平行普通列車

常磐線と新京成に魅せられた者のブログです

釜石線SL銀河の後継・代替え列車は設定されるか?

JR東日本釜石線観光列車の方向性を見る

釜石線の「SL銀河」は2014年4月12日に運行を開始しましたが、2023年6月11日を以って列車が廃止されます。

約9年間の短い列車設定でした。

蒸気機関車C58 239の新製は1940年6月、牽引されるキハ141系気動車は1977年から1982年新製のJR北海道50系51形客車が原形でした。

JR北海道では50系51形客車を1990年に気動車化改造、JR東日本が2014年に買い取って「SL銀河」の客車(気動車)に充当しました。

JR東日本JR北海道から気動車を買い取るのは異例ですが、釜石線の仙人峠を中心とする急勾配対応から気動車を充てるにあたって、札沼線電化で余剰となったキハ141系充当がタイミング的にもよかったものと見られます。

2023年時点でSLは83年、気動車は41年~45年経過していますが、今回の「SL銀河」の廃止は直接的にはSL側でなく客車側の老朽化によるものです。

 

2014年当時、JR東日本には適当な気動車はなかったでしょうか。

烏山線を走っていたキハ40系を蓄電池駆動車EV-E301系に置き換えたのは2014年でした。

「SL銀河」の運転開始年と偶然にも一致しますが、烏山線キハ40系を「SL銀河」に充当するには準備期間の短さ、車体重量、4両編成組成の際の中間運転台の多さ等の事情もあったのでしょうか。

 

「SL銀河」の運転日は下り花巻→釜石は土曜日、上り釜石→花巻は日曜日が慣例でした。

遠野での長時間停車が特徴で下りは1時間19分、上りは2時間07分停車でした。

「SL銀河」で花巻-釜石の全区間乗車の場合、SL乗車体験以外に遠野駅付近での観光を兼ねることに価値観を見い出していたと思われます。

下りは土曜、上りは日曜運転で、遠野駅の給水・灰捨て作業で1時間以上停車の必要があるため、土曜・休日に1往復設定できないのは「SL銀河」の弱みでもありました。

 

「SL銀河」の後継列車、代替え列車の設定はどうでしょうか。

機関車はSLのまま可能としても、客車側、キハ141系に適当な後継車両があるかどうかになりますが、現状の気動車状況を見る限り、難しいでしょうか。

かといってDE10形機関車の重連による純粋な客車に置き換えてもSLでないことの批判が出るほか、純粋な余剰客車自体がなく、客車新製を望むのも現実的ではありません。

五能線リゾートしらかみ」の釜石線専用列車版の投入も同様です。

釜石線全線としての列車需要は「SL銀河」の運転のない定期列車ダイヤのままの、普通列車7.5往復、快速「はまゆり」3往復とし、多客期はリゾート列車運転の方向性と見られます。

 

ここで、「SL銀河」と快速「はまゆり」とともに列車運転時刻を見てみます。

「SL銀河」の下りは、花巻10:36発→遠野12:12着、13:31発→釜石15:10着。

「はまゆり53号」は花巻12:10発→遠野13:04着、13:08発→釜石13:58着です。

「SL銀河」上りは、釜石9:57発→遠野11:46着、13:53発→花巻15:19着。

「はまゆり54号」は釜石11:28発→遠野12:17着、12:18発→花巻13:10着です。

 

快速「はまゆり」は花巻発着でなく3往復全部が盛岡発着で、リクライニングシートの指定席車を併結した3~4両編成です。

花巻-釜石の速達移動で見れば、遠野の短時間停車による「はまゆり」になります。

JR東日本は土曜の下り、日曜の上りだけ「SL銀河」運転状況で代替え列車を仕立てるまでのことはなく、定期「はまゆり53・54号」で補える考えと想定されます。

東北新幹線東京側列車と「はまゆり」3列車との接続時間も良好です。

 

一方、リゾートあすなろ」による「さんりくトレイン釜石 」投入、POKÉMON with YOU トレインによる「ポケモントレイン釜石号」を2023年夏の臨時列車で数日とはいえ設定しているのは、釜石線の観光時期の輸送力対策と、リゾート列車設定による話題性の継続対応と見られます。

リゾートあすなろ」は大湊線、「ポケモントレイン」は気仙沼線主体の列車のため、釜石線での運転日をあまり多くすることはできないものの、この2種の観光列車設定は釜石線沿線に一定の観光需要認識をJR東日本が持っているものと受け止めます。

 

遠野、釜石へ車やバスで訪れるだけでは残念です。

JR東日本「SL銀河」がなくなる分、釜石線の車窓の魅力を伝えてほしいと思います。

釜石線のポイントは第一に陸中大橋上有住の仙人峠越え、オメガループ線と鬼ヶ沢橋梁で、鬼ヶ沢橋梁から見下ろす陸中大橋駅の眺望です。

上り列車の上り急勾配走行、エンジン音が見どころ、聞きどころです。

第二に宮守-柏木平のアーチ橋の宮森川橋梁(愛称:めがね橋)が挙げられます。

 

かつての国鉄時代、釜石線には急行「五葉」が盛岡→花巻→釜石→宮古→盛岡で、逆回りは「そとやま」で、山田線と合わせた循環急行列車がありました。

釜石-宮古三陸鉄道に移管されましたが、山田線活性化と併せて夏休み期間中の数日だけでも三陸鉄道の協調も得た上で、盛岡循環急行が再現できないかと夢に見るところです。

 

※写真は本文と無関係です。