐505は1986年に富士重工で製造された車両です

 

最後まで現役で残っていたキハ183系は、国鉄末期の1986年に登場したN183系とJR移行後に製造されたNN183系と呼ばれるグループで、スラントノーズ車を含む初期車は2017年までに全て廃車となりました

国鉄の置き土産ともいえるN183系ですが、いま乗っているハイデッカーグリーン車に象徴されるように、接客設備は大きく改善されました

 

搭載するエンジンについては、キハ183系0番台と同じく排気量30L/V型12気筒のDML30系が搭載されていますが、500番台では予燃焼室から直噴式に改良されたDML30HSJが搭載されています

NN183系では、さらに出力の向上を図ったDML30HZが搭載されましたが、2013年7月に発生した出火事故を受けて、キハ261系と同じN-DMF13HZKへ換装されました

 

しかしながら、500番台の搭載するDML30HSJは換装工事の対象とはならず、いまもキハ181系譲りのV型12気筒サウンドを楽しめるというわけです

「オホーツク」「大雪」で運用されるキロ182形は全部で5両ありますが、キロ182-504と505の2両だけが該当します

 

そして、この日の管理人は見事に2/5の確率でDML30HSJ搭載車両を引き当てたわけです

どうやら、この旅行の運をここで全て使い果たしてしまったらしく、翌日新千歳空港で災難に見舞われることになります

 

ところで、これまで管理人はDML30系エンジンのことをずっと水平対向12気筒だと思い込んでいたのですが、実際はバンク角180°のV型12気筒エンジンなんですね

ただ、シリンダーが水平方向へ動くことには変わりないので、ノッチを入れた時に車体がぐらりと横方向へ動く挙動は、他の直列エンジン搭載車では決して体感できません

 

深川駅を発車してから加速する様子をデッキのエンジン直上で車窓と共に収録しましたので、是非イヤホンでDML30系の12気筒サウンドをお楽しみください

 

 

 

 

キハ183系では、当時の特急型車両としては珍しく、食堂車が製造されませんでした

 

とはいえ、自ずと長距離・長時間の移動が多い道内を走る優等列車において、供食設備が皆無なのはさすがにマズいと当時の国鉄関係者は踏んだのか、キロ182形の車端部にそこそこの面積を割いて、簡易的な調理スペースを設けた車販準備室があります

 

我々の想像する車販準備室は、車販のカートを収納したり、飲食物を保管しておくケースがあったりするような簡素なイメージですが、この車両では炊飯器もあって、炊き立てホカホカの白米を乗客に提供できたそうです

 

 

そして、ここへ飲食物を買いに来た利用客が待ち時間に座れるように壁にはジャンプシートがあります

ここだけ切り取ると、ブルトレの通路にあったイスのようで、ついついノスタルジックな感情で心が満たされます

 

 

車販準備室と反対側にあるデッキには、客室へと続くなだらかなスロープの脇にトイレと洗面所が配されています

これまで251系やKTR001系など、客室がハイデッカー構造になっている車両にはいくつか乗ってきましたが、客室へアプローチするスロープの横にトイレがある車両は初めて見ました

 

 

 

洗面台は自動水栓ではなく、レバーを捻ると温水と冷水が分かれて出てくるタイプです

寒冷地を走る車両だからなのか、洗面所にはご覧のようにヒーターが剝き出しで設置されていますが、14系や24系の洗面所にも同じようなヒーターがありましたよね

 

先述したようにN183系と呼ばれるグループが登場したのは1986年のことで、JR東海が生み出したキハ85系の量産先行車と僅か2年の違いしかありませんが、そこかしこに国鉄っぽさが漂います

 

 

この流れでいくとトイレも国鉄テイスト全開かと思いきや、こちらはきちんと改装の手が入っており、JR世代の車両と比べても古臭さは感じません

 

 

今度は普通車の方へお邪魔してみましょう

キハ183系はJR北海道の特急車両としては、リゾート車両群を除くと、唯一前面展望が可能でした

 

かつては、キハ281系なんかでも運転席下の貫通扉から前面展望を眺めることができましたが、踏切事故の影響で現在は立ち入り禁止になっています

 

 

 

キハ183系でも普通車の座席の多くは”グレードアップ指定席”へ改座されていますが、一部の車両にR55型座席も残存しています

シートモケットはかつての僚友であるキハ281系と同じもので、極力「北斗」系統でイメージを揃えるようにしています

 

 

 

そしてこちらは普通車の洗面台です

グリーン車は手動水栓なのに、こちらは自動水栓で、しかも照明だって何だかゴージャスな雰囲気です

 

 

DML30系の図太い12気筒サウンドに耳を傾けたり、キロ182形のデッキでブルトレ気分に浸ったりしていたら、あっという間に札幌駅へ到着しました

キハ183系の引退と共に、DML30系エンジンを搭載した車両は国内から消滅し、これでキハ181系の幻影をキハ183系に重ね合わせることも叶わなくなりました

 

引退前にもう1回ハイデッカーグリーン車に乗りたくなった管理人は、2022年12月に再び札幌駅を訪れたわけですが、上の号車札の写真はその時に撮影したものです

既に「オホーツク」「大雪」へキハ283系が投入されると、モノクラス化されることが発表されていたので、グリーン車の号車案内を記録しておいたのです

 

知っての通り、「オホーツク」は「宗谷」と並んで、道内でも屈指の長時間乗車を強いられる列車であり、今回のモノクラス化は疑問に感じざるを得ません

キロ282形の老朽化が他車よりも深刻だったのかもしれませんが、半室でもいいので「オホーツク」「大雪」にグリーン車の再設定を望みたいところです

 

 

ところで、「オホーツク」のヘッドマークは22年1月29日から国鉄時代のデザインが復活したのですが、21年の年末に訪れた時は変更前でした

22年の年末に渡道した時は、オホーツク海に浮かぶ流氷と能取岬をモチーフにしたヘッドマークを確とファインダーに収めることができました

 

札幌駅~網走駅間の全区間に乗車することは遂に叶いませんでしたが、DML30系エンジンの咆哮を堪能できたのでよしとしましょう

この後、札幌駅で小休止した後、「おおぞら」9号で帯広駅まで向かいます

 

 

年越し北海道旅行記2021-2022⑧~キハ283系「おおぞら」号グリーン車乗車記~へつづく