大阪メトロで用いられる美しい「和色名」を紹介します

大阪メトロで用いられる美しい「和色名」を紹介します

和色」という概念をご存知でしょうか。

現在の日本では一般的に「ライトブルー」などの横文字か、「青」などの単純な色名が用いられることが多いですが、これ以外に古くから日本人独特の感性で名前がつけられているケースがあります。

これらを「和色(伝統色)」と呼びます。

意外にも大阪メトロではこの和色で指定されているケースが多く、あまり他の鉄道事業者では見られない傾向です。

ということで今回は、大阪メトロで用いられる美しい和の色名をご紹介しましょう。

 

 

御堂筋線:臙脂色

臙脂(えんじ)」とは、黒みがかかった深く、鮮やかな赤色のことを指します。

本来はもう少し紅色っぽい色(#9F263Dあたり)になりますが、御堂筋線で使われる臙脂色は赤みが強いものが用いられます。HTMLカラーコードは「#6B1015」あたり。

臙脂の名は、紀元前2世紀頃に中国へ伝わった染料の色に由来します。中国の紅花の一大産地であった「燕支山(えんじさん)」から来ているという説があります。

 

 

谷町線:京紫色

京紫」とは読んで字の如く、京都で染めた紫色を指します。厳密には赤みがかかった紫色のことです。

本来の紫色はこの色ですが、江戸時代に南部紫、鹿角紫、江戸紫…など紫色に地名を冠したバリエーションが出てきたことで、原色であるこの色も「京」を付けた「京紫」と呼ばれるようになったのだとか。

紫色は染めるための労力が莫大で、それが故に近代まで高貴とされる僧侶などしか着用できませんでした。

谷町線は沿線に寺院が多く、それらの僧侶が着用していた袈裟の色から引用したという説が定着しています。

 

四つ橋線:縹色

縹(はなだ)」とは、本来薄い水色・藍色のことを指す色の名前です。

ツユクサの花から抽出される汁を用いて染められた色のことで、古来中国語で青色のことを「縹」と記したことが由来なのだそうです。

ポケモンで登場する街「ハナダシティ」もここから採られています。

ただし、四つ橋線で用いられるカラーは淡めの縹色というよりかは、割としっかりしたブルーが用いられています。

 

 

千日前線:紅梅色

紅梅(こうばい)」とは梅の品種名のこと。

文字通り紅色系の花を咲かせる梅のことで、この他白梅があります。

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やや薄めの桃色のことを指す用語とは裏腹に、四つ橋線と同じく千日前線では濃いめのピンクが採用されています。

ただし、先代車両である50系では現在よりも薄めのピンク色で彩色されており、文字通り「紅梅色」に近いカラーリングでした。

 

 

長堀鶴見緑地線:萌黄色

萌黄(もえぎ)」は、芽吹いたばかりの若葉のような、鮮やかな黄緑色のことを指します。

「もえぎ」には”萌黄”と”萌葱”の2つの名前がありますが、「萌葱」の方がやや濃い・暗い目の緑色として用いられます。

1989年の花博にあわせて7番目の地下鉄として開業した鶴見緑地線は、まさにこの萌黄にぴったりなイメージですね。

ただ、路線図では萌黄色で案内されているものの、実際の車体に使われる色はやや黄色に近いカラーリングです。

 

今里筋線:柑子色

柑子(こうじ)」は、みかんの品種の名称です。

酸味の強いみかんである「ウスカワミカン」のことを指します。

今里筋線で用いられる80系では、上半分の色がこの「柑子色」に近いカラーリングとなっており、下半分についてはもう少し濃い目のオレンジ色が用いられています。

 

ニュートラム:セルリアンブルー

何故かニュートラムだけ横文字。

ラテン語で空色を表す「caelun(カエルム)」を語源として英語に転化した用語です。

水色に少しだけ緑を足したようなカラーリングとなっています。

ニュートラム 新型 青色

実際の車両では200系01編成にこのカラーが用いられていますが、現行方針ではカラーがバラッバラなので、車両で見る機会は少なくなっています。

開業時唯一繋がっている地下鉄だった四つ橋線と関連させる色として、駅サインなどではこの色が一貫して用いられています。

 

中央線と堺筋線は…

この他、中央線は「緑色」堺筋線は「茶色」という極めてオーソドックスな名前でした。

阪急との繋がりをイメージして付けた堺筋線はともかく、中央線は例えば「常盤色」とかだったら良かったんですが…

 

他都市は?

ちなみに、この記事を書くに当たって他の鉄道ではどうなのかなと調べてみたのですが、意外にも色名が和名と指定されている路線はあまりありませんでした。

数少ない中から、和色名が採用されている路線をついでに紹介しておきます。

名古屋の場合

東山線は「種色」、名城線・名港線は「藤色」となっています。

東山線は歴史的経緯から「ウィンザーイエロー」という名称の方が圧倒的に有名ですが、「菜種色」という名称も付与されているようです。

この他3つの地下鉄がありますが、鶴舞線は「青」、桜通線は「赤」、上飯田線は「桃色」と普通な名前でした。

JR東日本の場合

上越新幹線で用いられている車両は「朱鷺色」という名前が、北陸新幹線には「竜胆(りんどう)色」という名前がそれぞれ付けられています。

 

関連リンク

色にコマル…大阪地下鉄8路線に込められた色の意味




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