COVID-19が与えた深いダメージ
COVID-19による需要減退はJR九州に深い影を落としました。
2020年GWには全九州の特急列車を運休せざるを得ない事態に追い込まれ、その後も観光列車を中心に運休が相次ぎました。
(参考)発車標から特急列車が全て消えた博多駅 (2020.5.6)
特に長距離輸送で需要が急減したため鉄道事業の収支は悪化。2020年度は366億円、2021年度は220億円の赤字を記録してしまいました(参考)。
この事態に対しJR九州は輸送量を需要に見合ったものに削減することによってコストカットを実施。
2021年3月13日・2022年9月23日にそれぞれ減便を伴うダイヤ改正を行いました。
特に西九州新幹線開業に伴う2022年9月23日ダイヤ改正は都市圏のラッシュ時においても減便を行うなど「聖域なき減便」が目立った改正だったとされています。
徹底的なコストカットを図った結果、2022年の鉄道事業の収支は31億円の黒字に回復しました(参考)。
減便に不満!でも復便は不可能?
当然のことながら、こうした減便は沿線住民の不満を招きました。
JR九州に寄せられた苦情は改正から1ヶ月で900件以上。自治体からも見直しの要望がなされています。
COVID-19の影響が少なくなりつつある今、通勤需要は回復しつつありますが、実は2022年9月23日改正以前のダイヤに戻すことは不可能なのです。
というのも、このダイヤ改正で415系100・500番台(鋼製車、いわゆる「白電」)全21編成84両が運用から離脱したため。
(参考)415系100番台鋼製車Fo108編成 (2021.4.10折尾駅にて)
老朽化が進み維持が困難になっていた415系鋼製車はもともと引退していく予定でした。
しかし本来は新型車821系によって置き換えがなされる予定だったところ、COVID-19の影響で821系の増備が不可能になり置き換え車両なしに引退となってしまったのです。
このため元のダイヤに戻すにはもはや「車両が足りない」ということになってしまいました。
※一部労組は415系鋼製車の復帰を提案していましたが、もともと置き換え予定だったこと、すでに運用離脱から半年以上が経っており自走が不可能になっていることから現実的ではありません。
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ラッシュ時に臨時列車運行!?
しかしながら一部時間帯で混雑が常態化していることから、2023年5月24日、JR九州は次のように発表しました。
6月1日より混雑が著しい平日朝時間帯に福間→南福岡で臨時快速、南福岡→吉塚間で臨時普通を各1本運行するというのです。
またこの臨時列車運転により前後の定期列車の時刻が一部変更されます。
[臨時列車時刻表]
下り:9121M 快速 福間(7:08)→南福岡(7:56)
上り:9122M 普通 南福岡(8:05)→吉塚(8:20)
※2023年6月1日から当分の間平日のみ運転
予備車があった…?
車両に余裕が無いのに臨時列車?と思いそうですが、実はほんの少しだけ予備車が存在しているのです。
それは…大分車両センターの415系1500番台(ステンレス車、通称「銀電」)。
(参考)415系1500番台ステンレス車Fo1501編成 (2022.9.7吉塚にて)
※この編成は執筆時点で運用離脱中
鋼製車と異なり2022年9月23日以降も残った415系ステンレス車ですが、運用が減少しており常に南福岡車両区で待機している編成が存在します。
通常は811系や813系に何かあった場合の代走として使われますが、今回この予備車を使用して臨時列車として仕立てられることとなりました。
果たしてこの臨時列車は福岡地区の混雑緩和に一役買うのでしょうか?
ということで前置きが長くなりましたが、今回はこの臨時列車に運行初日の6月1日に乗車してきましたのでその様子をご紹介いたします。
9121M臨時快速
2023年6月1日。
やってきたのは博多駅7番ホーム。
9122M臨時普通
★乗車データ
9121M 快速 南福岡行き 博多(7:46)⑦→南福岡(7:56) 415系Fo1509+Fo1516編成
9122M 普通 吉塚行き 南福岡(8:05)→吉塚(8:20 8:21) 415系Fo1516+Fo1509編成
※2023年6月1日乗車