食事を提供する観光列車が、全国で走っています。
観光列車の中で、アテンダントが和食や洋食の料理を運んでくれて、沿線の景色を見ながら楽しくいただくことができます。
その観光列車の食事ですが、大きく分けて2種類の提供の方法があります。
「箱に入れる方式」と、「お皿に盛りつける方式」です。
部分的に併用している列車も多いのですが、この2種類を、比較しながらまとめてみました。
※料理は、季節などによって変更されます。器は同じでも料理は変わります。
【1】箱での提供が主流
観光列車の料理は、箱に入れての提供が主流です。
あらかじめ料理を箱に入れて、乗客のテーブルに届ける方式です。
2段3段の「重箱」に入った状態でアテンダントが配る列車もあります。
たとえば「伊予灘ものがたり」の双海編でも、料理が箱に入っています。
「レストランからり」が提供する料理です。
箱に入れた料理の多くは、仕切られた区画の中に、様々な料理を少しずつ詰めた料理になる傾向があります。
初代・伊予灘ものがたりの時から、素敵な料理です。
箱に入れた料理の長所はというと、
《長所1》料理が崩れにくい
列車の中ですから、線路の振動やカーブで揺れます。
揺れた車内でも、仕切られた箱の中に入った料理なら、あまり崩れません。
アテンダントさんにとっても、仕事しやすくなります。
《長所2》提供に時間がかからない
フタが付いた箱ですから、3人ぶん重ねて運ぶことができます。
1人目の乗客に料理が渡ってから、最後の乗客に渡るまでの時間が短縮できます。
自分のところに料理が来るのが遅いイライラを防げます。
【2】重箱に入れる列車も
なかには、2段3段と重ねた重箱に料理をまとめて提供する列車もあります。
たとえば、えちごトキめき鉄道の「雪月花」でも、重箱方式を採用しています。
3段のお重が、乗客に届きます。
3段を並べると、こうなります↓
まとめて眺められるのはインパクト大です。
この「重箱」方式は、料理が一気に届きますので、メリットがあります。
《長所1》インスタ映えする
一通りの料理がまとめて提供されますので、まとめて1枚の写真に収めやすいのです。
写真うつりが良く、豪華さを伝えやすい長所があります。
《長所2》食べる順番が自由
まとめて提供されますので、好きな時間に好きな順番で食べられます。
もともと箱に入った料理は温かくはないですし、ホームに下車して写真撮るなど独自のペースで乗って食べることがしやすくなります。
【3】箱に料理を入れた観光列車
箱に料理を入れた様々な例を見ていきます。
★一万三千尺物語
あいの風とやま鉄道の「一万三千尺物語」も、箱に入った料理です。
握りずしも、箱に入っています。
小皿たくさんだと、料理の提供や空いた皿をさげるのに手間がかかりすぎる面もあるでしょう。
※この6月より料理はリニューアルします。
★ながら(長良川鉄道)
長良川鉄道の「ながら」ランチプランも、2段の重箱に入っていました。
この他に、御飯とスイーツが別につきました。
【4】お皿に料理を盛り付ける方式
箱に料理を入れる列車が多い中で、お皿に盛りつけて料理を出す列車もあります。
たとえば、しなの鉄道の「ろくもん」です。
「ろくもん」は、シェフが列車に乗り込んで、お皿に料理を並べるところまで行います。
それぞれの客に運ぶのが大変です。
京都丹後鉄道の「くろまつ」も、お皿に載せる形式です。
2020年2月のランチの一部です↑。お皿に載った料理が何皿も出てきます。
2021年5月のランチは、こちらも小皿を多用した趣ある料理です。↓
列車内で、このような料理、よくやった!と感じました。
京都丹後鉄道の料理は、半年ほどで大きく入れ替わりますので、乗車する際は要確認。
お皿に載せる形式の長所はというと、
《長所1》温かい料理が出しやすい
温かい料理は、あらかじめ箱の中には入れられません。
箱で温かい料理は、スープなど別に添えることはできますが、基本的には厳しいです。
1皿ずつ盛り付けられますので、温かい状態で提供できるメリットがあります。
《長所2》より高級感が出る
多くのレストランでは、箱ではなくてお皿で料理が出されます。
駅弁も「箱」に入った弁当です。列車の中でお皿の料理をいただけるのが快感な人もいるのでは?
ですが、逆に欠点があります。
《欠点1》手間がかかる。多くのアテンダントが必要。
箱に入れた料理に比べて、お皿は手間がかかります。
より大勢のアテンダントが必要となります。
列車の揺れに対応できる一定レベルのアテンダントを確保するのは大変です。
《欠点2》盛り付けする場所が必要
車内で料理をお皿に盛り付けるわけですから、場所が必要です。
十分なスペースを確保するのが難しい列車が多く、車内での盛り付けを断念することも多いようです。
初代「伊予灘ものがたり」道後編では、盛り付けする場所が広くないため、アフタヌーンティーの予約は約50人の乗客に対して20食までに制限していました。
上の写真↑は、西武「52席の至福」です。
お皿で出すには、広いスペースが、必要になります。
【5】お皿に載せた料理を出す列車
他にも、お皿で料理を出す列車があります。
★レールキッチン(西鉄)
西鉄の「THE RAIL KITCHIN CHIKUGO」は、お皿に盛り付けた料理をいただけます。
現在は別メニューになりましたが、以前は車内でピザを焼く設備までありました。
盛り付けるスペースも十分にあり、お皿での提供が可能となりました。
この6月より8800円から11800円になりますが、料理の中身・洗練された接客を考えると、全く高くないと感じます。
★ことこと列車
平成筑豊鉄道の「ことこと列車」も、基本的にはお皿に盛り付けます。
途中駅で「温かい」のでなく「熱い」肉料理が、積み込まれてお皿で提供されます↓。
あわびのリゾットも、お皿に載っています↓。
コース料理をいただくというイメージです。
料理、車両、スタッフ、どれも水準の高い素敵な列車です。
【6】状況に応じて、様々なパターン
★上位クラスは皿
普段は横浜と伊豆急下田の間を走る「ザロイヤルエクスプレス」。
2019年当時は、25000円の「ゴールドクラス」と、38000円の「プラチナクラス」の2クラスがありました。
私が乗った比較的安い「ゴールドクラス」は重箱に入った料理でしたが、「プラチナクラス」はお皿に載った料理でした。「プラチナクラス」ですと、温かい料理が、笑顔のアテンダントさんの気遣いの案内と共にいだだけることになります。
2万円超えは、私が乗った列車では「或る列車」と共に最高レベルの金額です。(来月6月には8万円の列車に乗りますけど)
★皿と箱の組み合わせ
この2つを組み合わせる列車が、けっこう目立ちます。
「四国まんなか千年ものがたり」では、基本的には箱に入った料理です。
ただし、温かい料理も入れたい、料理に変化を出したいという意図があったようで、お皿に温かい料理も追加で出されます。↓(2021年9月撮影)
全部の料理を皿で提供するのは難しくても、必要な料理だけはお皿で出したいと考えるのでしょう。
★スイーツはお皿が基本
スイーツが提供される列車の多くは、お皿での提供です。
京都丹後鉄道の「くろまつ」のスイーツです↓
これ、手間かかるのは、素人でも分かるのでは?
のと鉄道の「のと里山里海号」のスイーツです。
品数が多くないと、お皿でも手間はさほど変わらないと感じます。
島原鉄道の「しまてつカフェトレイン」では、飲み物以外のスイーツが4品、出されます。(2020年8月当時)
大きいケーキ↑、カンパーニュサンド、チーズプリン。
そして、もう一品「アイスソルベ」↓です。
要するに冷たいフルーツアイスなのですが、融けだしますから箱に入れて一気に渡すわけにはいきません。
★近鉄「しまかぜ」は凄い
ここまで記事を書いて気づいたのは、近鉄「しまかぜ」のカフェは凄すぎることです。
温かい料理をお皿で提供してくれます。
予約制ではないので、1人前から手間をかけて作ります。
もっとも高い料理が「はまぐりのシーフードピラフ」1800円です。
「客が来るか分からない」「作る手間もかかる」「注文あっても単価は低い」、
それなのに「1両丸ごとカフェ車両に充てて連結」して、「接客レベルの非常に高いアテンダントさんを揃える」なんて、良い意味で狂気の沙汰です。
それぞれの観光列車が、料理の種類、車内のスペース、料金、アテンダントの数などを考慮して、料理の提供方式を決めているのだと思います。
列車内と言う制約の中で、各社は頑張っているのです。
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今までの「資料集」の記事です。
■駅に降りての観光をまとめました
■食事付き観光列車です。若干古い記事です
■海が見える観光列車の紹介です。